【作り続けて28年】タキ1000形ガソリン輸送貨車が1000両突破!記念塗装車が登場

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鉄道貨物輸送では、日本石油輸送(JOT)と日本オイルターミナル(OT)の2社が所有する専用貨車を使用したガソリン輸送が東北から中部にかけて広く運転されています。

1993年から現在まで長らく増備が続けられているタキ1000形が1000両目の量産となり、記念塗色で落成して注目されています。

石油輸送の高速化・大容量化を目指し製造

タキ1000形タンク車は、1993年から現在まで製造が続けられている貨車で、日本石油輸送と日本オイルターミナルが所有・JR貨物が運用しています。

軽量化によりタンクを大型化して従来の石油・ガソリン輸送用貨車と比較して積載重量を増加しています。従来のガソリン輸送貨車のタキ38000形が36t・タキ43000形が43tの荷重でしたが、このタキ1000形では形状の工夫により45tの積載が可能となっている点が特徴です。

貨車用に開発された台車を使用して、旧来の車扱貨物列車の最高時速75km/hから高速貨物列車の最高時速95km/hとなっています。

近年では北海道での輸送終了による余剰車発生などもあり増備数は減少傾向でしたが、2021年12月1日の落成分で1,008両目が登場しました(注)。

1,000両目の車両が登場したことを記念し、日本車輌製造から出場したタキ1000-1000が記念塗装・装飾で落成しています。

2011年の東日本大震災で被災した車両があるため、今回の製造時点で車籍があるタキ1000形の総数は3桁に留まります。仙台臨港鉄道仙台北港に留置されていた46両が被災しており、この震災での廃車は42両とされています。

このほか、近年では貨車の廃車の詳細については公開されておらず、事故廃車等の状況は追いにくくなっています。

出場したタキ1000形を見る

今回落成した車両は、日本石油輸送株式会社が所有・JR貨物が運用するタキ1000形貨車10両です。

12月1日に豊川から稲沢まで甲種輸送が行われたのち、6日に運用拠点となる根岸駅方面へ向かっています。

タキ1000-999〜1008の付番となっていますが、記念装飾を施したタキ1000-1000を東京側に連結した編成(999,1001,1002〜1007,1008,1000)の順序で連結されている点も特徴的です。

他の9両が日本石油輸送所有車両の緑色とグレーの塗色であることに対し、タキ1000-1000ではこの緑色部分に日本オイルターミナル所有車両の濃青色、そしてJR貨物カラーとみられる水色の3色をあしらった斜めストライプとされています。

ロゴマークについてもJOTのほか、JR貨物、日本オイルターミナルの併記となっているほか、片側面(東海道本線基準で山側)に「タキ1000-1000号記念」・反対側は「環境にも優しい安全・安心の石油タンク車輸送」の記述も見られます。JOTロゴマークは従来のタンク車記載のロゴではなくコンテナ等で使用されているものとされているほか、JOT所有車両にOTロゴマークが入っていることも極めて特異です。

貨車は同一形式を長期間増備する傾向

専用貨車を使用した車扱貨物からコンテナ貨物輸送への転換が国鉄末期に進められた経緯もあり、国鉄分割民営化以降に登場した新形式は非常に少なく、それらも既存車の台車形状変更程度で外観の変化は軽微です。

このほか、JR東日本が2021年に投入したばかり砕石(バラスト)輸送・散布を主目的とした事業用電気式気動車GV-E197系についても、気動車編成の付随車という車両ながら旧来のホキ800形貨車の構造が継承されています。

近年の鉄道貨車だけを追うと技術進歩が少ないようにも感じてしまいますが、それだけ既に完成形に近いものとなっている証拠とも言えそうです。また、日本の鉄道網が貨物列車の活躍とともに大きく発展し、戦後の道路網の発達で旅客輸送中心となった歴史を考えれば、貨車の設計が既に成熟していることも納得でしょうか。

専用列車では最も輸送量の大きいガソリン・石油類の輸送は今後も長く続けられることとなりそうで、今後のタキ1000形の増備が続くのか、それとも新形式が起こされるのかも気になるところです。

この冬は石油が高い……輸送への影響

今後もタキ1000形貨車を使用したガソリン輸送の運転には期待が寄せられる一方で、最近では石油価格の高騰が日本を含む消費国の間で大きな問題となっています。

特に鉄道貨物輸送に頼る長野県では、元々ガソリン価格が高めに推移しており、庶民のお財布に響く状態です。

それ以外の地域を含めて国内全体でかなりの値上げとなっており、鉄道貨物輸送への影響も気になります。

しかし、これまでの情勢を追う限り、石油・ガソリンは節約するだけでは消費量を減らすことは出来ない“必要不可欠”な物資であり、鉄道貨物での輸送量への影響は比較的軽微であるものと考えられます。

例年冬場に需要が大きくなる傾向で、貨物列車を中心に追うファンにとっては定期貨物列車の編成長が伸び、冬場のみ運転される臨時貨物列車の運転を楽しみにしている方も多いかと思います。既に運転を始めた臨時貨物列車もあるようで、この冬もその勇姿を見ることが出来そうです。

見つけたらラッキーな“銀タキ”にも注目

今回、鉄道貨車では久々に“見かけたらラッキー”な貨車が登場しました。JR貨物の特別装飾系では、鉄道コンテナ輸送50周年記念以来の注目の存在となりそうです。

現在主に使用されている石油系輸送貨車にはタキ1000形のほかにタキ43000形ガソリン用貨車・タキ44000形石油用貨車(積載物の比重の違いから車体長が異なる)がありますが、このタキ43000形にも1両だけの“特別色”が存在します。

これは、1987年に新造された“銀タキ”ことタキ143645です。タキ43000形のうち645両目で143000番台に区分された貨車ですが、ステンレス鋼を用いて無塗装とされている点が前後に製造された貨車との大きな違いです。量産化には至らず、その後の新造は容積が拡大されたタキ243000番台に移行しました。

こちらもタキ1000形で置き換えが進められているタキ43000形貨車の一員ですので、見かける機会があればぜひ拝んでおきたい車両です。

画像元ツイート紹介

記事内掲載写真は、すかにあ様(@SCANIA_Express)より掲載許諾をいただいています。

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