伊豆急行では5月30日、6月以降の3000系“アロハ電車”の運用を発表しており、13日から新たに伊東線の熱海駅〜伊東駅間で運用されることが明らかになっています。
これに先駆け、2日にはY-1編成とY-2編成を連結した8両編成を使用した伊東線内の試運転が実施されました。
暫定運用が続いた伊豆急3000系
2021年度にJR東日本から伊豆急行へ2編成の209系2100番台が譲渡され、4両編成2本が「3000系」として整備が進められてきました。
2022年4月30日より営業運転を開始したものの、伊豆急行線内での限定運用とされており、また2編成が導入されたものの1編成4両のみが運用に就く状態が続いていました。
5月30日には6月の運用が発表され、13日より伊東線熱海駅〜伊東駅が新たに営業区間に加わることが正式に発表されました。
新たに公開された運用を見る
列番 | 始発駅 | 時刻 | 終着駅 | 時刻 |
5636M | 伊豆高原 | 9:05 | 熱海 | 9:57 |
5637M | 熱海 | 10:10 | 伊豆急下田 | 11:41 |
5648M | 伊豆急下田 | 12:11 | 熱海 | 14:10 |
5649M | 熱海 | 14:29 | 伊豆高原 | 15:23 |
今回公表された6月の運用は、伊豆高原駅〜熱海駅〜伊豆急下田駅〜熱海駅〜伊豆高原駅の2往復(伊豆高原以南は1往復)となっています。
この運用はかつてリゾート21の運用とされていた時期もあったように、ツーマン運転である3000系の運用としても妥当な体系です。2022年3月改正以降は8000系6両編成が使用されており、前後が独立した運用となっていることからも3000系の充当を見越したものと考えられる状態が続いていました。
なお、現時点では“リゾート21”・“アロハ電車”ともに検査時は8000系6両編成が代走する体系とされているほか、6月以降は“アロハ電車”4両編成での運用はしばらく見られなくなりそうです。
今回の試運転が無事終了していれば、今後は伊東線・伊豆急行線全区間で3000系の雄姿を拝むことが出来るようになります。先々代の113,115系→200系と同様かつ三セク移管路線では既に日常の光景ですが、元JR東日本の電車がJR東日本の営業列車として運転されるのは感慨深いものがあります。
車両運用としての制約は3000系導入以前に比べると増加するようにも思えますが、“リゾート21”が臨時特急運用を担っていた頃と比べれば……といったところでしょうか。
しばらくは8両固定編成状態で運用されることとなりそうですが、4+4両編成の構成を活用した様々な列車への充当に期待したいところです。
試運転の様子
6月2日には伊東線内で3000系8両編成を使用した試運転が実施されています。
今回の試運転では、伊豆高原駅〜熱海駅〜伊東駅〜熱海駅〜伊豆高原駅と伊東線内を2往復する体制で運転されました。
熱海駅1番線のほか、伊東線各駅の全ての発着番線に入線する体制とされており、伊東駅では定期列車の発着番線変更が実施されています。ただし、夜間停泊変更で稀に伊豆急行車が入線する熱海駅3番線への入線は実施されていません。
各駅では両端から乗務員がホームに降り立つ姿が確認でき、設備確認関係の試運転とみられます。伊東線内では現在の定期列車で8両編成の列車こそ存在しませんが、“リゾート21”はロイヤルボックスを連結した状態で普通列車運用をしていた時期もあり、発車ベルスイッチやITVなどの乗務員向けの設備類は元々整備済みですので、駅設備に大きな変化はありません。既に目撃されている伊東駅のように、旅客向けの8両4扉用の乗車位置目標が掲出される程度となりそうです。
なお、伊豆急3000系の乗務員訓練は伊東駅構内の訓練のみに留まっており、営業運転開始までの日数を考えると本線上での訓練は不要……と判断されていることが想像できます。
日常的に左手ワンハンドルマスコンのJR東日本車・T字型ワンハンドルマスコンの元東急車・ツーハンドルマスコンの“リゾート21”と全く設計思想の異なる電車たちを乗りこなしている乗務員にとっては特異な設備も少ない車両であることが背景にありそうですが、同じJR東日本でも中央線快速電車の209系1000番台・埼京線の相鉄12000系がそれぞれ運転開始する前には入念な訓練をしていたことを考えると意外な印象です。
既に伊東駅までの定期運用がある伊豆急3000系ですが、熱海駅へ進出したことで新たにJR東海所属の各形式との顔合わせが実現しています(JR東日本所属のE231系・E233系とは暫定運用時点で顔を合わせる機会がありました)。
京浜東北線と高崎,宇都宮線が並走する上野〜大宮駅間や、京浜東北線と東海道線が並走する東京〜横浜駅間や大船駅などで見られた光景を彷彿とさせる211系との並走も実現しています。熱海駅へ乗り入れる211系は全てJR東海の新造車でこれまでは顔を合わす機会はなかった車両たちでしたが、懐かしい光景が蘇った方も多いのではないでしょうか。
211系は315系導入により置き換えが発表されており、数年間しか見られない貴重な光景となります。
今回の試運転での最大の見どころは、1往復目復路の来宮駅・2往復目復路の熱海駅付近で見られた「セントラルライナー」カラーの313系8000番台との離合でしょうか。
静岡県内ではこの春の“新顔”となった2車両がさっそく熱海で顔を並べることとなったことで、試運転の話題に華を添えてくれました。
先述の公表されている運用の通り、定期運用でも熱海駅で313系8000番台とホームと1線を挟んで並ぶ(1番線と3番線)ダイヤとなりますので、駅間や来宮駅での離合は今回の試運転と今後の遅延時のみに見られる光景です。
東京・名古屋にお住まいの皆様にとって懐かしい電車たちに会えるようになる熱海駅。乗車・撮影の観点でも、観光シーズンを迎えるこの夏に狙いたい車両たちです。
特に伊豆急下田12:11発の5648Mは、熱海駅で313系8000番台のあまり多くないロングラン運用である熱海発浜松行き441Mに接続しており、この列車はさらに浜松で普通岐阜行きに接続しています。これらの列車を活用すれば、代走がない限りは伊豆急3000系に乗車したのち熱海から先は転換クロスシートだけで移動が可能な行程が組めます。
東京を朝イチで出発or伊豆半島で宿泊した後の乗り鉄プランを組む際には、これらの列車が注目と言えそうです。
写真撮影の観点では、伊東線で数少ない編成が収まる走行シーンが撮影出来る伊豆多賀駅〜網代駅間の紫陽花が咲き始めています。デビュー以降しばらくは現在よりも開花状態が良好となっていることが予想され、しばらくはファン・一般の方で賑わいそうです。
参考:伊豆急3000系のこれまで
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7月6日 〜7月7日 | 元C609編成 6両 幕張→伊東 甲種輸送 |
7月7日 | 元C609編成 6両 伊東→伊豆高原 回送 |
7月25日 〜7月26日 | 元C609編成 6両 伊豆高原→伊豆急下田 回送 |
8月28日 〜8月29日 | 元C609編成 6両 伊豆急下田→伊豆高原 回送 |
9月8日 | 元C609編成 4,5号車 編成から外される |
11月23日 〜11月24日 | 元C601編成 4両 幕張→伊東 甲種輸送 |
11月24日 | 元C601編成 4両 伊東→伊豆高原 8000系牽引 |
12月11日 | 元C601編成 4両 ・元C609編成 4両 展示イベントで形式発表 |
1月28日 〜1月30日 | 元C609編成 4両 南伊東〜伊豆急下田 試運転 |
3月3日 〜3月4日 | 元C601編成 4両 ・元C609編成 4両 南伊東〜伊豆急下田 試運転 |
3月4日 | アロハ電車 デザイン発表 |
3月23日 | Y-1+Y-2編成 8両 伊豆高原〜伊豆急下田 試運転 |
4月1日 | Y-1+Y-2編成 8両 見学会(伊豆高原・伊豆急下田) 臨時回送 伊豆高原〜伊豆急下田 |
4月3日 | Y-1+Y-2編成 8両 撮影会(伊豆高原) |
4月4日 〜4月7日 | Y-2編成 4両 伊東駅構内 現車訓練 |
4月29日 | Y-1+Y-2編成 8両 試乗会&撮影会 団臨 伊豆高原〜伊豆急下田 |
4月30日 | Y-2編成 4両 営業運転開始 |
6月2日 | Y-1+Y-2編成 8両 試運転 伊豆高原〜熱海 |
6月13日 | 伊東線運用開始予定 |
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