【N’EX】成田エクスプレスE259系 房総特急255系置換に活用へ

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成田エクスプレス用の第二世代車両として6両編成22本が活躍するE259系。

2023年春よりロゴマーク変更が目的とみられる塗装変更が実施されてきましたが、労組資料により何らかの形で255系の置き換えで活用されることが確実視されるようになってきました。

これまでの動きを振り返りつつ、どういった運用体系となりうるのか考えます。

着々と進む塗装変更

E259系は特急「成田エクスプレス」用の初代使用車両253系の代替として2009年10月より運用が開始された特急形電車で、6両編成22本が投入されました。

2010年に成田空港の滑走路延長で年間の発着回数の増加、京成電鉄の成田スカイアクセス線開業などを控えており、これらの背景を受けた車両の世代交代となりました。

当時の253系では3両編成と6両編成が混在していたところを6両編成で統一して21両の増車となったものの、利用増は期待されていたほどではなかったのか2012年から「マリンエクスプレス踊り子」の運転や2014年から「成田エクスプレス」1往復が富士急行線河口湖駅まで・3往復が横須賀駅まで延長運転するなど新たな取り組みも実施されていましたが、いずれも姿を消しています。

「成田エクスプレス」の運転区間自体では繁忙期の臨時便といった運転体系ではなく、2010年代の時点で3運用相当の余裕がありました。これに加え、2022年3月改正で新宿駅〜池袋・大宮駅の区間が廃止されたことで日中の折り返し運用が効率化したことで1運用相当が削減されて現在に至ります。

2023年3月24日、『特急「成田エクスプレス」の車両デザインをリニューアルします』として外観のデザイン変更が公表されました(外部リンク)。

従来デザインとして「成田エクスプレス」の主張が弱められたものとなっており、リリースでも「空港アクセス特急に限らない多様化したご利用目的に合わせた都市間輸送特急」とされるなど他列車での運用が想像しやすい内容となっていました。

その後は大宮総合車両センターで塗色の変更が進められており、検査時期ではない臨時入場も行なって次回ダイヤ改正までに完遂しそうな極めて速いペースで実施されています。

2023年12月1日、JR東日本の労働組合の1つである国鉄千葉動力車労働組合の支部大会についての内容で、「255系(Be)を259系(NEX)に置き換える話が出ているが、どのような運用になるか」といった記述がありました。

これ以上の詳細な記載はないものの、「房総の特急が全席指定になったら」と2024年春より開始されることが公表済み(外部リンク)の内容についても触れられており、過去事例から類推してもこれらの導入時期は2024年3月16日に実施されることが状況から明らかなダイヤ改正と同時になるものと考えて間違いなさそうです。

混み運用か幕張常駐か

今回のE259系の運用範囲拡大の疑問点としては「255系の全数淘汰が可能なのか」「発着駅の異なる特急同士をどう共通運用するのか」などが挙げられます。これらの点はファンの間でも不思議な点で、当然ながらJR東日本の社内でも綿密な議論がされてきたはずです。

まず、一部編成の幕張転属を伴うとは考えにくい動向です。これは、E259系の塗色変更を全編成を対象に実施していることから容易に想像ができます。

4〜5編成を幕張に転属して代替する場合はこれらの使用車両のみを塗色変更すれば済むうえ、従来からの懸念材料だった利用者の誤乗を容易に回避することができました。

次に、その他の運用体系で考えられる方法としては、現在大宮総合車両センターのE257系5両編成で実施されている混み運用か、波動用編成で実績のある常駐方式かのいずれかが考えられます。

255系5編成を全数代替するためにはE257系との運用持ち替え等をするとしても単純に4〜5編成を幕張車両センターに常駐させる必要があり、E259系は22編成配置で最大効率で運用しても17運用は必要な体制(実態としては18運用+終日留置1運用+予備3で回していると推定されます)で予備がなくなってしまう状態です。

幕張に常駐させられるような減車・減便を実施するか、なるべく減車・減便を回避するために複雑な混み運用を設けるか、255系の全数淘汰は諦めて一部のみ置き換えとするか……といった調整が真っ先に想像しやすいところです。

常駐方式であれば小さくなった「N’EX」ロゴになんらかのステッカーを上貼りする豊田常駐時代のE257系のような対応も出来そうです。

現在の成田エクスプレスの列車構成

空港特急としてのイメージが極めて強い特急「成田エクスプレス」ですが、朝晩の時間帯は通勤特急の色合いも強くなっています。

先代の253系時代から「房総料金回数券」の指定席用が「成田エクスプレス」も利用可能とされており、朝の上り・夕方以降の下り列車(総武線基準)は千葉駅・四街道駅・佐倉駅・成田駅が停車駅に加えられていました。

近年では「えきねっとトクだ値」による割引キャンペーンを積極的に実施して横須賀線・中央線区間の通勤利用も取り込む方策とされ、房総特急も「房総料金回数券」廃止とともに同様の体制へ移行しました。

コロナ禍で「成田エクスプレス」の多くが運休とされたなかでもこれらの通勤利用が見込まれる列車に限り運転が続けられたのち、2022年3月に新たなテコ入れとして千葉駅停車便を日中時間帯にも設定することで運転を再開するに至りました。

この日中時間帯の千葉駅停車増加では、新規停車列車は新宿・大船駅始終着列車が選定されており、新宿〜成田空港駅間を12両編成のまま運転する列車は通過のままとされました。

今回の2024年3月改正で仮に減車を行うのであれば、新宿〜成田空港駅間を12両編成のまま運行していた列車の6両化が一番想像しやすいところです。

E259系の総武本線試運転は2021年秋に複数回実施されており、将来的な255系代替方法として「成田エクスプレス」と「しおさい」の整理が候補に上がっていたのであれば時系列としても辻褄が合いそうです。

この時点で労組からの波動輸送での活用についての質問に対し、否定的な会社回答がありました。高運転台のE259系は一般的な車両と比較すると視野が異なることから、入線確認に時間を要することが理由とされていました。

255系はなんとか全車代替をしたい?

今回新たに明らかになった情報では、255系の全数淘汰が可能なのか否かは断定しにくい内容で、ファンの間でも予想が割れています。

昨年の同時期にはE257系5500番台で「草津・四万」「あかぎ」の表示がお目見えしたことで先行した動きがありましたが、こちらもやはり置き換え可能数の対して車両が足りないことからファンの間で様々な憶測が飛び交いました。

2023年3月改正では「踊り子」用の2500番台に「あかぎ」運用1往復と予備車の共通化をさせつつ、日常的に運行されていた特急「富士回遊」の土休日臨時列車をE353系に代替、185系を波動輸送用として引き続き活用することで帳尻を合わせました。

JR東日本のこれまでの全車指定席化の動きを遡ると、初の試みとなった651系「スワローあかぎ」を除き、コンセント整備は全車指定席の運用開始に間に合うタイミングで実施されてきました。

自由席特急券で乗車していた利用者にとって“値上げ”とも受け止められる変更内容から、せめてものサービス向上をする意向があるのではないかと推察できます。

2023年に入ってから幕張車両センター所属のE257系500番台についても、順次コンセントの設置工事が進められてきました。

このことから、今回もなんらかの手段を用いて255系の定期運用全廃を実施しても不思議ではありません。

E257系を更に捻出することも可能?

房総特急では土休日の臨時列車が必要車両数を増加させている一因で、255系の平日4運用・土休日5運用のうち土休日の1運用相当は別の方法で代替する方策も考える必要があります。

先述のように、2023年3月の高崎線特急代替では首都圏全域で臨時列車の充当車両を調整しており、今回もE257系5000番台・5500番台の活用方針に変化が訪れそうです。

2023年に入って新潟車両センターからE653系1編成がK71編成として転入しており、2023年10月より運用されています。現時点では稼働頻度がかなり抑えられており、本格的な活用はダイヤ改正以降となりそうです。

また2023年度の冬の臨時列車では、リリースから常磐線以外での活躍が主軸に置かれて東大宮センターに常駐しているK71編成だけでなく、勝田車両センターを拠点に運用されているK70編成にも常磐線に縁がない路線での年末年始・初詣の臨時特急運用が設けられています。

2023年に入ってE657系が東海道線での活躍も見られるようになったように、E657系は19編成配置・定期15運用と予備車比率が高めとなっており、常磐線方面発着の臨時特急を中心にE657系の波動輸送は今後も拡大していきそうです。

特急「鎌倉」や特急「草津・四万」の臨時便などのE653系が入線可能な路線の列車にはE653系を、修学旅行臨などE653系の使用が困難な列車には185系を、土休日にE257系での運転頻度が高い中央線特急「あずさ」「かいじ」は運用数を減らしたままのE353系付属編成の稼働数増加を、常磐線方面の臨時列車には運用数の余裕が多いE657系を……と首都圏全体で運転体制を微調整していけば、E257系5000番台・5500番台を房総方面の臨時特急で運用する頻度を上げることは十分可能な範疇と言えるのではないでしょうか。

定期列車だけならE259系で足りるかも?

上記のように土休日の運用増加分が賄えた場合、あとは平日朝夕の着席需要に応える特急運行の座席数が不足しないのかどうかが注目点となります。

近年の255系・E257系500番台の使い分けとして、総武本線系統では「しおさい4号」はE257系10両でそれ以外は255系・外内房系統では「さざなみ6号」と「わかしお」3往復が255系でそれ以外がE257系とされています。

255系全数代替の場合、「しおさい4号」を含めた「しおさい」全列車がE259系に、255系が使用されている「さざなみ6号」と「わかしお」3往復がE257系に持ち替えとする仮定が最もシンプルで現実味があります。

・E259系 房総特急行路(想像)

○大船-回送-東京-しおさい11号-銚子△

○銚子-しおさい2号-東京-しおさい1号-銚子-しおさい8号-東京-しおさい5号-銚子-しおさい12号-東京-しおさい9号-銚子△

○銚子-しおさい6号-東京-しおさい3号-銚子-しおさい10号-東京-しおさい7号-銚子-しおさい14号-東京-しおさい13号-成東-回送-幕張△

○幕張-回送-佐倉-しおさい4号-東京-回送-大船△

4運用が設定されそうなところですが、「しおさい4号」は東京駅8:00着・「しおさい11号」は東京駅20:10発ですので、現行でも見られる夕方までに鎌倉車両センターに戻って仕事を終える「成田エクスプレス」運用・朝だけの「成田エクスプレス」運用との組み合わせ等で3編成相当で運用自体は可能となりそうです。

E257系2編成併結だった「しおさい4号」が大幅な座席数減少となる点が気になりますが、新しい料金体系での利用減少でカバー出来る範囲と判断されている可能性が十分想像できるほか、「成田エクスプレス」運用を終えた車両を夜に大船→幕張間で回送して12両で運転する……としても運用数は増加せずに抑えられそうです。

「しおさい4号」以外は増結の余地はなさそうですが、これまで自由席に利用が偏っていた「しおさい」全列車が6両でも対応可能と統計が取ていたらこれらの変更も不思議とは言えません。

3編成相当であれば従来の運用の余裕を活用して代替可能と言えます。

捻出されたE257系2編成で255系が使用されていた7列車を代替可能かについても考慮してみます。

・E259系 房総特急行路(想像)

○幕張-回送-茂原-わかしお2号-東京-京葉セ-東京-さざなみ3号-君津-回送-東京-さざなみ9号-回送-木更津△

○木更津-回送-君津-さざなみ2号-東京-わかしお1号-勝浦-わかしお10号-東京-わかしお9号-鴨川-わかしお16号(一ノ宮で増結)-東京-わかしお15号-一ノ宮-わかしお22号-東京-わかしお21号-鴨川

鴨川-わかしお6号-東京-わかしお5号-鴨川-わかしお18号-東京-わかしお17号(一ノ宮で解結)-鴨川△

○鴨川-わかしお8号-東京-わかしお7号-鴨川-わかしお14号-東京-わかしお13号-勝浦-わかしお24号(一ノ宮で増結)-東京-わかしお23号-勝浦

勝浦-わかしお4号-東京-回送-幕張(解結)-回送-一ノ宮-わかしお16号-東京-わかしお15号-一ノ宮-わかしお22号-東京-わかしお21号-鴨川

鴨川-わかしお6号-東京-わかしお5号-鴨川-わかしお18号-東京-わかしお17号-一ノ宮-わかしお24号-東京-わかしお23号-勝浦

勝浦-わかしお4号-東京-回送-幕張(解結)-回送-東京-さざなみ5号-君津-回送-幕張△

○幕張-回送-君津-さざなみ4号-東京-回送-京葉セ-回送-東京-さざなみ1号-君津-回送-東京-さざなみ7号-君津-回送-幕張△

○幕張-回送-君津-さざなみ6号-東京-わかしお3号-鴨川-わかしお12号-東京-わかしお11号-勝浦-わかしお20号-東京-わかしお19号-一ノ宮-回送-幕張△

255系の代替は理想的にはE257系2編成併結の10両であるべきですが、当然ながらそのまま置き換えるだけの車両数はありません。

255系が担っていた朝の2列車はそのまま2編成を使用する必要がありますし、255系の終日運用を受け持つことで夕方の「さざなみ」使用分が不足するため、従来は朝だけで済んでいた1運用相当を終日運用に変更する必要があります。

これでもなお255系の代替は5両編成で行う必要があり、増結の余地がありません。上総一ノ宮駅以遠まで10両で運転される列車は朝晩・日中の留置場所確保を主旨としたもののみで朝ラッシュ・夕ラッシュには活用できません。

東京駅8:48着の「さざなみ6号」と東京駅20:00発の「わかしお19号」が全車指定席化により5両編成でも運行可能……と過去の利用実態から見えているのであれば、こちらも実施は可能なのかもしれません。

ダイヤ改正の概要である程度は見えてくるかと思いますが、12月下旬のダイヤ改正概要発表を前に散発的に新たな動きが出てくる時期ですので、引き続き各方面の動向に注目したいところです。

やっぱりE263系をN’EXに入れる計画だったのでは……

255系は機器更新工事こそ済ませているものの経年車であることには変わりなく、コロナ禍による計画変更を受ける前の「ベスト・プラクティス」に基づいた会社回答の「2023年までは使用」とされてきたように代替時期に迫っています。

前年度のE257系5500番台の転用も651系の老朽化が耐えきれず計画を変更されたことが読み取れる内容でした。

動きが進めば進むほどコロナ禍前はE263系を「成田エクスプレス」に投入し、E259系を日光・高崎・房総3方面の代替に充てる計画だったのでは?という疑問への答え合わせとなってきた印象も受けます。

残された疑問点として、現状では残されたE257系500番台の機器更新工事を引き続き実施せずに済ませている点が挙げられます。

機器更新工事を見送って運用中の車両といえば中央線快速電車の209系1000番台が挙げられますが、同様に“引退時期”にある程度目星がついている状態であれば整合性が取れます。

また、E259系転用後に255系の一部を土休日の臨時列車用で残し、その間に機器更新工事を一気に進める狙いであればそれもまた辻褄が合います。

255系より10年弱ほど経年は浅いものの機器更新から期間が経過した253系1000番台の今後についても疑問符が付きます。

時系列的に計画〜設計段階まではしていたであろう“E263系”が2020年代後半に登場するのか、それとも全く別の計画が動き出しているのかはE257系500番台の機器更新工事の今後である程度見えてくるかもしれません。

過去関連記事

・2020年9月 房総特急の今後について

・2018年11月 E263系は成田エクスプレスに入れるのでは?論

コメント

  1. 将来的には成田発ー東京か品川経由ー羽田空港行が頻繁に走るんでしょうね

    八王子発 羽田空港行も出るんでしょうか?

  2. 動物のかめちゃん より:

    蘇我駅にて、回送でE257系5000番台が入って来て、そのまま外房線方向に走って行ったので

    ダイヤ改正後のわかしお運用にE257系5000番台の充当を見越して何でしょうか

  3. 謎人 より:

    総武線の『しおさい』は品川まで行けば利便性向上になると思う。