【第六世代】東海道新幹線・山陽新幹線新型「N700S系」乗車レポート

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2020年7月1日に当初計画通りデビューを果たした東海道新幹線第六世代・N700S系。

営業運転初日はのぞみ1号・3号などからスタートしたほか、それ以降は新大阪駅発着ののぞみ号を中心に運用されています。少しずつ営業運転の本数も増えてきて、この夏はたまたま乗り合わせる機会も増えてきそうです。

改めてN700S系の特徴をおさらいするとともに、700系・N700系を頻繁に利用していた筆者の率直な感想を交えて魅力を掘り下げます。

“第六世代”N700S系の投入と世代交代

東海道新幹線では、0系・100系・300系・700系に続き、N700系を2007年より使用していました。N700系は増備車として細部の改良を施したN700A系(A=advance)が投入・既存車に対しても同等にする改造が施されています。

2020年3月にはJR東海・JR西日本によるN700系列増備が完了し、在来形式の700系の淘汰が完了・N700系列の高加減速・曲線高速通過性能を最大限に発揮できる、のぞみ毎時12本ダイヤがスタートしています。

次世代の車両として、初期に製造されたN700系の置き換えとともに、リニア中央新幹線開業後の輸送力適正化を見込んだ編成短縮対応設計とされたN700S系(S=supreme)の開発が行われており、2018年2月には「確認試験車」という呼称でJ0編成が登場。様々な試験結果をフィードバックし、2020年2月より順次量産車が日本車輌製造にて落成しています。

外観はN700A系にそっくり?

N700S系の外観ですが、ライト形状が若干変更されたこと・より鋭利なデザインとなったことを除くと、先代のN700系列に非常によく似たものとなっています。

N700系登場以来13年ぶりのフルモデルチェンジとなっているものの、走行機器類の構成と内装の変更が目立つ違いとなっています。

一見すると新型車両と気づかないくらいの変化で、利用者がホームに止まっている車両が新型か否かを見分けるポイントは、2両に1か所の金色のN700S系のロゴマーク程度となっています。

カラーリングも0系以来、東海道新幹線では一貫して白地に青帯というデザインで一貫しており、形式ごとに変えられてきた窓下の太帯・細帯の配置も700系・N700系同様です。

車内案内表示大型化・光る荷物棚

利用者が一目で気付くことができる点としては、大型液晶化された車内案内表示器でしょうか。

N700系でフルカラーLED・大型化された箇所ですが、見やすさは段違いでしょう。

また、停車前に照明の明るさ・色合いが変化することがこの車両独自の特徴です。

のぞみ号のような停車駅が少ない列車では、降り遅れ防止として有効な設備でしょうか。こだま号運用にはまだ出会えていないので、機会があれば試してみたいところです。

筆者個人としてはパソコン作業をしている最中に明るさが変わるのはちょっと……という印象です。思っていた以上に明るくなるので、一般利用者からの賛否は分かれそうです。

やはり乗ってみて最も驚かされた点は、車内の静音性の高さでしょうか。

世代が進むごとに静かな環境となっていますが、このN700S系の静かさは大きな強みと言えるでしょう。

先代のN700系では加速性能が大幅に向上し、静かになりながらも力強いモーター音が聞こえてきましたが、N700S系はかすかに聞こえる程度。国内新幹線車両としては(体感ベースですが)もっとも静かな車両です。

あまりにも静かだからか、肉声放送時にマイクが拾った環境音がよく響くくらいです。

この違いは従来車両に何度か乗車歴があればその進化に驚かされることと思います。

どちらの車両が来るかは今のところ公式Twitterによる前日の発表ですが、機会があればぜひ選んで欲しい車両です。

JR東海的“推し”ポイントは床下機器

改めてJR東海のプレスリリースを眺めると、床下機器の改良がこの車両の最大の特徴であることが挙げられます。

主制御装置(VVVFインバータ)には、在来線車両で近年トレンドとなっているSiC素子(炭化ケイ素)を新幹線車両として初めて使用し、小型化・軽量化を実現しています。このような機器の小型化により、1両に多くの機器を搭載可能に。従来複雑化していた編成構成の簡略化が実現しています。

このほか、在来線車両の一部で採用が始まった異常時の蓄電池走行を可能としており、低速ながら立ち往生を防ぐ大きな進化を続けています。

路線の歴史の長さから、他路線に比べて勾配・カーブ・走行環境などの制約が多い東海道新幹線。

今回のN700S系は“標準車両”として開発されており、今後の他路線展開(九州新幹線長崎ルートなど?)にも期待が寄せられます。

地味でも着実な変化がJR東海流?

東京駅で対面するJR東日本の新幹線では、グランクラスを導入したり、方面ごとにカラフルなカラーリングを施したりと、積極的な変化を続けています。JR東日本とJR東海はともにトップクラスの鉄道企業ですが、同じ国鉄を分社民営化した企業とは思えないほど真逆の手段で改良が進んでいます。

N700S系はJR東海の新幹線開発の完成形と言っても過言ではない仕上がりです。

ビジネスライクと揶揄されることも多いJR東海の車両たちですが、安全・着実な姿勢は創立当初から一貫しています。機関車牽引列車を真っ先に廃止したり、ジョイフルトレインもどんどん運行終了。豪華クルーズトレインを各社が走らせていても見向きもしていません。

しかしながら、各社が削減傾向の保線品質の高さ・車内販売の維持・肉声英語放送の導入など、他社では見ることができないレベルの高さも特徴的です。

利用者・客層によって好みが分かれるところですが、需要に応えるための地道な改良に熱心なところはJR東海ならではでしょうか。

新型コロナウイルスでの大幅減便という苦難を乗り越え、夏からはいよいよのぞみ12本ダイヤの圧倒的な輸送力の本領が発揮されることとなります。

リニア中央新幹線が微妙な動きをみせるなか、これからも東京・名古屋・大阪を結ぶ日本の大動脈としての圧倒的な信頼感は揺るぐことはなさそうです。

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