【3年の出禁が解除】京急新1000形ステンレス塗装車が都営・京成直通運用開始

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京急電鉄の新1000形のうち、ここ3年で製造されたステンレスボディに全面ラッピングを施工した8両2編成(1177,1185編成)車体全塗装の8両4編成(1201編成以降)は泉岳寺駅以南の自社線内での運用が続いていました。

2020年5月17日、この運用制限解除により、1225編成が都営浅草線・京成押上線での営業運転を開始しています。

2000形の代替として運用

京急電鉄の新1000形はアルミボディとステンレスボディで別形式のような仕様の違いがありますが、このステンレスボディのグループも仕様がいくつかに分類できます。8両編成のほかに6両編成・4両編成が製造されていますが、直通運用に関係する8両編成を基準に分類しています。

まずは2007年度から製造された1073編成以降のグループです。

伝統の車体塗装・アルミボディ、それまで同社のトレンドだった輸入物の機器使用を全て脱却、東急車輛製造(現・総合車両製作所J-TREC)と川崎重工業によるステンレスボディ・国産電装品に変更されました。編成構成や機器配置なども一新されていますが、この基本構成は現在までの新造車で継承されています。

大きめの変更が加えられたのは、2010年度に登場した1121編成です。

成田スカイアクセス線開業・アクセス特急運用設定を背景に、京成本線と成田スカイアクセス線で営業運転するのに当時必須装備とされていた停車駅予告を行う“車上情報管理装置”を搭載して製造されたグループです。

現在でこそアルミボディの車両を含めて新1000形全編成が使用されていますが、当時はデビュー時からこの機器を搭載して京成本線に出入りしていた600形8編成と、新たに製造されたこれらのグループのみに限定されていました。在来車については保安装置改修の際に付帯として同機能が搭載されたため、現在はこの制約は解消しています。

利用者目線ではディスプレイによる車内案内表示器設置がドア上に設置されたことが目立ちます。

2016年度にはボディ側面をフルラッピングすることで塗装車両に似せた1177編成・1185編成が登場しました。

2015年度に貫通形状の前面に変更・同様に車体ラッピングで注目された4両編成=1800番台の内装仕様が反映されています。

一方で、こちらは新たに走行機器類に最新技術品が採用されており、同じく2015年度に登場した6両編成の1367編成で試験搭載としてPMSM(永久磁石同期電動機)と新たな主制御装置が採用されていたものの、本格採用はフルSiC方式のVVVFインバータ制御装置(半導体をケイ素からより高効率の炭化ケイ素に変えたもの)ととなりました。

そして、この走行機器類の構成をベースとして、現在のところ最新モデルとなっているのが1200番台の付番がされた2017年度以降の増備車です。

フルラッピングではなく全塗装に改められたほか、利用者目線では車端部にボックスシートが復活・ボックスシートにコンセント設置・車内案内表示器の2画面化など、京急電鉄のこだわりが強い車両となっています。

2017年度に3編成・2019年度に1編成が製造されていますが、2000形の置き換えが完遂したため、この4編成が現在の最新車両です。

次の置き換え対象は1500形のうち初期製造の大師線中心で活躍する鋼鉄車かと思いますが、新形式となるのか、まだ1000形を作るのかは現時点で明らかにされていません。

2000形の代替として活躍

日々京急線を行き交う赤い電車ですが、社内では新町検車区所属・金沢検車区所属・車両管理所所属(久里浜)と分けられており、各形式がバラバラに配置されています。

同一線区で同一形式をあえて別の車庫に所属させている例は全国的にも珍しく、ともに大所帯の東海道新幹線N700系(東京・大阪)、東海道・高崎・宇都宮線のE231系,E233系(小山・国府津)など、国鉄時代からの名残で僅かに残る程度です。

相互に代走もよく発生しているほか、車体表記や公式な文献も少ないのであまり知られていないため、過去の配置車両の置き換えの動きや運用状況などから観察するなど、ファンとしてはなかなか難しい体制です。

フルラッピングの1177,1185編成2編成と1200番台のうち2017年度増備分の3編成は直通運用を持たない金沢検車区所属として運用されており、同じ基地に所属していた2000形8両5編成の代替的な位置付けです。

当初は2000形同様に泉岳寺駅〜品川駅間も乗り入れ制限となっていたために朝夕の活躍・羽田空港〜京急蒲田〜新逗子(現在の逗子・葉山)のエアポート急行など活躍の場が制限されていました。

のちにこの運用範囲は泉岳寺駅まで広げられており、この制限であれば2100形が使われる“A快特”の代走など活躍範囲が広がっています。

2019年度増備車となった1225編成は車両管理区に所属しており、2100形が担うA快特代走などで見かけることが出来ました。

SiC方式の登場から3年間の時を経た2020年5月16日、この1225編成が都営浅草線・京成押上線へ営業運転での乗り入れを実現しました。

走行機器が“悪さ”していた?

最近の増備車6編成の運用制限ですが、主制御装置の変更が背景と推測されています。

ここからは科学のお話となるので噛み砕きますが、VVVFインバータ制御装置は送電線の直流から交流に変換する際に高周波ノイズが発生します。

これにより踏切回路や信号通信回路などに意図せぬ電流が流れることで、列車の運行に支障が発生する……という問題です。

この誘導障害問題ですが、SiC方式の車両特有の問題ではなく、あくまで新たな制御装置を採用した場合に発生する可能性があります

最近の新型車両が各社とも納車直後は終電後に試運転を行っているのも、この試験をすることが背景の1つです(もし誤作動した場合、通常の列車運行の妨げとなる可能性があるため)。

同じくSiC方式を採用した都営5500形がこの課題で苦労したものの現在は問題がないように、あくまで車両側・地上側に調整を重ねて解消する……といった趣旨のものとなります。

都営浅草線系統ではデビューから直通運用開始までブランクが発生する例は決して珍しくありません

過去には新1000形アルミ車もシーメンス製造のVVVFインバータ制御と新しい機器類で直通運用への使用に時間を要したほか、古くは初めてVVVFインバータ制御で登場した1500形1701編成も同様でした。

この系統のファンからすれば特段珍しい話ではないものの、それにしても3年という期間は長く感じますね。

翌日の5月17日は直通運用に登板していないものの、他編成で運転台に貼られていた乗り入れ制限の旨を記したテプラ表記が剥がされていることも目撃されており、今後も時折その姿を見ることが出来そうです。

ただし、1225編成以外は先述の所属基地都合から代走でのみの登板となるため、まだ実現していないラッピング車を含め、機会としては多くはならないでしょうか。

このほか、新1000形のアルミボディ編成のうち、唯一SiC方式のVVVFインバータ制御装置で機器更新をした1001編成は引き続き品川駅以南限定と運用制限を受けています。

歌う電車が無くなる……としてファンから注目されていましたが、機器更新後の搭載機器は初施工となったこの編成のみが採用(以降の編成では別のものに変更)されており、こちらも運用制限が発生しています。

構成が先述の1177編成以降と異なることからか、こちらは引き続き運用に制限を受けたままとなっており、今後の動向が気になるところです。

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今回の画像は、フォロワーの繁さま(@shigeru113115)より承諾をいただいて掲載しています。

コメント

  1. 3838 より:

    本文最後のほうの「1001編成は引き続き品川駅以南の運用制限を受けています。」という表現ですが、これではまるで、品川駅以北でしか運用できない、としか読み取れなくなってしまいます。「品川駅以南のみの運用」か「品川駅以北の運用制限」と表現したほうがよいと思います。