【17年の眠りからお目覚め】伝説の“リニモ”09編成が試運転開始

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世間では2025年の大阪万博が話題となっていますが、2005年に開催された愛知万博の輸送力増強のためだけに製造され、以後は長らく眠りについていた幻の車両の“復活”に向けた準備が進められています。

愛知高速交通に里帰りした100形09編成の試運転が同線内で目撃されています。

鉄道事業者に所有されない数奇な運命

愛知高速交通は、2005年に開催されることとなった愛知万博のアクセス路線として整備されつつ、その後も引き続き運営される路線として愛知県の藤ヶ丘〜八草間に整備された第三セクターの軌道線です。

磁気浮上式鉄道の1つであるHSSTを採用しており、開業から現在まで日本国内では唯一の営業路線です。

専用車両として愛知高速交通所属の100形電車が3両固定編成8本製造されたほか、愛知万博期間中の輸送力増強のため2005年万国博覧会協会が所有する1編成が用意されました。

この“9本目”のリニモは万博の特別装飾を身に纏い万博終了後の2006年春まで運行されたのち、2006年4月1日付けで日本万国博覧会協会から伊藤忠商事に売却されました。秋にイベント列車として2日間走行したものの、その後は自慢のラッピングを剥がされてしまい車庫の片隅で過ごす日々が続きます。

そして2007年に三菱重工業が三原製作所内にHSST方式の実験線建設を発表、この09編成は実験車として遠く広島県三原市に搬出されています。

2011年には伊藤忠商事から三菱重工業に売却されており、このまま実験線で余生を過ごすかと思われていました。

存在すら忘れ去られて久しい2019年10月、この09編成が愛知高速交通の車両基地に陸送(トレーラーによる輸送)がされました。

この時点で車籍の有無や所有者の変更などは明らかにされておらず、前触れとなる情報もありませんでした。その後も車庫内に留まっており、再び目立つ動きがないまま時間が経過しています。

長久手の地に“里帰り”を果たしてから2年半近くが経過した2022年5月、遂に本線上を試運転列車として走行する姿が目撃されています。

“リニモ”は愛知万博以降の利用予測に比べて利用者が少ない状態が続いていたものの、近年では徐々に利用者が増加しています。依然として具体的な発表はないものの、“リニモ”の輸送力増強のため愛知高速鉄道に返り咲くこととなったことは想像に難くありません。

三原からの輸送後も長らく動きがなかった“09編成”ですが、いよいよ鉄道車両としての活躍が再び見られることとなりそうです。

薄命に終わりがちな新交通システムの車両たち

一般的な鉄道車両と比較して、新交通システムの車両たちは薄命に終わる車両が多く存在します。

路線の規格が路線毎に異なるため、転属や他社譲渡といった鉄道車両でありがちな動きが発生することは滅多にありません。

同じ愛知県では路線自体が廃止となり、ループ線構造を採用していて転用も叶わなかった桃花台交通“ピーチライナー”が特に有名な事例です。

また最近の事例でも、日暮里・舎人ライナーの300形が混雑のためオールロングシートの後継車両への置き換えがされる計画で、2008年の開業ゆえに短期間の活躍で姿を消すことが確実な状態です。

一方で、長く活躍している車両にも悩みが残ります。千葉県の山万ユーカリが丘線では1982年の開業以来1000形が運用されていますが、車体構造から冷房化改造が出来ず現在も非冷房となっています。

同線の中央案内式は先述のピーチライナーと山万の2路線のみで採用されたため、他社からの車両購入も出来ていません。

将来的な置き換え時には新規開発が必要となることもネックとなりそうです。

こういった新交通システム独特の事情があるなか、製造当初から短期間の活躍に留まることが確約されていた車両ながら、鉄道事業者外を転々とした後に再び鉄道車両として「輸送」の使命を帯びることとなった“リニモ”100形09編成は奇跡の存在と言って間違いありません。

新造時期自体は一般車と同様で大きな差異がないものの、数奇な運命の結果再び活躍の場が与えられた09編成。営業運転復帰への期待はもちろんですが、特異な生い立ちを活かした装飾やファン向けのイベントなどにも期待したいところです。

参考:09編成の搬入

画像元ツイート紹介

記事内掲載写真は、フォロワーのあっくん先生(Twitter:@atsukipkm)から掲載許諾をいただいています。

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