2019年度の新潟エリアに続き、2020年度には秋田エリア向けとして電気式気動車・GV-E400系を投入する動きが始まっています。
秋田エリア向けに新造されたばかりのGV-E400-9が7月末に高崎車両センター高崎支所に回送されて注目されていましたが、8月13日に上越線・高崎駅〜沼田駅間にて試運転を実施しています。
八高線(北線)向け新造車計画と捉えるのが適当?
JR東日本八高線は、高麗川駅を境に南側を4両編成の電車・北側をキハ110系気動車により運行されています。
キハ110系気動車はJR東日本設立後に開発・製造され、同社管内で広く活躍しているディーゼルカーです。八高線用としてはキハ110形200番台(両運転台・単車)9両と、キハ111形,キハ112形200番台2両編成6本=12両の合計21両が配置されています。
八高線の電車については中央線・総武線各駅停車で使用されていた209系500番台・E231系0番台による代替が行われていた一方で、いわゆる”北線”の新造車投入については大きな動きがありませんでした。
一方で、以前から公表されているように、新潟・秋田エリアについては電気式気動車・GV-E400系の投入が進められています。2020年6月17日〜18日にかけて、前年度の新潟車の続番で秋田車が甲種輸送され、両運転台のGV-E400-9・片運転台のGV-E401-17,GV-E402-17が登場しました。
このうち2両ユニットは秋田エリアで試運転を始めた一方で、GV-E400-9は7月30日に秋田車両センターから新津運輸区へ、翌31日には新津運輸区から高崎車両センター高崎支所に回送されています。
そして、8月13日より高崎エリアで乗務員訓練とみられる試運転を開始したことで、高崎エリアへGV-E400系が投入される……と捉えることも可能な状勢となっています。
GV-E400系に代表される電気式気動車は、ディーゼルエンジンで車両を動かすのではなく、ディーゼルエンジンによって発電された電気を使って電車のように動かす方式です。ハイブリッド車から蓄電池を省略したような設計で、電車と部品共通化が出来ることや、ハイブリッド車より安価であることなどがメリット。燃費性能がハイブリッド車より劣ることや、一般の気動車よりは車両が重くなることなどがデメリットです。
バラスト(砕石)輸送を想定?
八高北線向けのGV-E400系が製造されると捉えるのが妥当ですが、新たな役割を想定している可能性もあります。
これは、2020年2月の労働組合資料(JRひがし労高崎地本)にて、「翌々はGVEに補機を付けるという話もあるが、進んでいない」という会社側の回答が記されていたことが挙げられます。
この組合資料の記述は曖昧で、誤字なども複数あることから、「補機」ではなく「ホキ」をGV-E400系に付けることを指しているのではないか?との推測も有力です。
JR東日本管内では依然として新造・改造車両などの配給輸送や、レール・バラスト(線路に敷設されている砕石)などの工事用臨時列車を機関車牽引によって運行しています。
このうちのレール輸送については、JR東海の事業用気動車・キヤ97系をベースとしたキヤE195系の製造が進められている最中です。それ以外の機関車牽引列車の代替もかねてより話題となっていますが、依然として明確な置き換え方法が明らかになることはありませんでした。
これまで目立つ動きはなかったものの、既に高崎支所の電気機関車・ディーゼル機関車が削減されていることを考えると、いつ始まっても不思議ではありません。
情報はかなり限られていますが、投入車両は2パターン考えられます。
バラスト輸送用牽引車が登場する可能性
まず思いつくのは、JR西日本が投入した除雪用気動車のように、機関車のような牽引能力を有したディーゼルカーを製造する方法です。
専用車となる場合の課題としては、JR東海で実績のあったレール輸送用気動車と異なり、新規開発にはそれなりのコストが発生します。既にGV-E400系で試運転が始まっていることを考えると、走行機器構成・運転台レイアウトなどをGV-E400系と極力近づける=設計を生かした新造車という可能性が考えられます。
筆者の想像となりますが、両端に牽引車となる電気式気動車を付け、編成中間にホッパ車を挟む編成……あたりが想像しやすいところでしょうか。JR貨物のM250系スーパーレールカーゴの電気式気動車版といった編成がパッと思いつくところです。配給輸送なども担う場合は、固定編成ではなくあくまで牽引機能に留まりそうです。
なお、乗務員訓練を類型車両で先行実施することもあり、武蔵野線への209系500番台投入時に209系2100番台で実施された例などが挙げられますので、GV-E400系で乗務員訓練=投入車両が必ずGV-E400系とは断言出来ません。
営業車+貨車の編成をする可能性
このほか、組合資料の解釈として、旅客営業車両であるGVE=GV-E400系に貨車を連結するパターンも考えられます。
八高線の営業車両と事業用車両を共通化することで、保有車両の減少を図ることが可能となります。
JR各社ではあまり例がない方法ですが、同じ群馬県を走る上信電鉄や、滋賀県・近江鉄道などで単行の電車牽引によるバラスト輸送が行われています。
ただし、このGV-E400系の場合は在来のホキ800形とはブレーキシステムが異なります(GV-E400系:電気指令式空気ブレーキ / ホキ800形:自動空気ブレーキ)。
このため、電気指令式ブレーキの新造貨車を製造するのか、GV-E400系にブレーキ読み替え装置を取り付けるのかのいずれかの対応が必要となります。誤植と推測する声がある組合資料の記す「補機」はブレーキ読み替え装置を指しているのかもしれません。
バラスト輸送自体はトラックでの輸送に転換された事例が非常に多かったものの、群馬エリアだけでなく、今後JR東日本管内各地でこのどちらかの輸送が行われる可能性は捨てきれません。
レール輸送用気動車導入が随分前から組合資料などで触れられていた一方で、依然としてレール輸送以外の事業用車両の今後が見えてきません。機関車の今後・八高線ディーゼルカーの代替ともに、新情報に注目したいところです。
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今回のお写真は、上越線試運転初日を記録された、ぐんまのゆーさん様(@yusangunma1012)より許可を頂いて掲載しています。
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