新宿~富士山河口湖を結ぶ直通特急が2019年3月から・両社の思惑は?

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JR東日本から、新宿~河口湖を結ぶ直通特急を20193月改正から運転開始の報道がありました。

JR東日本・富士急行の思惑と今後の展開を推察していきます。

・気になる報道内容

2018113日、報道各社が相次いで報じています。

「主に中央線の新宿(東京)と富士急行の河口湖(山梨県)を結ぶ特急の定期列車を新設する」

3両編成で毎日運転し、1日に数往復させる計画」

「中央線では主に新宿と甲府を結ぶ特急『かいじ』と連結して12両編成で走行。大月(山梨県)で切り離して富士急行に入り、行楽客の乗降が多い富士山、富士急ハイランドの両駅に停車する見通し」

「主に新宿と松本(長野県)を結ぶ列車名を『あずさ』に一本化し、速達タイプに付く『スーパーあずさ』の名称は廃止する」

(共同通信・産経ニュース)

・富士急行直通特急定期化の背景

主な背景事情としては、富士山への訪日観光客の急増が挙げられます。

JR東日本では以前より、ホリデー快速河口湖号→ホリデー快速富士山号・山梨富士号を運転してきました。

しかし、近年では富士山への外国人観光客の急増で、上記列車の混雑が常態化しており、金曜日に「快速富士山」の運転、そして成田エクスプレス号の新宿~河口湖延長運転近年急激に運転本数を増やしています

20183月改正では、車両置き換えの都合で189系・2ドア6両から、E257500番台・1ドア5両となり、あまりの混雑で乗降に手間取って5分程度の遅延が常態化しています。

定期の特急列車としてさらなる利便性・速達性の向上・快適性を追求するのにふさわしい状況だったと言えます。

また、かいじ号などとの併結運転という形態を後押しするものとして、あずさ号・かいじ号の全席指定席化が挙げられます。

これにより、従来の自由席がある途中駅分割列車で頻発していた(新幹線や踊り子号など)誤乗対策の目途が立ったものと思われます。

以上の背景を鑑みると、JR東日本としてはE353系で統一した段階ですぐに全席指定とし、この列車を運転開始したかったものと思われます。

実際には、震災の影響やE353系の車体傾斜装置の調整で、E353系の投入完了は当初計画からはだいぶ遅れたものとなっています。

その結果が波動用としてホリデー快速に使用していた189系の老朽化で、本来特急列車で置き換えたかったものを繋ぎでE257500番台を入れざるを得ない状況になったものと思慮されます。

・JR東日本の思惑は? 

上記の背景があったとしても、新型車両・列車新設に至るのにいくつかの事情が推測されます。

別記事で報じたように、あずさ号・かいじ号では同ダイヤ改正よりE353系での統一(一部臨時便を除く)が行われます。

E353系の投入は全席指定席化のためであり、全席指定席化は車掌人員削減という合理化を前提に行っています

しかしながら、中央線特急はビジネス利用も行楽利用も大変多い路線で、平日・休日問わず指定席満席で自由席混雑という列車も非常に多くあります。

臨時便も多数運転されるものの、それでも繁忙期の指定席は軒並み満席で立ち客多数となっています。

そのような状況下で、訪日観光客が増えたことにより不慣れな外国人観光客での混雑がありました。

大月駅には常に立ち番の駅員が配置されて旅客対応に追われています。

とてもこのままでは全席指定席化をしても車掌人員が削れるとは思えません。

そこで、JAPAN RAIL PASSJR EAST PASSなどの客層の乗り換えを無くすことで、インバウンド層の流れをコントロールしたかったものと思います。

河口湖方面からのかいじ号では、指定席に座る座席未指定のJAPAN RAIL PASSJR EAST PASS利用者が多く見受けられていました。

自由席も大月から大量の乗車があり、比較的空いていることが多い甲府~大月間と比べると、その差は歴然です。

また、E353系投入の時点で、こういった運用形態を想定されていたものと思われます。

E257系を置き換えるには(当初計画段階では)更新時期よりも前であったこと、設計段階で付属編成が車体傾斜をしない区間で独立運転を前提としていたこと(多目的室や機器2重化)などを見れば明らかです。

成田エクスプレスの河口湖延長も、余剰車の活用という観点のほかにも需要予測のデータ収集や、富士急行との調整をスムーズに進めるための緩衝材としての役割も大きかったと思われます。

同様の事例として、伊豆クレイルもスーパービュー踊り子号の代替車検討の試金石という見方も強いです。

以上から、ずいぶん前からこの計画があったものと考えられます。

・名称は?運行本数は? 

名称については正式発表はまだされていないものの、JR東日本から9月に富士回遊という名称の商標登録申請が出ていることから、これが使われるものと思われます。

運行本数についても具体的な数字が出てませんが、現行のホリデー快速と同等の輸送力確保が必須であることから、4往復程度+週末臨時+NEX程度は確保されるのではないでしょうか。

また、JR東日本としては将来的にかいじ号並みに走らせたいはずです。

かいじ号自由席が結構なシェアを持っていましたから、その効率化を考えると増車はしていきたいことでしょう。

上記の思惑を達成するには、インバウンド需要を全て付属編成に詰め込みたいはずです。

これは、試金石である現行の成田エクスプレスが、富士急行線内の普通車料金を安値としていることからも、将来的に普通電車の減便の上で結構な本数を走らせたいという思惑も推測できるからです。

JR側は、本数が増えるほど時間がかかる訪日観光客対応が減って効率化でき、富士急側としても直通特急は利用者増に大きく期待が出来てwin-winです。

趣味的にはその分、ずっと片乗り入れの富士急205系が大月~甲府辺りで乗り入れの清算運用ができたら面白いと思います。

・まとめ

以上のように、新型車両・新規特急を運転する必要性がある複雑な背景事情があることがお分かりいただけましたでしょうか。

JRとしては利用者増加による増収だけではなく、合理化による利益追求という面があることで、これだけの大規模な投資に踏み切ったものと推察できます。

利用者目線としても乗り換えがなく快適に行けるわけで、なかなかうまく考えられた計画だなあと思います。

来春改正の運行開始本数が見えてきませんが、以上の経緯を踏まえると結構本格的な運用がされるのではないでしょうか。

当サイトでは以前より、商標登録申請や各種背景事情からこういった運行形態を推測していましたが、中央線特急の動きについては全て的中となります。

新宿駅~河口湖駅間の特急列車新設・かいじ号などとの併結運転、全席指定席化の背景などもお伝えしてきました。

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