【栗橋経由】真岡鉄道SLが東武鉄道へ!蒸気機関車C11 325が甲種輸送

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真岡鉄道から東武鉄道への譲渡が公式発表され、その動向が注目されているC11 325号機。

本日未明、整備を受けていたJR東日本・大宮総合車両センターから東武鉄道・南栗橋車両管区へ向けて甲種輸送が実施されました。

今回はJR東日本と東武鉄道が直通特急を運行するために整備した連絡線を使用しています。

C11 325号機譲渡と東武鉄道の野望

東武鉄道では、日光鬼怒川エリアへの起爆剤として、蒸気機関車(SL)の運行を2017年8月より開始しました。

歴史の長い東武鉄道では、下今市駅構内に旧転車台跡が見つかったことなどが背景となる一方で、東武博物館で静態保存されている東武線走行歴のある機関車などは活用せず、国鉄〜JR各社の機関車・客車・車掌車・転車台を譲受することで実現しています。

JR北海道・JR東日本・JR西日本・JR貨物から車両や転車台を譲受、乗務員の育成には真岡鐵道・秩父鉄道・大井川鐵道が携わり、日本中の鉄道会社の絆を感じさせられるプロジェクトとなりました。

日光線・鬼怒川線の分岐駅である下今市駅から鬼怒川温泉まで3往復運行する体制でスタートしました。

更なる拡充としてSLの複数運行体制が中期経営計画に記述されて注目されていましたが、まずは北海道で静態保存されていた「江若鉄道C11 1号機」(国鉄由来のC11型と同型ながら、自社発注機ゆえに国鉄の1号機とは別個体)を動態復元することとなりました。

予想以上に修繕箇所が多かったこと、昨今の社会情勢から修繕工事が難しくなったことなどを背景に当初の2020年冬デビュー予定から2021年へ延期されています。

同じ栃木県の真岡鐵道では、長年に渡り真岡鐵道所有のC12 66号機と、沿線自治体の芳賀地区広域行政事務組合が所有していたC11 325号機による複数体制での運行が行われていましたが、利用者数や運行経費などの観点から複数機体制は困難との結論に達しました。

ピーク時に比べると利用者が減少しており、その赤字額は年間8,000万円との報道もありました。地域活性化・収益のための存在が足手纏いとなる苦しい状態が続いていました。

里子に出すこととなる条件などで物議を醸したものの(関連記事)、真岡市の思惑通り……かと思いますが、同じ栃木県でSLを運行しており、その規模を拡大しようと考えていた東武鉄道に渡ることとなりました。

2019年冬のラストランから入念な整備

東武鉄道が1億2000万円で落札したと言われているC11 325号機ですが、真岡鐵道でのラストランは2019年12月1日。

それ以降は同月12日に真岡鐵道の蒸気機関車の整備を受託していたJR東日本・大宮総合車両センターへ入場・定期検査が実施されていました。

通常の電車の入場期間が1ヶ月程度であることを考えると、半年以上の長い検査期間となります。この入場期間自体は特別長いものではなく、同じJR東日本の所有機でも同様です。最近だと同所に入場している秩父鉄道C58 363号機が2020年の丸々検査で離脱しています。

いかに蒸気機関車の維持に手間・時間・労力が掛かっているかを感じさせられます。

7月30日付けで東武の手に渡ったC11 325号機。過去の動向通りであれば、所有は東武博物館名義でしょうか(ディーゼル機関車のみ東武鉄道・蒸気機関車や車掌車、客車は東武博物館名義)。

デビューは2020年冬とされており、復元に時間を要することとなったC11 1号機の代わりに即戦力となりそうです。

栗橋連絡線完成から15年目の大活躍

従来、東武鉄道の車両搬入では、熊谷貨物ターミナルから秩父鉄道を経由して伊勢崎線羽生駅または東上線寄居駅へ輸送する経路が採用されていました。

秩父鉄道の石炭輸送終了で三ヶ尻線が部分廃止となり、この経路が使用出来なくなることで、今後の車両搬入経路が注目されていました(関連記事)。

今回使用された栗橋連絡線は、JR線・東武線の特急列車直通運転開始(2006年3月)に向けて整備された連絡線です。現在も直通運転をする全列車が運転停車(客扱をしない停車)をするほか、東武線寄りに直直デッドセクション(死電区間=電源供給がされない区間)が設けられている面白い路線です。

2020年度の新造車両として70000系70090型2編成が同様の経路を使用していましたが、今回は初めてこの栗橋連絡線を活用して甲種輸送が実施されました。

また、JR貨物と東武鉄道が直接車両のやりとりをする光景も印象的です。

東武鉄道は大手私鉄として最後まで貨物列車を運行しており、その歴史は104年にも達します。

晩年はJR東日本の東鷲宮からの連絡線を経由して、伊勢崎線久喜〜北館林荷扱所まで運行されていました。その後は久喜駅は改良されて地下鉄直通の拠点駅として、北館林は使命を終えた車両の解体場所として、それぞれ他社車両を交えた新時代を迎えています。

更に、東武鉄道側の牽引機・DE10 1099号機は譲渡前に長らく大宮総合車両センターの入れ替え機として使用されていました。真岡鐵道の蒸気機関車の定期検査は同所で施工されており、両機の組み合わせは何度も実施されています。

生まれも育ちも全く異なる両機が東武鉄道で再会を果たすことになるとは……まさに“現実は小説より奇なり”です。

ますます盛り上がる東武鉄道のSL列車。北斗星カラーを身にまとったDE10 1109号機ともども、今後も国鉄・私鉄双方のファンを虜にしてくれることでしょう。

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