JR貨物では2021年に入り、中央西線貨物列車へEH200形の運用を目指す動きが見られていました。
2021年12月12日発の8081レ・13日発の6088レの往復で往復先頭に立ち、JR東海管内を初めて自走しています。
中央西線貨物列車と機関車采配事情
長野県へのガソリン輸送の多くは鉄道貨物輸送で行われており、根岸から中央東線経由・四日市から関西本線〜中央西線経由の2ルートが設定されています。
中央線は山がちな地形により長らく登坂性能に優れたEF64形が運用されており、篠ノ井機関区塩尻派出・愛知機関区にEF64形0番台が配置されて運用されていました。
2003年から重連牽引の解消と老朽化した機関車の置き換えを目的にEH200形量産機が高崎機関区に投入が進められ、中央東線のEF64形0番台を直接代替したほか、上越線で運用されていた1000番台を愛知機関区へ転用する格好でJR貨物の0番台は全廃・1000番台の未更新機も運用整理ののち全廃となりました。
EH200形が25機で製造を終えた2011年ごろから現在まで、EH200形は上越線・中央東線、EF64形1000番台は中央西線・伯備線と役割が固定されていました。両形式とも間合い運用で平坦線区の運用も多く設定されていました。
特にEF64形は2021年3月改正まで、東海道本線を経由して首都圏の貨物列車にも充当されていましたが、撤退しており(過去記事)、現在は名古屋周辺の短距離貨物列車での運用に留まっています。
ここ10年間はEF64形1000番台が重連総括制御(2機の機関車を先頭側の運転台で一括制御する方式)で中央西線系統を日常的に行き来する姿が見られており、国鉄型電気機関車の置き換えが進むなかで重連牽引が日常的に見られる線区として人気となっていました。
2021年7月にはEH200-12号機が無動力回送で愛知機関区入りをしたものの、構内での試験のみを行なって返却されていました。
同月にはEH200形と同じく2車体8軸で牽引能力が高いEH500形“金太郎”が(過去記事)日本海縦貫線(奥羽本線〜北陸本線など)・上越線で試運転を行った動きもあり、北海道新幹線開通後は性能を持て余し気味のEH500形を交えた運用体系の変更も考えられる状態となりました。
試験走行の様子
EH200-17号機は12月8日に東海道本線貨物列車5091レの次位無動力で愛知入りする姿も目撃されており、7月の12号機に続く動きで動向が注目されていました。
前回は愛知機関区構内での動きのみでしたが、今回はJR東海管内の本線上を初めて自走しています。
今回初めて運用された列車は、12月12日夜に東海道本線・稲沢駅(愛知県稲沢市)を発車し、篠ノ井線・南松本駅(長野県松本市)まで運行される貨物列車8081レです。この列車は四日市から南松本へガソリンを輸送する列車で、ガソリン需要の増加する冬季を中心に運転されている臨時貨物列車です。
通常は愛知機関区に所属するEF64形1000番台の重連総括運転となっていますが、今回の牽引ではEH200-17号機の次位にEF64 1018号機が連結されています。
通常のEF64形の運用順通り、翌13日発の空車のタンク車を牽引する“返空”6088レを同様に牽引して愛知機関区へ戻っており、こちらもEH200形が先頭になるよう連結順序を組み換えています。
次位にEF64形が連結されている編成構成から、今回の初牽引が試験的なものであるものと見られます。本格的な運用は早くても2022年3月のダイヤ改正前後でしょうか。
重連運用を中心に投入……？
EH200形をEF64形全運用に投入することは配置数から困難であることは明らかで、平坦運用はEF210形など量産が続いている形式で代替し、EH200形は山岳線区を中心とした運用とされることが想像できます。先述のEH500形試運転の結果が良好であれば、上越線の一部運用をEH200形からEH500形とし、捻出分を中央西線運用に充てる展開もありそうです。
国鉄製造の電気機関車の“聖域”だった九州エリアにもEF510形が投入されるように、EF64形の牙城だった中央西線もいよいよハイテクロコの足音が聞こえてきました。最近は原色化も進んでおり、遠方からその勇姿を拝みに訪れるファンの方も多く見受けられます。
折りしも211系の代替・313系の転用などの動きと重なるほか、同線の看板列車「ワイドビューしなの」も置き換えが近い時期に差し掛かっています。中央西線の顔ぶれは向こう数年で様変わりしそうですので、後悔が残らないよう記録したいところです。
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