【阪神の珍車】阪神淡路大震災から25年・被災した8523F“直通特急”運用も

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2020年2月から、阪神電車8523Fが大阪梅田と山陽姫路を結ぶ「直通特急」の運用が始まっています。同編成は阪神の急行系車両の中で山陽電鉄・須磨浦公園駅以西への運用はなかったので、関西在住の鉄道ファンから注目されています。

阪神淡路大震災とその後の復旧を乗り越え、震災から25年が経過した2020年に活躍の場を増やした珍車・8523Fの魅力をお伝えします。

阪神8523Fとは

8523Fは8000系に属する阪神の急行系車両です。8000系は形状などから数タイプに分かれますが、8523Fのうち8502+8002+8102は最初期タイプに該当します。当初は8201F6両(8201+8001+8101+8102+8002+8202)として製造されましたが、1995年の阪神・淡路大震災により3両が廃車となり、編成の組み換えを経て今日に至っています。

8000系8201Fは1984年にデビューし、車体は3901形・3801形のスタイルを踏襲しています。製造時、急行系車両の一部が武庫川線(武庫川~武庫川団地前)に転属。本線運用車両を補うために製造されました。

車体は3901形・3801形と同じく、側面窓は2段窓となっています。前面は分割・併合をしないため、桟板や幌枠収めは設けられていません。3901形・3801形や5001形では側面行先表示機の周辺に出っ張りがありますが、8201Fにはありません。そのため、従来の阪神車と似ていますが、少しだけスマートな印象を持たれると思います。また、製造当初、スカートは設置されませんでしたが、1994年に取り付けられています。

運転台は濃い茶色になり、表示等類の一部の配置や形状が変わりました。また、乗務員が車両故障などの初期対応に役立つ車両状況表示モニタも設置されました(現在は撤去済)。客室内は当時の標準である若草色の化粧板を採用しています。

8000系は1985年製造分から大きくモデルチェンジし、従来の阪神電車のイメージを一新。前面窓は大型化され、側面窓は一枚下降窓となりました。車内の化粧板もアイボリー系を採用し、阪神電車のイメージアップに大きく貢献しました。

最終的に最初期タイプは8201Fしか製造されなかったので、阪神ファンからは「珍車」として見られていました。以後、8201Fはモデルチェンジした8000系と共に急行系車両として活躍していました。製造当初から、山陽・須磨浦公園行きの「特急」の運用にも就いています。

阪神・淡路大震災の悲劇を経て

1995年1月17日、8201Fに突然の悲劇、阪神・淡路大震災が訪れます。当時、8201Fは神戸市東灘区にある石屋川車庫に留置されていました。東灘区は震度7を記録し、石屋川車庫は大きなダメージを被りました。筆者も東灘区で震度7を体験しましたが、ものすごい揺れを今でも覚えています。また、被災した石屋川車庫の様子を映したニュース映像も見ていました。

8201Fは震災による損傷の結果、中間車2両(8001、8101)と先頭車1両(8202)が廃車となりました。8201Fは6両編成のうち3両を失い、復活は難しいように思われました。

が、ここでまさかの復活劇が始まります。同じく石屋川車庫で被災し6両編成のうち4両を失った8223Fを活用し、先頭車8523号を新造しました。8201Fでは大阪梅田寄り先頭車であった8201号は元町寄りに方転し8502号車として復活。こうして、今日の8523F(8523+8023+8123+8102+8002+8502)が誕生しました。編成組替、方転では車体は変化しなかったものの、床下は向きを合わせるために大改造が行われました。

2007年、8523Fはリニューアル工事を受け、内外装ともに大きく変化しました。塗装はクリーム色+赤色の塗装からオレンジ色+ホワイト色になりました。1984年以前の旧阪神スタイルと新塗装の組み合わせは8523Fだけです。

内装では8123号と8102号が転換クロスシートとなりました。このうち8102号は阪神唯一となる2段窓+転換クロスシートという組み合わせになり、阪神ファンを驚かせました。

阪神なんば線開業前には先頭の連結器が阪神独自のバンドン式から廻り子式になり、車体下部に切れ欠きができました。

8523Fは2019年まで主に「特急」や「急行」で活躍しましたが、大阪梅田~山陽姫路を結ぶ「直通特急」の運用には入りませんでした。

2020年2月1日から「直通特急」の運用に入る

2020年2月1日から8523Fは「直通特急」の運用に入りました。8523Fの須磨浦公園以西への乗り入れは今回が初めてです。報道によると山陽側の一部信号機が移設されたことにより、実現された模様です。これにより、阪神のすべての急行系車両は「直通特急」の運用に就けるようになりました。

8000系は1000系などの後継車の登場後も阪神の主力としてがんばっています。デビューから25年以上が過ぎましたが、廃車の話は出ていません。今後も本線の「直通特急」や「急行」で活躍することでしょう。

阪神電車では既に赤胴車・青胴車といった在来形式の置き換えが発表されており、昔ながらの阪神電車の顔立ちを今後も見られる貴重な編成となります。

8523Fの「直通特急」の運用は限定運用ではありません。大阪梅田~山陽姫路間の距離は約90kmもあり、撮影にはそれなりの待ち時間を要することでしょう。それでも、しばらくは8523Fでの「直通特急」の活躍に鉄道ファンの熱い目線が注がれる予感がします。

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