【ダイヤ改正2024】静岡エリア17年ぶり白紙改正か〜乗り通しが便利に!?

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JR各社は2023年12月15日に翌2024年3月16日ダイヤ改正を一般に公表していますが、同時に労働組合宛により具体的な内容を示します。

JR東海では315系投入により在来車両の置き換えを進めていますが、2024年3月改正では静岡エリアで315系に向けた大規模な改正となりそうです。

静岡エリアには2024年度から315系が“順次投入”

置き換えが公表されている静岡エリアの211系

JR東海も2023年12月15日に「2024年3月ダイヤ改正について」(外部PDF)として翌2024年3月16日ダイヤ改正の主な内容についてリリースを出していますが、静岡エリアについては身延線の平日朝通勤時間帯に1本増発・日中に3往復削減が触れられている程度で、変化は小規模なものと捉えられる内容でした。

一方で、同日にJR東海労静岡地方本部が発行した労組資料では、数多くの変更点が挙げられています。特徴的な変更点として記載されているものは下記の通りです。丸数字は当サイトが便宜的に付与しています。

① 朝の通勤時間帯の輸送力の見直し

② 日中のパターンダイヤの見直し(熱海〜浜松・興津〜島田)

③ JR東日本直通列車の編成の見直し(17時〜20時の3往復を5両編成に)

④ 身延線ワンマン運転の拡大

⑤ 昼間の時間帯の列車本数の見直し

⑥ 新幹線の停車、通過の見直し

⑦ 令和6年度中に315系の順次投入とそれに伴う211系の廃車

⑧ 沼津・静岡・浜松駅における分割、併合の削減

⑨ 身延線日中時間帯列車の削減(富士〜西富士宮△6)

これらのうち④は過去の労組資料で既出(2両編成の身延線全列車がワンマン運転に)、⑥・⑨は公表内容と合致しますが、それ以外については一般向けにアナウンスされていません。

静岡支社管内の在来線普通列車については車両運用・ダイヤとも大規模な変更がうかがえる内容です。

記憶に新しいダイヤ改正としては、2022年3月改正の中央西線での8両編成統一がありました。

この際、ダイヤ・車両運用を全て8両固定編成前提のものに白紙改正を実施し、そののちに順次315系を投入して211系を代替していく動きでした。

今回の静岡支社管内でも、全貌は明らかになっていないものの315系投入を見据えた大規模なダイヤ改正となっているものと捉えられます。

“乗り通し”が便利になる?パターン変更

特に利用者への影響が大きそうなものとして、日中の運転パターン変更が挙げられます。

現在の静岡エリアの日中パターンは2007年3月改正の長距離列車削減・区間列車増加のパターンを継承しており、熱海駅〜島田駅間・興津駅〜浜松駅間の列車がそれぞれ約20分サイクルで走ることで静岡駅周辺を10分ヘッドとするダイヤとなっています。

島田駅以西〜興津駅以東の相互間で乗り通す場合は10分程度の待ち時間が発生する構成となっており、トイレがない211系使用列車に当たった場合はトイレ休憩ポイント、それ以外の場合は下り興津駅・上り島田駅で座席確保のための下車をするか、駅構内が充実している静岡駅で乗り換えるか……など“青春18きっぷ”ユーザーにとっては悩みの種の1つともなっていました。

公表された労組資料によると、「日中のパターンダイヤの見直し(熱海〜浜松・興津〜島田)」と記載されており、現行のパターン構成から推定するに熱海駅〜浜松駅の直通列車が基本となり、間に興津駅〜島田駅間の区間列車が挿入される構成に改められる内容とみられます

日中時間帯の静岡エリア“乗り通し”については利便性向上が期待できそうです。

先述の通り、現行ダイヤは2007年3月改正をベースとしたものが長らく使用されていますが、それ以前の基本パターンといえば国鉄最後のダイヤ改正としても知られる1986年11月改正を基としたダイヤでした。

広島エリアでの短編成・高頻度運転の成功を受けて各地で実施された地域輸送の改善策として、静岡エリアにおいても静岡周辺で10分ヘッドのダイヤが採用されました。

1984年に15分ヘッドを採用した際に導入され、同改正で10分ヘッドとする際に強化された興津駅〜島田駅間の区間列車には「するがシャトル」の愛称が付与されており、運転開始直後は飯田線用119系を転用した専用塗色車両が、後継として新造された211系5000番台が投入されました。

119系・211系ともに「するがシャトル」の頭文字から「SS編成」として編成番号が付与されており、211系SS編成の置き換えが始まろうとしている今、事実上の「するがシャトル」復活となる熱い展開です。

またJR東海では315系・HC85系導入と同時に増解結作業の削減による車両運用効率化を目指していることが読み取れる変化が続いており、今回改正でも「沼津・静岡・浜松駅における分割、併合の削減」「昼間の時間帯の列車本数の見直し」といった記載が見られます。

他社でも実施されているようなコロナ禍・合理化で頻発しているネガティブな減車減便が想像しやすい一方で、労組により示されたデータを見ると全く異なる変更が加わっていることが見えてきます。

この内容を推測するためには、「列車キロ」が60km/日・「列車本数」が20本/日削減されているのに対して「車両キロ」が2,390km/日と大幅な増加をしている点を読み解く必要があります。

「列車キロ」

全列車の走行距離の合計

「車両キロ」

列車キロに各列車の編成両数を乗じたもの

労組公開資料;改正の諸元比較から抜粋

・普通列車本数

令和5年3月令和6年3月増減
645本/日625本/日△20本/日
回送は除く

・一般車 列車キロ

令和5年3月令和6年3月増減
33,460km/日33,400km/日△60km/日
回送は除く

・一般車 車両キロ

令和5年3月令和6年3月増減
146,140km/日148,530km/日2,390km/日
回送は除く

まず列車キロの60km/日削減ですが、これはリリースでも公表されている身延線富士駅〜西富士宮駅間11.9kmの区間で朝1本増・日中の3往復減少=5列車削減となっており、回送を含めない列車キロ59.5kmを四捨五入した数値と合致します。そのため、リリース公表以外の東海道本線や御殿場線においては現行と同等の列車設定となっていることが読み取れます。

次に列車本数を見てみると、列車キロの変動がないまま15本もの本数が削減されています。このことから15本の減少となっている「列車本数の見直し」は一般利用者にとっての減便ではなく、従来のダイヤで生じていた、沼津駅・静岡駅等で車両運用上の都合で別列車・乗り換えとなる箇所の改善による統計上の変動と考えることが出来ます。

静岡エリアでは先述のように熱海駅〜島田駅間・興津駅〜浜松駅間の運行を基本としつつも、分割・併合作業を実施する列車のほか沼津駅や静岡駅で別列車扱いとして乗り換えが必要とされている箇所が多く存在します。

トイレの有無や車両数、ワンマン設備等で運用が細かく分離されている211系・313系を最適な運用とするために実施されている箇所が多く存在しており、これらが乗り換え不要な同一の列車に改められることで統計上の「列車本数」が減少していることが読み取れる内容です。

最後に車両キロを見てみると、2,390km/日の増加となっています。身延線の削減列車が2両編成とみなしても59.5km×2両=119km、身延線はワンマン運転拡大も同時に実施されることから、午後の削減列車はワンマン運転対象となっていない3両編成運用を削減することで車両キロはそれ以上の減少となりそうです。

そして、東海道本線では朝ラッシュ運用の見直しも触れられています。列車本数維持であれば特異な7,8両編成の列車の6両化を実施することが想像しやすく、それ以外の見直しであったとしても朝ラッシュ時間帯の車両キロは減少する方向に変動します。

この減少分をも上回る車両キロの増加がどういった形になるかは全く想像がつかないところですが、分割・併合作業削減とあわせると日中時間帯に4両編成以上の連結したまま運用される列車が増加することとなりそうです。

315系投入準備として313系2両+211系2両の4両運用がいくつか設定されてしばらく半固定で運用する、熱海〜浜松駅間の通し列車は4両編成以上での運用を基本とする……など想像が膨らみますが、それ以上は現時点どころか時刻が公表されても編成両数や車両運用などの全貌は見えてきません。

ダイヤ改正以降の車両運用体系が徐々に明らかになっていく過程で315系の静岡エリアでの活用方針も徐々に予想しやすくなってきそうです。

JR東海が“青春18きっぷ”ユーザーのためのテコ入れをしているとは考えにくいものの、211系淘汰・315系投入完了後に検討されているスピードアップに加え、増解結削減による日中時間帯の連結両数増加など沿線外利用者にとって“魔の静岡区間”の長距離乗車の利便性はどんどん向上していきそうです。

輸送力が劣る313系8000番台や新たに転入してきた1300番台などのクロスシート車両はトイレは無いが輸送力のある211系の“相方”として適任とも言えますので、結果的に熱海駅〜浜松駅間にクロスシート車両が優先的に充てられても不思議ではありません。

また地元利用者にとっても、“青春18きっぷ”発売期間は区間便を利用すれば現状のような乗り通し混雑を回避することが出来るほか、現行日中に一部発生している3両クロスシート車運用も改善に向かうor接続がなくなることで混雑解消となることが予想されます。

基本的には増車傾向であることはデータから確実視できますので、沿線内外の利用者双方にとっても概ね期待が持てそうな内容です。

夕方〜夜間の沼津発着JR直通3往復が5両化

東海管内を走る10両編成

東海道本線では国鉄分割民営化以前からの名残で、朝夕時間帯にJR東日本所有車両による沼津駅始終着の東京方面直通運転が実施されています。

国鉄分割民営化から30年以上が経過して両社とも独自設計の後継車両を導入して久しいなか、ファンの間では一時期犬猿の仲とも言われていたJR東日本とJR東海の2社間で未だにこの直通運転が維持されている点は興味深いところです。

東海道本線の“熱海跨ぎ”による用地・車両といった資産で見るとJR東海が沼津に40両分の停泊箇所を提供している代わりに、JR東日本が20両程度車両を余計に保有している状態が今日まで続いており、側から見ると不思議な関係です。

JR東日本にとっては夜間停泊を自社用地外で確保出来るメリット、JR東海にとっても需要が多い朝夕の通勤・通学時間帯のラッシュピーク帯に長編成車両を使用出来るメリットと双方にとって合理的なダイヤ構成となっており、分社化でありがちな完全な系統分離に至っていない背景が推察されます。

また車両使用料の相殺といった側面も見受けられます。JR東日本とJR東海の会社間は特急「しなの」383系の長野駅発着や寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」といった優等列車のほか、飯田線・中央西線普通列車など短距離ながら本数がある程度ある会社跨ぎが各地で発生しています。

今回新たに明らかになった労組資料では「JR東日本直通列車の編成の見直し(17時〜20時の3往復を5両編成に)」といった記載が見られました。

5両編成自体はJR東海も211系や313系の併結で運行されていますが、直通打ち切り・自社保有車への代替であれば「JR東日本直通列車の見直し」となるはずです。

またこの場合は括弧書きで具体的な編成両数を記載するとも思えず、現行ダイヤでは設定されていないJR東日本所有の5両編成を使用したJR東海との直通列車が登場するものと見て間違いなさそうです。

これに加え、横浜支社への取材を基とした報道(乗りものニュース;外部リンク)では、直通運転は9往復から7往復へ・このうち1往復が5両編成で直通運転継続とされています。

報道と労組資料の情報を合わせると下記の通り夕夜間の3往復が5両編成化、このうち2往復は直通運転を終了することとなります。

青春18きっぷユーザー視点だと夜に沼津から東京方面へ乗り通せるグリーン車が消滅することとなります。

・現行の熱海駅以西グリーン車連結列車 下り

列車番号始発駅始発駅発東京発熱海発沼津着
321M東京5:207:097:26
323M東京5:407:448:04
1585E-325M小金井13:5715:3717:2217:41
1891E-327M高崎14:2816:2718:2118:39
1599E-329M小金井16:0917:4819:4119:59
1931E-331M籠原17:5619:1821:1121:32
1935E-333M高崎17:5920:0221:5922:21
1943E-335M籠原20:0121:2423:1723:35
1657E-337M古河21:0522:250:180:37
土休日はJR東管内発駅・時刻が異なります

・現行の熱海駅以西グリーン車連結列車 上り

列車番号沼津発熱海着東京着終着駅終着駅着
320M-1538E5:526:118:16小金井9:52
322M-1542E6:066:268:28宇都宮10:25
324M-1554E6:326:528:58上野9:05
326M-1562E7:007:199:26上野9:33
328M-1566E7:357:539:45小金井11:24
330M8:298:49小田原9:14
332M-1660E18:0818:3120:28宇都宮22:33
334M-1664E19:0319:2221:08小金井22:44
336M-1672E20:3820:5522:39宇都宮0:29
土休日はJR東管内着駅・時刻が異なります

国府津車両センター所属のE231系付属編成では、2012年3月改正まで実施されていた御殿場線国府津駅〜山北駅間で営業運転をしていた実績がありJR東海管内での定期営業列車充当はそれ以来となります。こちらも夜間停泊が絡んでおり、沼津駅始終着と似た経緯で近年まで残されていたものと推測されます。

またE233系3000番台の5両編成と小山車両センター所属の5両編成によるJR東海管内定期営業列車への充当は初の事例となりそうです。

JR東日本側の車両動向では、コロナ禍での減便で基本編成の運用数が削減されてきた一方で、付属編成の運用数は概ね維持される傾向となっていました。

今回のダイヤ改正でも15両編成運転の拡充等が示された一方で、増便・区間延長等は示されていません。

JR東海への直通運転は10両編成4本を沼津に停泊させている都合で長らく続いていましたが、逆に捉えれば朝の2往復・夕夜間の3往復は停泊が絡まない列車設定でしたので、ここを見直すことで夕夜間帯の基本編成の運用効率向上を図る狙いが想像しやすいところです。一方で、朝の下り2列車は熱海駅以西を含めた全区間で輸送力の大きさを発揮しており、当面は維持されそうです。

車両運用の観点では、JR東海管内完結列車となる残り2往復がE231系の出稼ぎ運用となるのか、JR東海車両使用に改めるのかも注目されます。前者の場合はJR東海車両使用列車と持ち替えが必須(現状時刻だと1編成で運用が出来ない)・後者の場合はJR東海側の所要数が増加となり、どのような体系となるのか興味深いところです。

2022年3月改正で常磐線にて実施された土浦分割(現在は改善)・E131系投入による宇都宮線宇都宮駅以北の10両運転終了、そして2024年3月改正で今回のJR東海直通列車の見直しとグリーン料金改定など末端区間の両数削減による効率化を目指しているJR東日本の意向がうかがえます。

近年の運用変化を考えると、同様に朝夕直通をしつつ夜間停泊場所確保を兼ねている伊東線についても、24年改正以降のどこかのタイミングで停泊運用以外の見直しが入りそうです。

従来の伊東線では6両編成以上とされていましたが、最近では伊豆急行3000系4両編成での運用が解禁されているなど、障壁は特段なさそうです。

これまでの動きは普通列車グリーン車を近距離〜中距離の利用が多い区間に専念させたいのかなと思わせる反面で、中央線快速電車では大月延長がされているように今後も末端区間の車両数には変動があるかもしれません。

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コメント

  1. のりく〜ん より:

    誰も触れないのですが、今後予定の沼津駅高架化がキーになるはず。新沼津駅や新沼津車両基地が何両編成対応になるか、現状静岡県が出してる図面でもそこに一切触れていないんです。もし10両対応ならば今後もJR東からのG付編成乗り入れ継続だし、もし8両対応とかならば、G付編成乗り入れの終焉だし、一方でいずれにしろサンライズの運行終了にもつながる重要な点なはず。まさか沼津通過で代わりに隣の三島停車なんてことにはしないと思う。