秩父鉄道では、2020年9月を以って貨物線である三ヶ尻線の三ヶ尻駅〜熊谷貨物ターミナル駅間を廃線とすることを明らかにしていました。
最後の貨物列車として、東武鉄道の新造車両の輸送(甲種輸送)が実施されており、ヘッドマーク掲出・記念切符発売などのイベントが催されました。
廃線経緯とともに、秩父鉄道・東武鉄道の動向をお伝えします。
石炭貨物廃止と部分廃線
秩父鉄道の旅客列車は羽生駅から三峰口駅まで運行されていますが、路線建設経緯にもあるように現在まで貨物列車が多く行き交う私鉄として知られています。
現在まで主力の列車はヲキ100形・ヲキフ100形貨車を使用した石灰石輸送ですが、このほかにもセメントの原料となる石炭を輸入し、JR貨物から熊谷貨物ターミナルにて継承する石炭輸送が実施されていました。
JR貨物では20両編成で運行されているホキ10000形貨車編成を半分ずつに分け、1日2往復体制での運行でした。自社完結の石灰石輸送が乗り入れない、JR線とつながっている熊谷貨物ターミナル〜三ヶ尻駅間を走行する定期列車となっていました。
しかしながら、2020年3月付けで石炭輸送が廃止(トラック転換)となり、通常列車が走らなくなってしまった同区間の廃線が決定。
これにより影響を受けることとなったのは、自社の新造車両を熊谷貨物ターミナル〜武川〜羽生(本線車両)または寄居駅(東上線車両)でメーカーから受け取っていた東武鉄道の車両輸送でした。
定期貨物列車の廃止から路線廃線までの半年間にも、「THライナー」でも活躍する70090型・500系特急型電車「Revaty」の搬入が同路線経由で行われています。
なお、廃線となるのは三ヶ尻駅以東のみ(3.86km)となっており、同駅以西は引き続き石灰石輸送で使用されることとなります。
最後の運行は東武鉄道500系
通常、本線系統の甲種輸送では、羽生駅での構内入換の都合で両側に機関車を連結する編成となっていました。しかし、今回の輸送に限り広瀬河原駅までの区間はファン人気の熱いデキ100形108号機の単独牽引となっています。
更に、これにあわせて発売された記念切符にもデザインされていたイラストをそのままヘッドマークに掲げて運行されており、普段はJR線内に比べると撮影者が少ない秩父鉄道線内の輸送にも多くのファンが駆けつけました。
なお、東武500系「Revaty(リバティ)」は3両8編成が投入されていましたが、今回は3編成の増備となりました。看板特急の100系「SPACIA(スペーシア)」に比べるとファンからの期待値が低かったものの、デビュー後に分割併合を生かして本線各地で幅広い活躍をしており、ファン人気も高い形式です。
今回の輸送は貨物・東武鉄道・秩父鉄道の各路線のファンを賑わせる嬉しいイベントとなりました。
秩父鉄道の甲種輸送自体は今後も運転か
今回の秩父鉄道三ヶ尻線区間廃線により、東武鉄道・東京メトロ日比谷線などの新造車両の輸送が見納めとなることは先述の通りですが、鉄道車両輸送(甲種輸送)自体が見られなくなるわけではありません。
これは、自社路線で直接繋がっていない東武本線系統と東上線系統で車両の出入りをする際の経路として、秩父鉄道の寄居駅〜羽生駅間を秩父鉄道の電気機関車牽引とされていることが背景です。
30000系の東上線転用・トレードとなる形で10000系列の本線転用がしばらく続けられてきた(過去記事)ほか、最近では東上線に新製配置された50000系51008Fが本線に転用されて話題を集めている最中です(過去記事)。
更に、東上線系統では以前より川越工場の検査能力の都合から補う形で本線側の南栗橋車両管区が一部検査を担当していたほか、最近では東上線固有形式の9000系列のうち9050型が本線で深夜試運転を実施しました(関連記事)。
川越市では再開発も進められており、川越工場の縮小・廃止も噂されており、全ての全般検査が南栗橋に移管された場合はかなりの頻度で運行されることとなります(30000系・50000系列の重要部検査は既に森林公園検修区に移管)。
秩父鉄道の歴史を語る上では大きな転換点であることは間違いありませんが、秩父鉄道経由での輸送はむしろ今後も多く見られる可能性が高そうです。
最近も注目を浴びることが多い両路線の今後に期待したいですね。
画像元ツイート紹介
今回のヘッドマーク付き甲種輸送のお写真は、フォロワーのそらなん様(@laso_bluesky888)より許可をいただいて掲載しています(過去・別日輸送は筆者撮影)。
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