【13日デビュー】使命は次回検査まで?南武支線E127系2編成が出揃う

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JR東日本では2023年2月、南武支線(南武線 尻手駅〜浜川崎駅間)で使用する205系の一部代替用にE127系2編成を投入することを明らかにしていました。

5月31日から6月1日にかけてV1編成が、9月5日から6日にかけてV2編成が長野総合車両センターを出場し、それぞれ国府津車両センターまで配給輸送されています。

新潟から“上京”小所帯のE127系

E127系は新潟・長野エリアの普通列車用として1995年から1998年にかけて製造された3扉車2両編成の電車で、このうち新潟エリアには0番台13編成26両が投入されました。

V3編成が2008年の踏切事故で廃車となったほか、V1〜V11編成の10本が2015年3月にえちごトキめき鉄道へ譲渡されており、2本残ったV12編成とV13編成が新潟エリアに留まって活躍を続けていました。

2021年度にE129系8両の増備が進行し、新潟駅高架化工事の完了も近くなった2022年3月、ダイヤ改正で115系7編成とともにE127系は定期運用を失うこととなりました(過去記事)。

その後6月に落雷の影響で多くのE129系が使用不能となったことから急遽上越線で運用を再開しています。新潟駅周辺の運用が主だったE127系が初めて上越線の定期列車で使用されることとなりました。

6月末から11月末まで同線で、12月は越後線で代走を担いました。

2023年2月17日、JR東日本横浜支社より「南武線(尻手~浜川崎駅間)へのE127系の投入について」として南武支線への転用が公表(外部PDF)され、同月21日から22日にかけて長野総合車両センターまで配給輸送。5月31日から6月1日にかけて元V12編成→V1編成が、9月5日から6日にかけてV13編成→V2編成が長野総合車両センターを出場し、それぞれ国府津車両センターまで配給輸送されています。

7月24日には鶴見線へのE131系投入発表とともに「南武線(尻手~浜川崎駅間)E127系営業運転開始について」として9月13日(水)より順次営業運転開始となることがアナウンス(外部PDF)されており、いよいよ新潟の電車の“再出発”が始まろうとしています。

帯色が変更されたE127系を見る

今回新たに転用された車両は、鎌倉車両センター中原支所に所属することとなるE127系V2編成の2両です。新潟車両センター所属時代はV13編成を名乗っていました。

事前リリースのイメージ画像同様に南武支線カラーの黄色と緑があしらわれています。新潟時代と異なり肩部も二色帯となっているほか、裾部の帯はなくなるなどややシンプルなものとなりました。

前面の白色JRマーク・側面の緑色JRマークも改造前と同様で、良くも悪くも最新の車両とは異なる平成初期登場の車両らしい雰囲気を保っています。

リリース時点で帯色変更程度の小規模な変更かと思われましたが、保安装置がATS-PsからATS-Snに変更されています。首都圏の一般車両としては不要な設備ながら、PsはSnの上位互換として機能するためこの改造は必須とは言えません。

使用線区で不要なE257系2000番台,2500番台が将来の臨時列車での使用可能性を理由に東海道転用時にSnからPsへ交換された事例と対照的で、新潟エリアに戻ることは現時点で想定されていないものと考えられます。

E127系ではえちごトキめき鉄道譲渡車を対象に強化型スカートへ改装されていましたが、JR東日本に残存した2編成は旧来のスカートとされていました。今回の転用でもスノープラウを含めて従来同様です。

遠く離れた地で第二の“車生”を過ごすことに

205系1編成が残存

JR東日本ではこれまでも、車両代替に際して在来車両に比較して投入本数を1本減らす事例が散見されます。

車両更新により安定性が向上して予備車が削減可能に……といった事例や、運用が増え1本だけ残ることとなった……など経緯は様々ですが、今回の205系代替は3編成配置2運用とそもそも代替が不可能です。今後も205系が1編成維持されることとなります。

一方で、205系1000番台は以前から車両故障が頻発しており、2021年秋には送り込み回送時に南武線で立ち往生して朝ラッシュに混乱を与えた事例がありました。

また労組資料でも転用改造時に搭載したSIV(205系1000番台は3編成ともMG非搭載の電動車ユニットが種車となった:過去記事)の故障が挙げられるなど、代替を急ぎたい事情が見受けられます。

とはいえ、E257系5500番台の高崎線特急転用と同様に“場繋ぎ”要員といった印象も拭えません

推測の域を出ませんが、車両取替中長期計画“ベストプラクティス”の改訂過程のうち、コロナ禍での減収を受けた見直しのタイミング(他路線等の動きや700億円削減報道がされた時期から2021年夏ごろまで)で決定されたことが想像されます。

鶴見線向けE131系と推定できる24両の発注が「鉄道車両等生産動態統計調査」の2021年9月次に記載されている(政府統計ポータルから閲覧可能)こと・概ね鉄道車両の発注から落成まで1年半〜2年が経過することからも、時系列としてはこの辺りと考えられます。

現在、南武支線・鶴見線では燃料電池ハイブリッド車両FV-E991系“HYBARI”(過去記事)による実証実験が開始されていますが、実車登場前から実用化は2030年代に延期(当初は2024年度実用化目標)となっていますが、そもそもFV-E991系の投入予定先が同線だったのかも不明瞭でした。

現状を踏まえると、将来的には鶴見線向けE131系を2両編成で追加導入・かつて205系で想定されていたような2+1両編成1本(または中間車を抜き取り可能な編成)を用意して予備車の共通化……辺りが理想的でしょうか。

新潟地区で定期運用を失ってから現在までファンの間でも困惑の声が多く聞かれますが、将来的にどのような代替を想定しているのか不思議な路線となりました。

走行距離が短すぎて……

E127系は新潟向け0番台・松本向け100番台とも長野総合車両センターで保全(旧来の重要部検査・全般検査)を実施しており、えちごトキめき鉄道に譲渡されたET127系も同様です。

新潟支社で活躍するE129系と同様に新潟車両センター内で指定保全を行う体制が報じられていた(2017年 交通新聞)ものの、今回転用されたV12,V13編成ともに機器更新工事も同時施工となったため長野総合車両センターで実施されていました。

そのためE127系の検査ノウハウは今のところ長野にしかなく、わざわざ長野総合車両センターまで配給輸送するのか、それとも多様な車両の扱いに長けた大宮総合車両センターなどが新たに担うのか……といった点も注目できそうです。

しかし、南武支線での運用では路線特性・運用構成から走行距離が伸びにくいことが予想されます。

検査のための入出場を含む保全は60万km毎に実施されるため、現在の列車本数(約40往復+回送)と営業キロ(片道4.1km)をE127系2編成だけで運用しても単純計算で10年弱は使用可能で、これはこれまで首都圏の新保全体系対象車両で最も周期の長いと言われていたE231系800番台の約6年毎(過去記事)をも凌駕する計算です。

現実には、ほぼ休車状態で検査期限を延長し続けることが予想される205系1編成の検査期限延長が尽きる方が先となりそうです。検査周期的には2023年1月に検査を受けたワ4編成が残存すると考えられ、これがJR東日本管内最後の205系となることも予想され今後注目を集めそうです。

それまでには残される205系1編成の今後に結論が出ることも明白で、E127系はその際に更なる転用を受けるのか、使命を全うする格好になるのかのいずれかとなりそうです。

鶴見線E131系も出場直近

先述のようにJR東日本ではE127系転用の公表とともに、鶴見線向けにE131系3両編成8本を導入する旨も明らかにしています(外部PDF)。

現在、総合車両製作所新津事業所にてストレート車体のE131系が製造されている姿が複数ファンから目撃されており、車体の検査表記からトラブルがなければ10月には姿を見せることとなります。

個性的な存在となる鶴見線E131系の出場も楽しみです。

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コメント

  1. ak より:

    南武支線に関しては2020年頃より川崎市が南渡田地区拠点整備基本計画の一環として浜川崎駅の移転統合を検討しているなど、将来の動向が決まりきっていないことも向こう30~40年を見据える必要のある車両更新を考える上での足枷になっていそうです。