既報の通り、京王電鉄のダイヤ改正は2022年3月12日に実施される予定となっており、2月14日には各駅の時刻表が新たに発表されました。
種別として廃止となる「準特急」が最も注目されていますが、これ以外にも利用者に影響が大きく、ファンにとっても変化がかなり多い内容となりそうです。
ダイヤ改正の傾向と「特急」「準特急」の変遷
京王電鉄は独立した運転体系となっており、これまでもJRが実施するダイヤ改正時期に囚われない日程に実施されていました。近年では2月後半(特に2月22日)に独自のダイヤ改正日を設ける傾向が続いていましたが、今回は久々にJRや関東私鉄各社と日付を揃える変更となっています。
過去の京王のダイヤ変遷をざっくり振り返ると、特急は1963年に行き運転を開始した由緒正しい種別で、2022年3月改正までの特急停車駅に分倍河原,北野の2駅を除いたものとなっていました。
2001年にこの2駅を停車駅に加えた種別として「準特急」が登場し、以後はこちらが主力となりました。
「特急」は2011年夏の節電ダイヤから運行休止・同年9月から1往復のみ復活・2012年8月から2013年2月までは再度休止となった期間がありました。
2013年2月改定が大きな変化となっており、相模原線橋本駅発着の「特急」が停車駅を一新して復活・「区間急行」新設(「通勤快速」名称変更+終日運転化)・「特急」停車駅に分倍河原,北野を追加しています。この変更で停車駅がほぼ同一となった「準特急」は停車駅に高尾線内の京王片倉,山田,狭間となっていた「特急」(従来は北野駅で種別変更)で使用される種別となりました。
2015年9月改正(この時から“改定”から“改正”に呼称変更)からは「準特急」停車駅に笹塚,千歳烏山を追加したことで、現在に近い運転体系になっています。
2021年12月10日には「京王線 ダイヤ改正を実施します」(外部PDF)として種別整理や「Mt.TAKAO号」「京王ライナー」の拡充を発表したのち、1月27日には「2022年3月12日(土)始発から 京王線ダイヤ改正を実施します」(外部PDF)として日程などより詳細な発表がされています。2月14日には各駅の時刻表が発表されたことで全貌が明らかになりました。
目玉となる「特急」と「準特急」の統合
京王電鉄的な注力ポイントは有料列車拡充ですが、概要発表時点から利用者から最も注目されている内容は京王電鉄の独自種別「準特急」を廃止し、「特急」の停車駅に「準特急」と同様に笹塚,千歳烏山,京王片倉,山田,狭間の5駅を追加する点です。
名称が「特急」・停車駅が「準特急」となる格好ですが、これまで新宿〜調布間を明大前駅1駅のみの停車で結んでいた列車が消滅することで大きな話題となりました。
速達種別の停車駅増加は、本数を減らしても利便性を維持する効果があり、一般論としては妥当な変更内容ではあります。ただ、京王片倉,山田,狭間の3駅については日中では本数が倍増しているほか、笹塚,千歳烏山も停車本数が増加となるなど、単純に該当駅の利便性が向上しており、ダイヤ自体の骨格は変更がありません。接続列車の改善で布田,国領も恩恵が大きそうです。
一方で、旧来の特急停車駅ユーザーは2015年以降の「準特急」が主力の現行ダイヤでさえ当初は不満が大きかったこともあり、現行最速達列車がなくなることへの批判の声も大きい印象です。特にこれまで「準特急」は千歳烏山駅に停車することで接続列車からの乗り換えが発生することとなっていた列車が多く、速達性は落ち混雑は悪化しそうとデメリットが目立ちます。
趣味目線では、近年はダイヤ乱れ時に限り京王線新宿駅への都営車入線が解禁されており、この中で10-000形や10-300形が同駅始終着の特急や準特急などに充当される機会もごく稀に発生していました。
他社線では小田急新宿駅に乗り入れるJR車・メトロ車、相鉄横浜駅に乗り入れるJR車、西武池袋駅の乗り入れるメトロ車・東急車など、ダイヤ乱れでファンに注目される運転体系ですが、解禁されたのが比較的近年かつ定期運用がない異種別に充当される珍しさから特に話題になる印象がありましたが、こちらも今後は「特急」が最注目株となりそうです。
高尾線の無料最速種別は「急行」に
京王線では2013年改正の経緯により、高尾線内は「特急」「急行」は途中の京王片倉,山田,狭間の3駅を通過・「準特急」は高尾線内は各駅停車となる上下逆転の構成となっていました。
先述の通り高尾線内についても「準特急」由来の各駅停車とされた一方で、従来から少ない本数ながら運転されていた高尾山口駅発着の「急行」の処遇については言及されていませんでしたが、最近新たに発表された時刻表上も高尾山口駅発着の「急行」は残存しており、上下逆転体制が維持されています。
そのため「Mt.TAKAO号」以外では高尾線内の最速達種別は「急行」で高尾線内での上下逆転の関係も残るほか、新宿〜高尾山口駅間では「特急」と「急行」の停車駅数が同一となっています。
大幅減少の新宿線「急行」衝撃の48分サイクル
従来は日中時間帯に毎時3本・「準特急」と接続する構成で運転されていた都営新宿線・京王新線の「急行」は、今回のダイヤ改正で午前中の西行・午後の東行のみと極めて限定的な運転となります。
本数の減少もさることながら、運転パターンが48分サイクルという不思議な設定となっている点が興味深いポイントです。
関東圏では40分サイクルで運転される成田スカイアクセス線「アクセス特急」などが中途半端なサイクルとしてファンから知られていましたが、直通先のパターンとも無縁な48分サイクルはややこしい印象です。これの影響で京王線内もパターンダイヤが一部崩れていますし、そもそも乗り換えパターンにない列車の設定経緯・価値は疑問です。
減便自体は時勢柄あり得る話とはいえ、どうして……と言わざるをえないダイヤ構成です。もはや利用を少なくすることで次回廃止するための口実を作るためとさえ思えてしまいます。
都営車の高尾線運用は増減しつつ残る
現行ダイヤでは土休日朝時間帯に本八幡始発の急行高尾山口駅行きが運転されていましたが、ダイヤ改正後の設定は見られません。
京王電鉄のダイヤは歴史的に土休日の観光需要を促す直通列車を設定する傾向が見られますが、このうちの1系統が姿を消すこととなりました。
一方で、桜上水駅始発の高尾山口行きとして都営車の同線乗り入れ運用が残るほか、列車としても高尾山口始発本八幡駅行き自体は辛うじて残るなど、中途半端な状態ながら完全な廃止とはなっていません。
この辺りは既に都営線からの多摩動物公園行きが廃止されているのと同様の経緯が想像されますが、「Mt.TAKAO号」の都営線直通列車運行などの異なる形で復活することに期待したいところです。
八幡山始終着列車が消滅
京王電鉄では、2022年度末に向けて笹塚〜仙川駅間の連続立体高架化事業を進行中です。
長年に渡り用地買収に苦戦しており、やっと昨年になって柱が立ち始めるなど目立つ進展が見られませんが、今回ダイヤ改正では留置線の撤去に向けて八幡山駅始終着列車の運転が終了となっています。
次回が“真打ち”?
2022年のダイヤ改正は各社が大鉈を振ったなかでも、特に京王電鉄の変更は思い切った内容となっています。特に既存の特急停車駅利用者からは忌まわしき“特急不在時代”の記憶も新しく、批判の声はかなり大きい印象です。ただし、現行のダイヤの骨格が大きく変更されているわけでもなく、影響は意外と軽微に抑えられている印象です。
京王線沿線は満遍なく沿線人口が多いほか、競合関係であるはずのJR東日本 中央線とともに複々線化による輸送力・施設増強が出来なかった歴史的経緯もあり、ダイヤ・種別の作成は苦労が垣間見られます。
賛否両論が飛び交う今回改正ですが、大本命は連続立体高架化工事が完遂・ボトルネックとなっていた明大前駅の2面4線化が行われる2022年度末で、今回はこれに向けた試金石……と捉えることも出来そうです。ただし、まだまだ工事途上となっており、そもそも本事業が計画通り完遂するのかは正式には発表されていません。
今回は名称や停車駅数などの変化がなかった「急行」「区間急行」「快速」などの中間種別についても明大前駅での緩急接続が可能となることで大きな変化が予想されます。
また、今回のダイヤ改正で増加した京王多摩センター〜橋本間のみ種別変更する列車は別種別名称とされても不思議ではなく、こういった用途のために「準特急」が復活するのか、終日特急停車駅に加わるのか、引き続き途中駅の種別変更を維持するのか……次回が“真打ちダイヤ”となることが想像され、こちらも気になるところです。
改正前の記録はもちろん、改正後のダイヤも過渡期ならではの面白さがあるものとなりそうで、じっくり観察したいところです。
コメント
>これまで新宿〜調布間をノンストップで結んでいた列車が消滅することで大きな話題となりました。
明大前「」
だもんね。
今後とも京王7000系廃車しないでくれ‼️