2021年3月13日にJR各社はダイヤ改正を実施します。近畿エリアでもダイヤ改正は行われますが、新型・新列車など大きな話題があったここ数年のダイヤ改正に比べると地味な内容となっています。
今回は鉄道ファンの視点から近畿エリアにおけるダイヤ改正の重要ポイントを取り上げます。
紀伊田辺~新宮駅間に227系車両が登場
紀勢本線の紀伊田辺~新宮駅間を走るすべての普通列車が227系1000番台になります。227系1000番台は和歌山線、桜井線、紀勢本線を走る105系や117系を置き換えるために2019年3月にデビューしました。
広島地区を走る227系0番台をベースにしながら、車内には車内で交通系ICカードが利用できる「車載型IC改札機」を設置しています。
今回の227系1000番台の導入により、近畿エリアから105系が引退します。2021年3月以降、105系は岡山電車区、下関総合車両所運用研修センター所属分のみになり、福塩線や宇部線などで活躍を続けることになります。
なお「車載型IC改札機」搭載の227系1000番台の進出により、和歌山県内全線で「ICOCA」が利用できるようになり、利便性が高まります。
ファン層としては常磐線各駅停車〜地下鉄千代田線直通用に開発された103系1000番台ベースの105系4扉車のSW004編成・SW009編成の去就が最大のポイントとなりそうです。既に227系1000番台の投入で優先的に置き換えられたほか、227系0番台で山陽エリアでも淘汰が済んでいます。今回置き換えられる分については転用なども考えにくく、その他の3扉車を含めて直接代替となる可能性が高いでしょう。
快速運行エリアが縮小
播但線の寺前~和田山駅、山陰本線の園部~居組駅、舞鶴線の綾部~東舞鶴駅間を走る快速列車がすべて普通列車に変更されます。
そのため長谷駅(播但線)、安栖里駅、立木駅、山家駅、玄武洞駅、鎧駅、久谷駅、居組駅(山陰本線)、真倉駅(舞鶴線)では乗車チャンスが増えます。
上記区間を走る快速は都市間輸送の速達化よりは乗降客数の少ない駅を通過するという意味合いが強いものでした。普通に統一するものの、将来的には列車本数を減らす方向に進むというのが筆者の予想です。
「らくラクはりま」の新大阪延伸、大久保駅停車
近畿エリアにおけるダイヤ改正の中で、数少ない目玉のひとつが大阪~姫路間を走る通勤特急「らくラクはりま」の新大阪延伸と大久保駅の停車です。
「らくラクはりま」は2019年3月にデビューし、兵庫県西部の通勤・通学を支えています。特急型車両289系で運行されることから、JR西日本では社会情勢の反映を考慮して「らくラクはりま」に関する施策を次々と打ってきました。今回のダイヤ改正もその流れのひとつといえるでしょう。
上下列車ともに新大阪駅発着になることから、東海道新幹線への乗り継ぎがスムーズになります。
そして、特筆すべきは新快速が止まらない大久保駅に停車することです。3月13日以降の「らくラクはりま」の停車駅は加古川、大久保、西明石、明石、神戸、三ノ宮となります。
大久保駅停車により、大阪方面行きの普通列車から「らくラクはりま」への同一ホームでの乗換が可能に。また大久保駅自体の利用客増加も背景にあります。
「らくラクはりま」の停車駅である西明石駅、明石駅では線路別複々線から、普通列車から特急列車への同一ホームでの乗り換えはできません。「どうしてもらくラクはりまの利用客を増やしたい!」というJR西日本の執念が伝わってきます。
通勤時間帯を走る特急列車では「はるか」「びわこエクスプレス」の南草津駅、山科駅の停車、夜時間帯を走る「こうのとり」の西宮名塩駅停車が行われます。社会情勢の変化により、特急列車に対するイメージも変わってくることでしょう。
最終列車の繰り上げ
全国的に話題となっている最終列車の繰り上げですが、JR西日本でも京阪神エリアを中心に実施されます。
最終列車の時刻は10分~30分ほど繰り上げますが、東京方面からの最終新幹線の接続を最大限考慮した内容となっています。参考までにJR神戸線大阪駅発下り最終列車は24分繰り上がり大阪駅発0時04分に、JR京都線大阪駅発上り最終列車は21分繰り上がり大阪駅発0時10分になります。
JR西日本が実施する最終列車の繰り上げの背景は新型コロナウイルス対策というより、メンテナンス部門の働き方改革が挙げられています。深夜に働くメンテナンス部門の奮闘に感謝しながら最終列車を利用したいものです。
京阪神エリアでも減量ダイヤは続く
毎年恒例となった感のある減量ダイヤですが、このダイヤ改正でも行われます。京阪神エリアでは湖西線が概ね11時台~15時台に運行される京都~近江舞子駅間の一部普通列車が堅田駅止まりに、土休日の概ね10時台~16時台に運行される京都~堅田駅間の普通列車が取りやめとなります。
嵯峨野線ではおおむね10時台~16時台において京都~嵯峨嵐山駅間を運行する普通列車を取りやめます。これは外国からのインバウンド客の減少が背景にあると思われます。
大阪環状線やJRゆめ咲線では土休日の概ね10時台~12時台において京橋~桜島駅間の一部の直通列車の運転取りやめ、平日概ね7時~9時において西九条~桜島駅間の運転取りやめが実施されます。これは社会情勢によるUSJへの利用客減少が背景にあるのでしょう。
京阪神エリアだけを見ると、減量ダイヤは4線区にとどまったことから「何とか踏みとどまった」というのが正直な感想です。おそらく本線級の路線については2022年春まで「様子見」というところでしょうか。
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