2023年8月29日から30日にかけて、元新潟車両センター所属のE653系U-102編成7両が勝田車両センターへ回送されました。
秋田総合車両センターにて定期検査・塗色変更を受けており、今後はK70編成とともに勝田を拠点に首都圏を中心とする波動輸送で使用されることとなります。
いなほ号と波動輸送
E653系は7両編成8本・4両編成3本が製造されて485系特急「ひたち」を代替、「フレッシュひたち」として上野発着の近距離特急に使用されていました。
先に投入された651系と同様に7両基本編成・4両付属編成の非貫通とされた点は同様ですが、651系は遠距離輸送用としてグリーン車連結の編成とされたのとは対照的に、E653系は近距離輸送用としてグリーン車なしのモノクラスとされた点が特徴的でした。
また、タキシードボディで親しまれた純白の651系とは真逆で、編成によって赤,青,緑,黄,橙の5色の異なる車体色を採用した点も目立ちました。
常磐線特急でしばらく両形式が共存する体制でしたが、2012年3月改正より10両貫通編成のE657系が順次投入、651系とE653系双方を置き換えることとなりました。
651系は高崎線特急「あかぎ」「草津」を中心に、E653系7両編成は羽越本線特急「いなほ」へ、そしてE653系4両編成はいわき駅〜仙台駅間の新たな特急へ転用する計画とされていましたが、2011年3月11日の東日本大震災とその後の情勢によりE653系4両編成は2015年3月開業の北陸新幹線との接続列車として新設された上越妙高駅(新井駅)〜新潟駅間の特急「しらゆき」に転用されることとなりました。
E653系が代替することとされていた新潟エリアでは485系6両編成が多く運用されており、先頭車が半室グリーン車に改造されていました。
そのため、モノクラスだったE653系7両編成も先頭車1両をグリーン車として7両編成のまま転用されています。車椅子対応座席が中間付随車(サハE653)とされていたためか編成短縮されておらず、これによる座席数の余裕を活用してグリーン車は旧来の普通席2列をグリーン席1列に、更にフリースペースも追加設置するという贅沢な改造内容とされており、登場以来“乗り鉄”人気が非常に高い車両となっています。
新潟エリアではE653系が代替する列車以外にも数多くの485系が運用されていました。
特急「いなほ」は大規模なリニューアル工事が施されていた3000番台のR21〜28編成が8編成配置・定期7運用とメインで使用され、新潟〜金沢駅間の特急「北越」や新潟エリアの快速「くびきの」と特急「いなほ」の増発分にその他の485系T11〜T18編成が、専属のK1,K2編成を中心に夜行快速「ムーンライトえちご」が使用される体系となっており、一部の編成が代走可能な設備を有する体系となっていました。
E653系転用と2015年3月の北陸新幹線金沢延伸に向けて、特急「いなほ」はE653系7両編成へ代替、特急「北越」や快速「くびきの」は特急「しらゆき」へ統廃合や普通列車化などの整理が進められました。
北陸新幹線金沢延伸が実現した2015年3月改正では7両の「いなほ」編成が8編成配置・定期5運用,臨時2運用、4両の「しらゆき」編成が4編成配置,定期3運用とされていました。
臨時運用のない限り7両編成に余裕がある配置となっていましたが、新潟車両センターへの集中配置が最も合理的と判断されたのも不思議ではありません。
この体制を活かして転用当初から現在まで新潟支社始終着の臨時列車を中心に旧来の485系が担っていた波動輸送でも活躍しており、首都圏にも年に数回のペースで顔を出す機会がありました。
2018年10月にはU-108編成が国鉄色に装いを改めて勝田車両センターへ再転属し、K70編成として水戸支社管内発着の常磐線臨時列車を中心に波動輸送で使用されるようになりました。
さらに2022年3月改正では、「いなほ5号」「いなほ10号」の酒田駅〜秋田駅間が臨時化・「いなほ3号」「いなほ10号」の1往復に「しらゆき」用の4両編成を使用する体系に改められました(過去記事)。
これによりE653系7両編成の定期運用は更に削減されて4運用のみとなっていました。
2022年夏ごろからU-102編成の運用目撃が途絶えていましたが、2023年7月に同編成は先頭車前面部分の「いなほ」愛称表示が外された状態で秋田総合車両センターへ回送。その後8月にはJR東日本水戸支社より「新色のE653系電車が運行を開始します!」(外部リンク)として水色の装いとなったE653系7両1編成が新たに勝田車両センターに配置されることが公表されました。
新たに登場したE653系水色塗装をみる
今回新たな塗色となったのは、新潟車両センターに所属していたU-102編成の7両です。
かつて勝田車両センターに所属していた際はK302編成として特急「フレッシュひたち」を中心に運用されていました。
1997年に旧来の485系特急「ひたち」の代替のため投入された1次車グループで、K70編成と比較すると製造年次の相違があります。
一方で、E653系は日立製作所・東急車輛製造(現:総合車両製作所横浜事業所)・近畿車輛の3社で製造されましたが、勝田車両センターに里帰りを果たした両編成とも全て日立製作所製の編成が選定されることとなりました。
塗り分けについては常磐線特急時代のE653系と同一のものとされていますが、当時は赤,青,黄,緑,橙の5色だったところ初となる水色の編成となっています。
また、排障器(スカート)やスノープラウをはじめとする耐寒耐雪装備、撤去された電気連結器の復元やグリーン車化改造された先頭車のモノクラス化などは一切されていないため、塗色以外は新潟転用以後の形態を維持しています。
今後は勝田車両センターにて新たな編成番号が付与されることとなります。かつての485系波動用車の6両編成がK60・4両編成がK40、そして現行の国鉄色E653系がK70を名乗っており、編成両数基準で十の位を付与している事例が多い印象です。
続番のK71となるのか、それとも“リゾートエクスプレスゆう”のK30なども含めた末尾0の未使用番号が付与されるのか……9月9日の有料撮影会で答え合わせとなりそうです。
勝田車両センターE653系編成表(2023/8/29-)
編成名 | 7号車 | 6号車 | 5号車 | 4号車 | 3号車 | 2号車 | 1号車 | 経歴 | |
旧 | K308 | モハE652 -15 | モハE653 -15 | サハE653 -8 | 1998年新造 日立製作所 | ||||
旧 | K354 | クハE653 -104 | モハE652 -20 | モハE653 -20 | クハE652 -104 | 2005年新造 日立製作所 | |||
現 | K70 | クハE653 -1008 | モハE652 -1015 | モハE652 -1015 | サハE653 -1008 | モハE652 -1016 | モハE653 -1016 | クロE652 -1008 | 2015年改造 2018年転入 |
編成名 | 7号車 | 6号車 | 5号車 | 4号車 | 3号車 | 2号車 | 1号車 | 経歴 | |
旧 | K302 | クハE653 -2 | モハE652 -3 | モハE653 -3 | サハE653 -2 | モハE652 -4 | モハE653 -4 | クハE652 -2 | 1997年新造 日立製作所 |
現 | K71 | クハE653 -1002 | モハE652 -1003 | モハE653 -1003 | サハE653 -1002 | モハE652 -1004 | モハE653 -1004 | クロE652 -1002 | 2013年改造 2023年転入 |
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