2023年9月2日、鎌倉車両センターに所属するE217系Y-29編成が大船駅〜伊東駅間で回送されています。
「185系で行く、伊豆撮影旅」ツアーでの伊東駅撮影イベントの展示車両としての登場ですが、伊東線伊東駅までの入線は2010年夏ごろ以来とみられます。
置き換えが進むE217系
横須賀線・総武線快速電車で使用されているE217系は、後継となるE235系1000番台の投入により徐々に数を減らしています。
E217系と同数となる基本11両編成51本・付属4両編成45本が投入予定とされているうち、基本編成はF-29編成まで・付属編成はJ-27編成まで(いずれも記事公開日時点)と既に過半数の投入が済んでいます。E217系の運用は既に基本・付属各20程度にまで減少しており、E235系の方が多数派となっています。
一方でE235系1000番台の登場以降、余剰となるE217系は国府津車両センターや幕張車両センター、横須賀駅や湯河原駅へ疎開する措置が日常的となっており、車両数ではE217系とE235系1000番台が同程度となっています。
これらの動きはE235系の投入ペースとE217系の廃車ペースがアンマッチとなっていることが背景ですが、205系に続きインドネシアへの譲渡が計画されていた(過去記事)ものの同国内の政治情勢などもあって流動的となっていて処遇がなかなか決められなかったことも大きく影響した模様です。
直近ではインドネシアでの譲渡時を想定していたのか、付属4両であるY-119編成のうち増1号車・増2号車の2両だけが除籍されるといった不可思議な動きも生じていました。基本編成の9〜11号車がセミクロスシートとなっていることから、1〜3号車+6〜8号車+増3,増4号車とすることでモノクラス貫通8両編成として利用する狙いがあるのでは?という推測も聞かれました。
海外メディア等の情報を総合すると、残念ながらE217系の譲渡は実現しない方向で進んでいるようで、今後は廃車解体の動きが本格化しそうです。
疎開全盛期には現在も使用されている疎開場所に加えて東京総合車両センター田町センターや湯河原駅は上下双方の側線なども使用されていましたが、2023年現在でも依然として営業車・運用離脱車問わず疎開措置が実施されています。
「185系で行く、伊豆撮影旅」旅行商品
JR東日本横浜支社とJR東日本びゅうツーリズム&セールスの連名で7月10日に発売をリリース(外部リンク)した「185系で行く、伊豆撮影旅」では、185系に品川〜片瀬白田間での往復乗車と片瀬白田駅・伊東駅での撮影会を実施するとしていました。
記念弁当・記念グッズといった特典のほか、最近の有料イベントの魅力とも言える現場の職員さん企画のイベントなども実施されています。
そしてツアー最大の特典となる185系と伊豆急8000 系を並べての車両撮影会では、185系に特急「あまぎ」のヘッドマーク掲出のほか「撮影会場には、当日のお楽しみとして、普段は伊東線に入線しない車両が1編成登場」とされており、どのような車両が使用されるのかファンから注目されていました。
E217系の伊東線での勇姿を見る
今回伊東線へ入線したのは、鎌倉車両センター所属のE217系Y-29編成11両です。
E217系は横須賀・外房・内房と海辺を走行する車両ですので、伊東線の海辺の景色にも違和感なく溶け込んでいます。
E217系は2004年10月改正で湘南新宿ラインが大幅な増発・E231系に統一(参考過去記事)されて以降は余剰傾向となっており、2006年から2015年にかけて東海道線で15両2〜3ペアが使用されていました。
これに加えて、2009年から2010年にかけて、E217系の11両編成・東海道線色の10両編成が伊東駅電留線に疎開していた事例が知られています。
近年のE217系疎開措置では伊東駅の使用事例がなかったこと・イベント等の実施歴がないことから、E217系の伊東線入線はおよそ13年ぶりとみられます。
また、伊東線の有効長は113系時代の名残で11両とされています。
伊東駅以南の伊豆急行線の有効長が現在は10両200m+α程度となっていること・現在11両編成を組む車両が他にほとんどないこともあり、伊東線で11両編成の列車が運行されたのも13年ぶりでしょうか。
伊豆急行線より僅かに長い有効長は2023年8月のE657系入線でも活用されました(過去記事)。
東京側先頭車には「伊豆高原⇔伊豆急下田」と記載された伊豆急100系モチーフのヘッドマークが掲出されていました。メインの185系展示側とは反対の逆光となる先頭車かつ参加された方の撮影時間帯は40分と短めの設定でしたので、あまり注目はされていない状態でした。
伊東駅では定期運用で使用されている伊豆急3000系“アロハ電車”とも並んでいます。伊豆急3000系は幕張車両センターを拠点に活躍していた209系2100番台の譲渡車で、このうちY1編成は元C609編成です。
ともに千葉を駆け抜けた同世代車両の再会としても、かつての大船を彷彿とさせる並びとしても熱いものとなりました。
Y-29編成は幕張車両センターR-02編成として新製されて後年に鎌倉へ転入した経歴があり、ともに「元 幕張車両センター」の電車です。
前面・側面ともに特別快速表示での展示となっていました。かつて215系を使用して伊東〜鎌倉間の臨時快速列車が設定されたことがありますが、E217系で実現することはあるのでしょうか。
サプライズゲストとしての立ち位置ながら、“主賓”である185系や伊豆急8000系の目隠しとしての配慮とも言えそうです。
疎開ついで……?
今回の「185系で行く、伊豆撮影旅」は、鎌倉車両センターで開催されている『「とあるE217系のさよなら撮影会2」in 鎌倉車両センター』と同日に実施となっています。
量産先行車であるE217系Y-2編成の引退を記念したイベントで、Y-101編成やY-102編成、その他E235系や横浜線E233系、特急「成田エクスプレス」E259系など同センターに所属する様々な車両が一同に並べられています。
2022年10月15日には「とあるE217系のさよなら撮影会」が開催されており、こちらも量産先行車であるY-1編成の引退を記念したものとなっていました。
鎌倉車両センターではこれ以外にもたびたび有料撮影会が実施されていますが、2022年の「とあるE217系のさよなら撮影会」では前日から当日にかけて別の編成が湯河原駅へ疎開する動きが生じていました。
通常のE217系の疎開措置では、横須賀駅や湯河原駅での疎開は一定期間で入れ替えをする体制が組まれています。
これは仕業検査実施の内規にあわせたものとみられており、2022年3月までは6日を超えない範囲としていたため概ね5日毎に疎開車両を差し替え・2022年3月からは仕業検査実施基準が9日を超えない範囲に拡大されたため概ね8日毎に疎開車両を差し替える体制となっています。
一方で2022年10月の事例は2日間のみとなっており、撮影会開催のための場所確保の色合いが強いものとされていました。
今回のE217系の展示についても、国府津車両センター・幕張車両センター・湯河原駅などに疎開車両があるなかであえてE217系基本編成1本を大船駅〜伊東駅で回送、同日中に戻す体制とされました。
これらの事例を当て嵌めると、今回「185系で行く、伊豆撮影旅」の展示車両としてE217系を伊東駅へ回送したのも、鎌倉車両センター内の場所確保の意図も含まれているかもしれません。
コメント
普段入線しない線区で見る系列は、興味深いです。
東海道本線や伊東線で、横須賀線・総武快速線用のE217系が走行するのは、回送や試運転でも、貴重な景色と考えられます。
食事に例えるのなら、御飯にバターやブルーチーズをトッピングする様な感じです。
宗教に例えれば、お寺の住職が聖書を読んで、教会の牧師がお経を唱える様な感じです。