JR西日本の電車では、近年、先頭車の『顔』に耳のような形で転落防止幌の設置が進んでいます。
近年製造が進む225系はもちろん、流線型デザインの221系・223系についても検査入場のタイミングなどで設置されています。
ほかの鉄道会社では見られない独自の施策ですが、なぜJR西日本ではここまで転落防止幌の設置を強化しているのでしょうか?
痛ましい事故を重く受け止め、社内で一斉に対策を開始
2010年12月17日、姫路駅始発米原駅行きの快速電車から舞子駅にて下車した女性が先頭車同士の車両連結部付近でホームから線路に転落しました。
転落を目撃した周辺の旅客が非常停止ボタンを扱って一件落着……とならず、車掌はその転落に気づかず発車してしまい、ハンカチを振って知らせる乗客に気づいて非常停車しました。
その間におよそ50m、2両半ほど走行してしまったため、轢かれた女性は死亡、救助を試みた友人女性が負傷してしまいました。
原因としては非常停止ボタンを押しても報知灯が光るのみでブザー音鳴動・保安装置への連動などは一切なかったこと、そしてその報知灯が視認しにくい箇所にあったことが挙げられます。
そして、何より不幸だったことは、女性が転落した場所が通常の連結部ではなく、先頭車同士がつなぎ合わさった連結部であったために転落防止幌が設置されていなかったことです。
自社の安全対策の不備を重く受け止めたJR西日本では、タイトルのように先頭車への転落防止幌を設置する方針となりましたが、JR西日本だけでなく、全国を探しても先頭車への転落防止幌の実績がほとんどなかったため、先頭に立つ際の風圧などの耐久性を調べる必要がありました。
当面の対策として連結面の運転台の室内灯を終日点灯としたのち、効果が薄いと判断されて前照灯の終日点灯に改められています。
試行錯誤の末に完成した流線型先頭車への設置
試作された先頭車用の転落防止幌は、原則中間に閉じ込められている207系の運転台にて半年間の試験を実施。
その後、形状の微調整を重ねつつ、風が通り抜ける隙間を作った現在の形状が完成しました。 完成後は連結運転で中間に入る可能性がある223系や221系などに順次波及していきました。
一方で、奈良線の6,8両編成や、JR四国所有の5000系と連結運転をする223系5000番台など、一部では施工を見送っています。
その後に製造されている225系、新規開発された227系など、本採用開始以降に製造されている近郊型電車ではすべて設置されています。
特急型などの設置が困難な形式についても、前照灯終日点灯に加えて、転落防止の自動放送が流れる装置の新設が進んでいます。
ここまで多大な費用をかけてまでこの事故の対策に敏感となっているのは、福知山線脱線事故以降のJR西日本の安全対策に厳しい目が向けられ続けているという点は大きくあるかと推測できますね。
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