真岡鉄道で長年に渡り活躍を続け、多くの観光客やファンに愛されていたC11 325号機。
以前より2機体制維持が困難とされ、譲渡の話が進められていたこの機関車。
12月1日の運用を以って真岡鉄道での活躍を終えることとなりました。
C12 66号機の相棒として活躍
1994年(平成6年)にデビューした真岡鉄道のSL列車。
予備機確保・運転頻度向上を目的として、1998年(平成10年)に運転を開始したのがこのC11 325号機です。
C12 66号機を真岡線SL運行協議会が所有している一方で、C11 325号機は真岡市の所有という違いがあります。
2機は仲良く真岡線を走り続け、時折重連としてファンを魅了していました。
しかしながら、SLの莫大な維持コストが嵩む一方で、1999年度をピークに利用者数が右肩下がりとなっていました。
課題となっている維持コスト削減のため、2018年ごろからC11 325号機を手放す方向で調整が進められていました。
C12 66号機はC12形自体の現役機が唯一(大井川鐵道で車籍があるものの、長期休車)という点・自社運行初号機という点などもあった一方、C11形は日本国内で一番動態保存機が多い形式である点などからこちらを手放すことになったようです。
JR東日本への貸し出しでお小遣い稼ぎをするも……
現在でこそD51,C57に加えてC61,C58を動態復元させたJR東日本ですが、それまではSLの保有機数は2機体制が長らく続いていました。
DC(ディスティネーションキャンペーン)などで運用される場合には高崎地区・新潟地区で週末運行されている列車を削減して運用するのが基本でしたが、只見線などの小規格路線での臨時列車として運用するため、C11 325号機が貸し出されることがありました。
定期検査を受託している費用の相殺としての色合いもあったかと推測できますが、真岡鉄道が2機保有体制を維持出来ていたのも、この貸し出しによる収入の存在が大きかったのではないでしょうか。
2011年のC61 20号機の動態復元・2014年のC58 239号機の動態復元など、JR東日本のSL運行体制の変化を受け、この貸し出し運用についてはひっそりと姿を消してしまいました。
東武鉄道のSL調達は3機目
一方の譲渡先となる東武鉄道ですが、ここ数年の蒸気機関車への熱意は他社の比ではありません。
JR北海道からC11 207号機を借り入れる形で“SL大樹号”を日光線 下今市駅〜鬼怒川温泉駅にて運行をスタートしています。
また、静態保存されていた江若鉄道由来のC11 1号機(国鉄製造の同番機とは異なる)について、東武鉄道自身では初となる動態復元を2020年冬を目標に進めています。
これについて、毎週末の運行・故障のバックアップ体制・他エリアへの運用拡大などの様々な背景が考えられます。
そのなかでも、C11 207号機の故障を理由にディーゼル機関車牽引での代走する日が多く存在しており、この解消が狙いの1つとなってきそうです。
一方で、今回のC11 325号機の譲渡については今後の全貌についてを明らかにしていません。
C11 325号機受け入れにあたって、真岡鉄道のC12 66号機の定期検査時の貸し出しを想定している模様ですが、自社は207号機を借りているのに325号機を貸し出すという“又貸し”に近い体制が採られることへ疑問の声もあります。
あくまでJR北海道からの借り入れという扱いのC11 207号機。
ディーゼルカーの共同開発・観光列車の貸し出しなどの実質的なJR北海道支援が各社から行われている昨今、現在の看板機であるC11 207号機が引き続き維持されるかどうかも注目ポイントとなりそうですね。
譲渡の条件で波紋も!?
2019年3月12日に真岡市から譲渡の条件について公告がされましたが、内容については波紋が広がりました。
これは、2018年秋時点で2社と2自治体から譲渡についての申し出が複数メディアにより報じられていたものの、2019年3月12日の公告で発表された内容が限定的だったという内容です。
法で定める鉄道事業者・栃木県内に事業所があり、そこが判断権限を持っている・栃木県内でC11を運行できる(抜粋)
……この栃木県内で完結する譲渡話ですが、この2社のうちの片方であった大井川鐵道が手を挙げていた旨を明らかにしており、この栃木県内に限定する条件に対して疑問の声をあげていました。
また、鉄道事業者に限定することで、自治体からの申し出も拒否するものとなりました。
当然ながら、この条件でSLの運行体制がある会社は真岡鉄道以外では東武鉄道のみですので、入札・落札も東武鉄道1社のみです。
真岡鉄道・真岡市の思惑を考察すれば、C12 66号機の定期検査時に借り入れられる条件を出してきた東武鉄道が一番嬉しい譲渡先であったことは容易に推測が出来ますね。
しかし、真岡市所有の公共資産であるこの機関車を「競争入札」を建前にしながら、1社2自治体の申し出を制限する形で行ったことに疑問の声が上がるのも当然でしょうか。
自社が水面下で交渉をしたものの無碍にされた大井川鐵道が、同業他社との溝を作る覚悟で不満を露わにするのも納得出来るところではあります。
各社・各自治体の複雑な思いはあるようですが、今一番SL事業で活気がある東武鉄道が最良の嫁ぎ先と考える方も多いと思いますので、東武鉄道での今後の活躍に期待したいですね。
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