10月30日、JR西日本は昨今の劇的な社会情勢の変化から「JR西日本グループ中期経営計画2022」の見直しを発表しました。ここでは発表された「見直し」を基にこれからのJR西日本を占ってみたいと思います。
新幹線の増備と特急「やくも」の新車デビュー
「JR西日本グループ中期経営計画2022」見直しでは新幹線車両の増備と岡山と山陰を結ぶ特急「やくも」の車両置き換えが具体的に明記されています。
新幹線では山陽新幹線の利便性向上のためにN700Sが4編成増備されます。また北陸新幹線ではW7系が11編成増備され、2023年春の北陸新幹線敦賀開業に備えます。ただし、報道によると加賀トンネルでのひび割れや敦賀駅の着工遅れにより、敦賀開業が2023年春に間に合わないかもしれません。もし間に合わないとなると、新幹線の増備計画にも狂いが生じるのではないでしょうか。
在来線特急では岡山と山陰を結ぶ特急「やくも」の車両置き換えが注目に値します。「やくも」は国鉄時代に生まれた振り子型電車381系が使われており、2021年3月ダイヤ改正以降は在来線定期特急列車において国鉄型電車を用いる唯一の列車となります。
「やくも」の新車をめぐっては数年前にJR四国で採用している空気ばね傾斜方式を導入するのでは……という情報がありましたが、このレポートでは具体的に明記されていません。既存の特急電車を製造するのか、「やくも」専用の新車を製造するのか、注目したいと思います。
2025年大阪万博の会場へは桜島駅、弁天町駅で乗り換えか
次に近畿エリアを見ていきます。近畿エリアで筆者が注目したのは新大阪駅、弁天町駅、桜島駅が「乗換利便性向上」に指定されていることです。弁天町駅・桜島駅~夢洲(万博会場)間は点線で表記されており、JR線が乗り入れないことが示唆されています。つまり桜島駅、弁天町駅は万博会場へ向かう別の交通手段との乗り換えをスムーズにするために、何かしらの改良工事が施されるのでしょう。
また新大阪駅~桜島駅間には直通列車が運行される予定です。JRゆめ咲線(桜島線)は万博、ユニバーサルスタジオジャパンへのアクセス線として機能するわけですが、両施設の存在と直通列車の設定により施設面でパンクしないのでしょうか。今後のJRゆめ咲線の動向に注目したいと思います。
地方の鉄路は苦戦が続く模様
一方、地方路線は苦戦が続くような気配が感じられます。資料では「地域共生の深耕―西日本各エリアの魅力創出」と銘打ち、「エトセトラ」や「ラ・マル・ド・ボァ」をはじめとする観光列車を紹介しています。つまり観光列車や沿線の魅力を活かした商材開発、デジタル化をてこに地方路線を活性化しようという試みなのでしょう。
一方、社会情勢の変化による行動変容により、利用減少が続くことも予想しています。そのため固定費の低減が明記されており、利用に応じた列車ダイヤの適正化が盛り込まれています。今後、列車本数と利用実態との関係がシビアに評価され、本数が大幅に減少する路線が出てくるのではないでしょうか。
さらに「持続可能な鉄道・交通システムの構築」では地域に見合った持続可能な交通体系の模索が明記されています。今後、JR東日本のように地方ローカル線がBRTに転換される可能性も十分に考えられます。社会情勢の変化により、JR西日本のみならず鉄道の在り方も変化するのでしょう。
2021年3月のダイヤ改正に注目
一方、12月にはじまる新快速「Aシート」の一部指定席化や近畿エリアにおける終電繰り上げに対する具体的な言及はありませんでした。今後は2021年3月のダイヤ改正に注目したいところです。おそらくダイヤ改正の発表を通じて、今後の鉄道輸送体系の在り方がわかるのではないでしょうか。
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