2016年12月15日に開業した、トレインホステル北斗星。
昨年末で3年目に突入しました。
拘りの内装を鉄道ファン目線で観察するとともに、実際に宿泊をしてみて感じた課題点などをレビューしていきます。
トレインホステル北斗星設立の経緯
寝台列車でワクワクした旅をしたワクワク感や懐かしさを思い出す場として設立されました。
たまたま乗り合わせた人と仲良くなり、一緒の時間を過ごす……寝台特急は現代でいうホステルの役目を担っていたのかもしれません。
惜しくも廃止された上野~札幌間の寝台特急『北斗星』の廃車発生品を贅沢に利用して、寝台特急北斗星の内装になるべく近づけたホステルが2016年12月、馬喰町駅の真上に開業しました。
ここは成田エクスプレス東京駅乗換えですぐの馬喰町駅や、羽田空港・成田空港に直通列車が多数運転されている都営浅草線の浅草橋駅に近接しているほか、大人気の観光地となった秋葉原の隣町という抜群の立地から、訪日観光客をターゲットにしたホステル等の格安宿泊施設が多く立ち並ぶ街です。
格安ホステルが多いなかで、北斗星の廃品や再現というこだわりで差別化をしている点が大きな特徴で、訪日観光客をメインに、鉄道ファンの利用も見越してターゲットを複数設定しています。
開業当初はその話題性から満室が続いていましたが、現在では比較的直前でも空き部屋が出ている場合があります。
このほか、2階は食堂車・グランシャリオのテーブル・テーブルランプなどをそのまま活用しています。
食器類や冷蔵庫、調理器具も使用できる(終わったら自分で洗う)ようになっていますが、こちらはさすがに似せたものとなっています(食器類は日本レストランエンタプライズの持ち物だったので、閉鎖された神田鉄道倶楽部や、日本食堂といったNRE系列店舗で再活用されています)。
トイレのドアも24系個室のドアを再設置していたり、館内の表記についても国鉄フォントの徹底など、ビルの元の構造の制約のなかでできる限り北斗星に似せています。
気になる寝室の内装は?
このトレインホステル北斗星の最大の特徴は、24系客車・開放B寝台を中心とした北斗星で実際に使用されていた寝台設備をそのまま活用している点でしょう。
上段に登るはしごも寝台客車の廃材です。
基本的にはB寝台の流用ですが、一部には個室の廃品も活用されている当たり部屋もあります。
趣味的には大変面白い点ですが、あくまでB寝台のベットそのままですのでベット幅や寝心地はあの感じそのままです。
体格がしっかりしている欧米系の利用者にそれは大丈夫なのかは少し疑問です……。
今後の課題は?
3年目ということで、営業は順調に思えますが、課題点も多く感じました。
価格帯の問題
周辺には1500円程度で泊まれるホステルも増えてきたなかで、こちらは2,500円。
安く予約できるサイトを経由しても2,300円程度です。
1,000円の差は設備の内装工事費のペイなどの事情もありそうですが、いまやホステルの中でも安価な場所のやり方であるシーツの回収もセルフという点など、北斗星に興味はあるけどホステルに抵抗がある層にはなかなか敷居が高いのかな、という印象です。
日本人利用者の取り込みがあまりできていない?
幸いにしてメインターゲットとしていた海外からの訪日観光客・バックパッカーの長期滞在利用は確保できているものの、これだけでは高い内装工事費用がペイできているのかは心配です。
事業企画はJR東日本の子会社、運営はホステル運営に長けている会社というやり方ですので、国内鉄道ファンの取り込みという経験がない運営会社にJR東日本側からアドバイス等をする体制がそこまでないのかなあと感じました。
ホステルは安価な分、高い稼働率が求められますが、利用者は見る限りは長期滞在でかなり散らかしている外国の方ばかりという印象です。
空き部屋を国内需要で埋めきれるようにすれば長期的な経営もうまくいきそうに感じました。
もっとも、ボランティアも多いホステル業界のなかで、アルバイトスタッフを多く雇えるくらいには安定しているようですので、運営元はそこまで心配していないのかもしれませんが。
気がかりな点もありつつ、貴重な廃品がフル活用されていますので、まだ訪れたことのない鉄道ファンの方はぜひ足を運んでみることをおすすめします。
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