都営三田線では、東急目黒線乗り入れ開始後に激化している混雑や、相鉄への乗り入れを意識して、既存の6300形を置き換える形で8両化が実施されることが明らかになっています。
直通先の東急目黒線や相鉄線、そして現時点ではどちらかというと消極的な東京メトロ・埼玉高速鉄道の動きとともに、4年後の相鉄直通開始までの動きを考証していきます。
都営三田線の混雑
都営三田線は建設当初から6両編成での運転を前提としつつ、すべての駅で8両編成での運用を想定したホーム長となっています。
構想当初の段階では西高島平駅から東武鉄道東上線の和光市駅まで建設する計画でしたが、東武鉄道側は当時の営団地下鉄有楽町線との直通運転を選択しました。
そのため、しばらくは西高島平~三田駅間を運行する単独路線として運転をしていました。
その後、三田駅から白金高輪駅、そこからは営団地下鉄南北線と線路共用という形で目黒駅、そこから更に東急目蒲線を改良した東急目黒線への乗り入れで武蔵小杉駅までの直通運転を開始しました。
もともと鉄道空白地帯だった高島平地区をはじめとする沿線利用者が年々利用を伸ばしていたこともあり、目黒線直通運転開始前に揃えた6300形では8両編成への増結を想定した6両編成として製造されています。
同様に乗り入れをする現在の東京メトロ南北線や埼玉高速鉄道でも6両編成となったため、三田線は混雑を抱えながらも6両編成での運行が今日まで続いています。
転機は東急・相鉄の乗り入れ
横浜駅から二俣川駅、そこから海老名駅・湘南台駅に路線を運行している相模鉄道は、都心アクセスの利便性向上を目的に、JRと東急への乗り入れ運行・そのための新線建設を行っています。
JRの乗り入れは新線区間が短いこともあり、工事期間は大幅に伸びたものの2019年度末の運行開始となります。
その更に3年後である2022年度からは、新横浜駅までの新線が開業、東急側が建設している日吉~新横浜駅間の開業と合わせた相互直通運転が開始されます。
相鉄側は東横線への直通を強く希望しているようですが、線路配線・現在の東横線の混雑状況を鑑みるに、主な直通先は目黒線となりそうです。
既に先行量産車が活躍している20000系は120両の製造が計画されていて、8両編成と10両編成が用意される計画です。
順当にいけば、10両4編成が東横線乗り入れ分、8両10編成が目黒線乗り入れ分となることでしょう。
相鉄では8両編成・10両編成しか現状運行されていません。
東急側についても、唯一8両編成に対応していない奥沢駅の大規模な配線改良を実施している最中で、これにより目黒駅までの8両編成対応が確実となっています。
以上の経緯もあり、ずいぶん前から8両化がしたかった都営側としてはまたとない機会だったのでしょう。
悲願の8両編成化をすべく、8両編成の新型車両を13編成製造すると発表しました。
新型車両の仕様は?
8両編成での製造・仕様は他線区同様か?
東京都交通局では、都営浅草線の一斉置き換え、都営新宿線の置き換え完了+全編成10両編成化発表、都営大江戸線の初期車置き換えと各線区で車両の置き換えが盛んに行われています。
最新の開発車両である浅草線用5500形がイメージを膨らませるのには最も近いものとなりそうですが、今回受注したのは近畿車両です。
サスティナ採用の5500形をはじめ、各線区とは違うテイストのデザイン・車体構造になるものとみられ、注目が集まります。
形式は未発表ながら6500形?
都営地下鉄の特色としては、乗り入れ先や建設当時の設計から、他線区転用を想定していない形式附番が挙げられます。
浅草線は5000形→5300形→5500形で、三田線も同様に6000形→6300形ですので、6500形となる可能性が非常に高いでしょう。
新宿線系統についても10-000形→10-300形ですが、大江戸線系統については12-000形→12-600形となっており、これは12-000形を53編成も製造していることに所以しています。
既存の6300形はどうなる?
置き換え対象の6300形が1,2次車が13編成、3次車が24編成の37編成体制です。
13編成のみの置き換え発表となり、さまざまな憶測を呼んでいます。
6300形を最終的に全部置き換え説
都営交通の近年の動きをみると、経年が浅い車両もあっさりと廃車されることも多いです。
6両編成の6300形3次車についても相鉄乗り入れ対応は行うものの、あくまで最終的な置き換えまでの一時的な措置という考え方です。
最終的な運用のメリットはかなり大きなものとなりますが、多数派である3次車まで置き換えるとなるとなかなかの費用が掛かってしまうほか、3次車のB修繕工事も計画されているので、実現するとしてもだいぶ先になりそうです。
3次車はB修繕を施工後、引き続き6両で使用
相鉄乗り入れ列車のほかに、日吉駅での折り返し列車や、現在同様の白金高輪駅止まりに引き続き6両編成として活用されるという考えです。
現実的である一方で、両数の違いがあって全線8両化が出来ないこと、運用上の制限が大きくなることなどが懸念点でしょうか。
これはこれで面白そうですが、利用者や鉄道会社側からは不便極まりない状態となってしまいます。
東急・相鉄が8両編成に揃え、埼玉高速・メトロが渋った場合は距離清算のために南北線・埼玉高速線で運用……なんてことも期待できそうです(東急が全列車8両、南北線が6両編成のみとなった場合は、東急にメトロが片乗り入れとなってしまうため)。
1,2次車の余剰中間車を活用した8両化
都営新宿線について全列車10両編成化への増結を進めているように、都営交通では混雑緩和に向けた様々な改善をしています。
三田線の混雑は列車遅延もしばしばとなるほどですので、早急な改善を行うのであればこの組み換えが手っ取り早い施策なのではないでしょうか。
具体的には、3次車24編成を、3次車8両編成12編成、混結8両編成12編成とする・全編成の欠番である-5,6を1,2次車で賄うというなどの組み換えをするという考え方です。
これはこれで車両の改造を伴うものとなる(M-M’ユニットの一部付随車化)ので、趣味的には面白いですね。
これが実施されるかどうかは、三田線を8両編成で揃えるために保有車両増(48両+新型の増結分26両)の維持費・車両改造費(付随車化と1M化を各11両・機器更新)をかける必要があるかどうかという天秤にかかっていると思われますので、今後の続報に期待ですね。
8両編成化、他社は続くか?
相鉄~そもそも6両編成を運用していない
相鉄側は既に20000系を8両・10両としていることから、6両編成を用意するつもりはないものと思われます。
ただし、乗り入れ列車の一部が6両編成で来る場合も考えられ、これはホームドアの構造か時刻表の発表まで対応の可否が明らかになることはなさそうです。
東急~設備側に動きはあるものの、車両側の動きが不明
東急についても、奥沢駅の配線改良により設備側の対応は確定している一方で、車両の動きについては目立った動きがありません。
特に東急は、目黒線としての開業にあわせた3000系のほか、増発、武蔵小杉~日吉駅間の延長で増備した5080系に大別され、それぞれの経年がまちまちであることから動きが全く読めません。
東急電鉄の車両計画は昔から直前で変更になるなど不可解・ギリギリな運用をしています。
気になる点としては、大井町線用の9000系がGTO-VVVFのなかでも初期のものを継続使用している一方で、2000系改造の9020系という新たな形式を開発した点が挙げられます。
3000系の転用はどうなる?
目黒線の経年車である3000系13編成を大井町線に転用、9020系3編成とあわせて不足分の3編成程度を既存の9000系の機器更新とすれば、大井町線もだいぶすっきりとしそうです(2000系の転用だけだと8500系が1編成置き換えられない)。
(参考~9000系転用完了後の大井町線:9000系15編成・8500系4編成)
東急3000系の製造時期は1999年~2001年であり、都営6300形同様に組み換えによる8両化の可能性も捨てきれません。
この形式はもともと東横線での8両編成での運行の実績があります。
計算上は6両3編成→8両1編成+5両2編成となることから、4編成が残留、9編成を大井町線に転出とすることで、最小限の製造本数と出来る一方で、目黒線では3000系・5080系・新型の3形式が混在する格好となり好ましくはありません。
5080系は増結の可能性が高い?
5080系は経年こそバラバラですが、車種を最小限とする観点からはこちらは増結して8両化をするという見方も強いです。
2002年度に1編成・2003年度に1編成・2006年度に2編成(ここまでが増発分)、2008年度に日吉延伸分として6編成となります。
このことから、2両10編成分程度であれば一世代前の5000系列を製造することは十分に妥当と言えるでしょう。
一方で、南北線・埼玉高速側が8両化を実施しなかったときの乗り入れ車として残存させるということも選択肢に挙げられます。
この場合は6両=5080系、8両=新型となり、かなりすっきりとする一方で、運用面・特にダイヤ乱れ時などに厄介なこととなるでしょう。
東急側としては相鉄の意向で東横線乗り入れも運行することとなるため、ダイヤ乱れ時の車両制約は減らしておきたいと考えていることでしょう。
東京メトロ~財力こそあれど、そこまで乗り気ではない?
東京メトロ側の回答は、現在具体的な計画はないという何とも歯切れの悪いものとなっています。
しかしながら、車両の動きからは消極的と捉えることもできます。
営団地下鉄9000系は、製造年が1990年~2009年と大きく経年差があることが特徴的です。
第01・03・05・07編成:A編成、第02・04・06・08編成:B編成、第09 – 15編成:C編成、第16編成 – 第21編成:D編成、東京メトロ移行後に新造された第22・23編成:E編成 という呼称で分類されています。
このうち、現在、初期車であるA,B編成についてB修繕工事という大規模なリニューアルがされており、まだまだ活躍が期待できます。
これはすなわち、製造から30年が近づいていて経年車である9000系は初期車もまだまだ活用するという意思があるものと思われます。
裏付ける理由としては、形式統一で置き換えるための日比谷線では、床下機器のみを申し訳程度の更新に留めていることでしょう。
丸の内線のB修繕工事→置き換えは電圧の昇圧という特別な事情もあったためやむを得ない例外として、置き換えを少しでも検討しているとしたら9000系初期車にあそこまでの大規模な修繕は行わなかったことでしょう。
これにより、メトロ側のまだまだ6両編成での運行を維持・相鉄への乗り入れもなしで日吉や新横浜止まりとしてもかまわないという考えが推察できます。
また、これを加速する動きとしては、南北線の白金高輪駅~品川駅の延伸計画もあることかと思われます。
メトロがこの計画を実施する場合、品川駅乗り入れに注力して白金高輪駅での対面接続とする可能性さえありえます。
そうなると、わざわざ東急・相鉄の意向で8両化しなくても構わないという考えにもなるはずです。
メトロは財力があるので、先述の丸の内線のようにその気になったら一気に置き換えをする会社です。
現在の調達では副都心線・半蔵門線向けの新型車両が決定しているなかで南北線の調達は出ていませんので、引き続き動向に注目が集まります。
埼玉高速~遅々として進まない利用者増加
埼玉高額鉄道などという揶揄もあるように、建設費償却のための高い運賃設定もあり、利用者が伸び悩んでいます。
やっと最近黒字化できたようですが、いまだに延伸も増結も動きを見せていません。
推測の域を出ませんが、20年という中途半端な経年なので置き換えることもできない、経年差20年の車両を今更増備しても置き換え時に困る、そもそも8両化するだけの利用状況ではないなどの状況が考えられます。
東京メトロは会社全体の収益があることでどうにでも出来るにせよ、この会社の目途が立たない限りは足並みが揃うことはなさそうです。
まとめ
4社1局の様々な思惑が交錯する目黒線系統の直通運転。
2022年度には現在とは大きく違う輸送体系になるものと思われます。
やはり気がかりなのは南北線系統の8両化が実施されるか否か、そして車両の置き換え動向ですね。
各社から続報も出ましたので、関連記事からどうぞ。
コメント
大井町線は先のダイヤ改正で急行の運用が増えた一方、各停の運用が一本減ったとの情報がありますので、9000系15本、9020系3本で運用が回るという見方が多い模様です。
記事お疲れ様です。
東急の車両の8両化については、田園都市線の車両が2020系に統一されるという話があることから、置き換えとなった5000系10両を8両に減車し余剰となった2両を5080系に組み込むのではないでしょうか。
長津田所属の5000系は18本なので、10本は中間車を抜いて5080系に組み込み、残り8本は東横線に転属、玉突きとなる5000系・5050系8本を目黒線運用にすれば、1両の無駄も出さずに新横浜線の増発分を賄えると思います。
メトロ側の発表がないのは、埼玉地下鉄との調整が出来ていないからなのではないでしょうか。
埼玉地下鉄は財政難なので最終結論を出すのが難しいのだと思います。
埼玉地下鉄に関しては8両化はしつつも編成数を減らして総量を抑えるかもしれません。
個人的には都営線だけでなくメトロ側も8両化して欲しいです。
混雑率156%なので増結して140%以内にして欲しいです。
東急5000系列自体は各路線用で基本設計は同一ですが、直通先の違いのため搭載されている保安装置が異なることも考慮する必要があるかと思います(保安装置の換装はそれなりにコストが掛かります)。
南北線は元々全線開業時に8両化する前提で設計されているので、直通先の埼玉高速線も含めて準備は完了してはいるんですけどね。
開業前の需要予測と比べると半分程度とかなり下回っていますが、一応は徐々に利用客数は増加しているので、運用のしやすさ等も含めて南北線側も8両化してもらいたいところです。