既に発表されていた本年度の新形式で、これまで唯一姿を見せていなかったJR東日本 FV-E991系。
2月4日深夜(5日未明)、総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所を出場しました。
JR東日本にとっては再挑戦?
JR東日本では、2008年にクモヤE995形“ne@Train”として、世界初の燃料電池ハイブリッド試験車を改造で作成しました(参考:当時のリリース)。
電気とディーゼルのハイブリッド試験車 キヤE991形を除籍・再改造して登場したものの、車籍がないままとされ構内試験に留まりました。
その後は蓄電池駆動車“ne@Train スマート電池くん”となったのち、クモヤE995-1として車籍も復活して試験が続けられ、2019年12月には長野へ配給輸送・のちに解体されています。
この車両の配給輸送が行われる半年前となる2019年6月4日には、新たな試験車となるFV-E991系の計画が発表されています。
FV-E991+FV-E990の2両編成1M1T構成で計画されており、最大航続距離もより実運用を意識した構成とされています。搭載機器が多い蓄電池車を単行車としない点はこれまでのEV-E301系をはじめとする車両と同様の理由と推察されます。
これまで“ne@Train”で培われた技術はこれまで、ハイブリッド駆動車は小海線のキハE200形やHB-E300系・HB-E210系として・蓄電池駆動車は烏山線のEV-E301系としてそれぞれ量産化されています。
蓄電池技術も近年大きく発展しており、残されていた燃料電池ハイブリッド車についても期待出来る後輩が登場することとなりました。
参考:今までの内燃車両置き換えの新技術車両投入線区(JR東日本)
キハE200形ハイブリッド気動車=小海線
HB-E200系ハイブリッド気動車=観光路線各地(キハE200形気動車と混結可能)
HB-E210系ハイブリッド気動車=仙石東北ライン
EV-E301系蓄電池駆動車(直流)=烏山線
EV-E801系蓄電池駆動車(交流)=男鹿線
GV-E400系電気式気動車=新潟エリア・秋田エリア
実用化は2030年代に延期……?
2019年6月の発表(公式発表:外部PDF)に基づく報道では、EV-E991系の実用試験は3年間・2024年度に実用化も伝えられていましたが、直近の報道では2030年代の早いうちとされています(参考:2021年11月 産経新聞報)。
技術的な問題で延期されたのか、昨今の収支の関係で延期されたのか、はたまた試験項目が追加されたのかは定かではありません。一方で、試験の開始期間は予定通りの2022年3月とされています。
2019年当初から所属基地である鎌倉車両センター中原支所・常駐先となることが想像される鶴見線営業所にも設備は設けられているものの「フル充填」はされず、最大航続距離となる充填は扇町で実施される計画です(参考記事:配線略図.net様「【石炭から水素へ】扇町駅の水素供給設備」)。
落成した車両を見る
今回落成した車両はJR東日本の新型試験車 FV-E991系の2両です。
車号はFV-E991(1号車)+FV-E990-1(2号車)・車体表記は鎌倉車両センター中原支所を示す「横ナハ」・編成記号は「HY」とされています。
試験車の編成名が車両愛称の略称とされた事例は川越車両センター所属の209系“mue train”が「Mue」とされた事例があり、今回もFV-E991系の車両愛称“HYBARI”の頭文字がそのまま編成愛称とされていることが読み取れます。
外観としてはイメージ画像の通り、EV-E301系と同形状の構体にフルラッピングを施したものとなっています。JR東日本の車両でステンレス構体フルラッピングとされたのは初の事例で、ラッピングの特徴を活かした複数色による目立つデザインとなっています。
細部ではフリースペース・半自動ドアボタン・側面行先表示器など、実験車という位置付けながら設備は量産されたEV-E301系の客用設備がほぼそのまま設置されています。ただし車内運賃収受を前提としたドア表示器(入口・出口)は設けられていないなどEV-E301系との違いも見られます。
JR東日本ではこれまで、異常時に列車防護のために設置されている信号炎管の廃止が進められることとされていますが、非搭載で新造された形式もFV-E991系が初となりました。
FV-E990-1の屋根上には水素貯蔵ユニットが並びます。本形式はFV-E991形に蓄電池関係の設備・FV-E990形に燃料電池関連装置が分散される設計です。
外観として気になる点として、パンタグラフ設置の準備設計がされている点が注目されます。
EV-E300系の設計をそのまま流用しただけにも思えますが、EV-E301系は2基搭載されていたもののFV-E991系では1基搭載の準備とされています。これが準備工事なのか、設計を流用するために残置されたのかは定かではありません。
今回登場したFV-E991系の水素充填量は1,020ℓとされており、1充填あたりの最大航続距離は140km程度とされています。試験路線となる鶴見線の運用をする場合は1日1回の充填では終日運用には足りない程度と、運用効率の課題が注目される車両でした。
公式には現時点で示されていませんが、水素エネルギー以外にも既に実用化された架線給電も共用することで、JR東日本の各線区で見られる始発駅周辺や両端が電化された線区への投入の際にはこれらの電化設備と併用する用途も想像でき、試験の進展次第で追設する狙いがあるのかもしれません。
また、JR東日本では以前より架線レス化を検討に掲げており、閑散区間のみ架線レスとする場合の最適解にもなり得そうです。
実運用の投入線区は不明ですが、JR東日本が掲げる将来像を色濃く反映した車両として開発されていることがうかがえます。
逗子駅に入線するFV-E991系
輸送中のFV-E991系
(6日追加)5日から6日にかけて武蔵中原駅まで甲種輸送され、同駅から鎌倉車両センター中原支所までは自走で入換されました。
鶴見線・南武支線の新造車はどうなる?
先述の通りFV-E991系で試験される技術の量産化は2030年代の早いうちとされており、205系があと10年近く生きながらえるとは考えにくく、鶴見線・南武支線向けの代替車は消去法でE131系となることが色濃くなりました。
これが2022年度の動きとなるのか、それ以降の動きとなるのかは定かではありませんが、既に駅掲示で引退の匂わせがされている・他の205系運用線区として残る仙石線も置き換えが計画されているなど遠くないことは確実です。
正式発表後は賑やかになりそうですので、早めに楽しんでおきたいところです。
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