東京駅と千葉県・蘇我駅を結ぶ京葉線では、ワインレッドの帯が特徴的なE233系5000番台が活躍しています。
24編成のE233系のほかに、1編成だけ前世代型の209系500番台が残存しており、前回の機器更新工事に続いて今回も定期検査を終えています。
彼はなぜ生まれてしまったのか、今後の置き換えは行われるのかを考えます。
転属続きの209系500番台
209系500番台は、老朽化が進行していた中央・総武緩行線向けの電車として開発されました。
当初は次世代型のE231系を待つ計画だったものの、103系の故障などが目立つようになったため、既存の209系0番台の床下機器・E217系の拡幅車体を合わせた設計となっています。
全編成に高速走行時の揺れを軽減するヨーダンパの取り付け台座が製造時から設置されている点、拡幅車体の特性から各車両の台車間距離はE217系に準じている点など、E217系の設計思想に大きな影響を受けています。
E231系0番台開発完了までの繋ぎで製造された車両だったため、E231系の開発完了とともに製造終了、JR東日本の通勤電車では珍しい10両17編成・170両のみとなっています。
小所帯ながらパンタグラフが菱形・シングルアームと製造過程で変化している点が有名です。
前面部の色が白色の209系500番台・銀色のE231系という外観の違いが目立ちますが、台枠高さなどの基本的な設計が異なっているため、似て非なる車両です。
登場当初は中央・総武線各駅停車で全編成が活躍していたものの、京浜東北線での運用増加に対応するため、製造時点から準備工事が行われていたラスト2編成=ラシ66,67編成が2000年に京浜東北線に転用されています。
京浜東北線の保安装置をデジタルATCに更新するため、車両改造工事の予備車としての転用です。
0番台全編成に組み込まれていた6扉車両がない・京浜東北線では初の拡幅車体という差異が目立ちましたが、当時は901系→209系900,910,920番台の3編成の試作車も活躍していましたので、ドア数の違いで大きな制約にはなっていません。
2003年の習志野電車区→三鷹電車区への全編成転属を経て、2005年〜2006年には京浜東北線の車体保全(全般検査に相当)のための予備車確保のために三鷹車両センターの515編成が浦和電車区に貸し出しとなっています。
2008年には、209系量産車に比べて取り扱いが複雑だった試作車3編成を置き換えるため、ミツ513〜515編成がウラ82〜84編成として浦和電車区へ追加転用されています。
特に515編成については2年ごとに帯色を交互に変える転用となりました。
この209系500番台捻出のため、中央・総武緩行線にはE231系・ミツB80〜82編成はこの3編成の代替として製造されており、E233系量産開始後に作られたE231系として細部がE233系の部品となっている異端児になっています。
京浜東北線全盛期の209系500番台の布陣(2007年3月〜)
三鷹電車区:ミツ501〜512編成
浦和電車区:ウラ80〜84編成
513:ラシ63編成→ミツ513編成→ウラ82編成
514:ラシ64編成→ミツ514編成→ウラ83編成
515:ラシ65編成→ミツ515編成→ミツ515編成→ミツ515編成→ウラ84編成
516:ラシ66編成→ウラ80編成
517:ラシ67編成→ウラ81編成
※ミツ515編成の貸出からの返却後は帯色が異なる(通常黄1号・返却後は黄5号)
京葉線で4編成体制が組まれる
京浜東北線に最大5編成が転入した209系500番台ですが、彼らの活躍は長くは続きませんでした。
京浜東北線向け209系0番台の老朽化が深刻な課題となっていたことなどから、E233系の製造計画変更により京浜東北線に83編成のE233系を導入することとなりました。
この83編成という数字には209系0番台78編成と500番台5編成の同数となっており、早くも209系500番台は次の路線に追い出されることとなります。
つぎの転用先は東京と蘇我を結ぶ京葉線。
当時8編成が活躍していた201系のうち、分割運用に入らないケヨ71,72編成と、中央線から暫定的に転入していた元中央線の10両貫通編成であるケヨ70,74編成を置き換えるために京葉車両センターに4編成が転用されています。
蘇我駅から先の乗り入れ運用ではいわゆる“メルヘン顔”の205系12編成が限定運用となっていましたが、209系500番台も転属完了後にこの運用を解禁されています。
なお、4編成が京葉線に転用されましたが、最後まで京浜東北線に残されていたウラ80編成は2009年にミツ516編成として中央・総武緩行線に戻ることとなり、三鷹車両センターへ転属しています。
路線自体は古巣の中央・総武緩行線ですが、この編成は習志野電車区から直接浦和電車区に転用されたため、この編成にとっては初めての三鷹配置となっています。
京浜東北線→京葉線209系500番台 転用の動き
513:ラシ63編成→ミツ513編成→ウラ82編成→ケヨ31編成
514:ラシ64編成→ミツ514編成→ウラ83編成→ケヨ32編成
515:ラシ65編成→ミツ515編成→ウラ84編成→ケヨ33編成
516:ラシ66編成→ウラ80編成 →→→→→→→ ミツ516編成
517:ラシ67編成→ウラ81編成 →→→→→→→ ケヨ34編成
※ミツ515編成の貸出からの返却後・ミツ516編成については帯色が異なる
京葉線での活躍も長くは続かない……はずだった
京葉線に転用された209系500番台ですが、またしても活躍は長く続きません。
201系分割運用4編成・205系100km/h制限車5編成・205系生え抜き編成12編成・209系500番台4編成を置き換えるため、またしてもE233系25編成の直接投入路線となりました。
ケヨ31〜33を名乗っていた末尾513〜515の3編成は、2010年から11年にかけてむさしの号・しもうさ号の大規模設定による運用増となった武蔵野線へ再転用されています。
このまま残されたケヨ34編成も転属が行われるのかと思われていましたが、E233系5000番台のプレスリリース発表・既存車の数と合致する25編成に比べて1編成少ない24編成の製造で終了しており、そのまま1編成不足分を現在まで担うこととなっています。
E331系のメーカー送り後の再運用を想定・その後の廃車に関連するのではないか?という推測があるものの、なぜ1編成製造数が減らされたのかを明らかにする公式情報は現時点ではありません。
八高線・武蔵野線への転用が進行
転用工事・機器更新を終えて新天地に輸送される209系500番台
中央総武緩行線では、山手線E235系投入により余剰となったE231系500番台による玉突き転用が現在も行われています。
209系500番台については既に完遂しており、若番5編成が八高線へ、それ以外は武蔵野線に転用されています。
京葉線転用にあふれて三鷹に帰ってきたミツC516編成についてもこの武蔵野線転用組となったため、久々に仕事を共にすることとなっている一方、武蔵野線に転用されている車両がE231系と合わせて41編成となり、205系時代に比べて1編成不足している点が現在もファンから様々な推測を呼んでいます。
ケヨ34編成を8両化・武蔵野線に転用するものと予想するファンも多かったですが、秋田に機器更新入場したケヨ34編成については全車両が機器更新対象となり、2016年12月に帯色もそのままに改造を終えています。
残されたケヨ34編成の今後は?
かつての職場・京浜東北線の後輩を横目に所属区へ帰って行きました。
気になるケヨ34編成の今後ですが、転用計画・置き換え計画については決まっていないものと推測できます。
これは、車両の置き換えが検討されるタイミングの大きな要素に定期検査時期が挙げられます。
JR東日本の定期検査は209系・E231系・E233系「新系列電車」では、従来車両に比べると検査期限が伸びています。
今後転用が見込まれる車両について定期検査を施工することは少し考えにくいところです。
自動車の買い替え時期を車検時期に合わせることをイメージしていただければと思いますが、鉄道会社の多くが定期検査時期が車両の置き換えの判断材料の大きな要素となります。
ケヨ34編成が所属している京葉車両センターは、他の209系500番台が活躍する武蔵野線と同じ車両基地ですので、1形式1編成という特殊性はそこまで大きな問題になっていないのかもしれません。
運用上の制約もないうえ、機器更新・定期検査を順調に通っていることから、もうしばらくの活躍に期待できそうです。
もちろん、車両計画が変動すればに真っ先に転属の対象となることは、この車両の歴史を振り返れば明らかです。
千葉地区では、今後のワンマン化による運用体制の変化が予定されており、この一環で総武快速線・京葉線についても車両配置数の変化がされるのではないか?と予想する声も。
武蔵野線の置き換え車両数不足の問題も考えれば、この編成の転用が最適解となることでしょう。
京葉線で彼に出会った際には、JR東日本の車両計画に翻弄されて転属をくり返してきた彼らの半生に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
動画資料集
Youtube=鉄道ファンの待合室資料館では、ケヨ34編成の出場の様子・話題になった試運転の様子を記録映像として公開しています。
今回ならではの特別ダイヤが編成され、“サフィール踊り子”E261系の性能確認試運転の退避が大宮駅で行われました。
東京駅の地上と地下を拠点とする両形式の並びはかなり貴重な光景となりそうです。
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1編成のみ!209系500番台ケヨ34編成が大宮出場・E261系サフィール踊り子号との並びも実現
コメント
209系で置き換えられた京葉線の201系の非分割編成は70、71、72、74だったと思います。80番台は存在してないと思います。
ゆーき様
閲覧・コメントありがとうございます。
ご指摘のように、201系の置き換え対象は70番台が正しい編成番号となります。
ケヨ81編成は別記事にもしている205系の一時的な呼称でした。
訂正させていただきました。
これからも当サイトのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。