先日、京浜東北線に新型車両を導入することが報道され、その意外な計画にファン・利用者から驚きの声が相次ぎました。
7月6日の新情報として、先日報道された京浜東北線の投入形式がワンマン運転機能を備えたE235系であることのほか、同様に横浜線への投入計画があること。そしてE233系の転用について、仙石線、高崎エリア、松本・甲府エリアが既出の房総エリアのほかの投入計画がある線区であることが組合資料に記載されています。
JR東日本の労働組合の1つ、JR東日本輸送サービス労働組合(JTSU-E)が伝えています。
2018年に改訂された「ベストプラクティス」の概要が明らかに
JR東日本の中長期的な車両置き換え計画については、社内では「ベストプラクティス」と呼ばれる資料が2000年代から存在しており、直近では2018年5月に改訂されていることが明らかになっています。
それまではE231系を各地に転用する計画だったことが車両の動きなどからも読み取れる状勢でしたが、その計画に何らかの変化が加わっていることがここ数年ファンの間で噂されていました。
鉄道システムの最適化・ESG経営がここ数年の計画変更の背景であることまでは明らかにされていたものの、変更後の新車投入先・既存車両の代替方法などについては断片的な情報に留まっていました。
2020年6月25日に国鉄千葉動力車労働組合がE233系の2024年度以降の転入に触れたほか、27日には共同通信社など複数報道により京浜東北線に新型車両を導入する計画があることが伝えられています。
京浜東北線→房総方面への単純なE233系1000番台転用に留まると推測するファンも多かった印象ですが、今回の新情報によって計画の概要が明らかになりました。
横浜線という路線選定はかなり合理的?
現在のJR東日本はドライバレス・ワンマン化などの新しい輸送体系へのシフトを重要視しています。車両計画の変更もこれを発端としていると考えて差し支えなさそうです。
京浜東北線ではホームドア設置も大詰めを迎えており、2024年度以降に登場するE235系での長編成ワンマン運転実施の土壌が整いつつあります。
根岸線内についても貨物列車走行という輸送上の特徴こそあるものの、旅客列車については8両または10両の通勤タイプの車両に特化しています。
臨時列車・団体臨時列車などで特急型が入線する機会こそゼロではありませんが、既に主要駅でホームドア整備を進めていますので他形式入線については重要視していないことでしょう。
根岸線内にもATO(自動列車制御装置)が整備されるのであれば、乗り入れてくる横浜線車両にも活用することが検討されるのも自然な流れとも言えそうです。
山手線と線路を共用する機会がある京浜東北線、そして根岸線を共用する横浜線と連鎖的に展開されていることを考えると、納得のいく選定とも言えそうです。
また、所属基地が横須賀線と同様の鎌倉車両センター(大船駅近接)であることも強みになっているかもしれません。
特にE235系では、次世代車両制御システム“INTEROS”による状態監視・診断機能をベースとしたモニタリング保全体系への移行を目指しており、これらでは車両からのデータをWiMAXを経由して地上システムに送信して車両の管理を行うこととなります。
横須賀線・総武線快速電車と同等の管理が可能となり、車両の部品共通化だけではなく、管理・保守についてもかなり効果的に行うことが可能になるでしょう。
横浜線の車両代替が進められると、鎌倉車両センター管轄で残される新保全体系の車両は成田エクスプレス号のE259系・中原支所(旧:中原電車区)の南武線向けE233系8000番台、新系列電車ではない南武支線・鶴見線の205系となります。
このうち205系については燃料電池試験車FV-E991系の製造が発表されており、実用化に至れば同型の量産車の投入・架線レス化が行われることが予想できそうです。同時にモニタリング保全体系への移行でしょうか。
成田エクスプレスについても横須賀線・総武線快速電車のホームドア対応コストを考えれば新造車投入・他線区転用されても不思議ではありません。
残される格好となる南武線もE235系などで早期置き換え対象となってしまうのか、はたまた現行のE233系で中編成ワンマンを目指すのかが今後の注目ポイントでしょうか。
モニタリング保全の対象機器(E235系)
モニタ装置・WiMAX装置・パンタグラフ・マスコン・VVVFインバータ制御装置・SIV装置・ブレーキ制御装置・滑走防止弁装置・コンプレッサー・調整器・ドア・戸閉保安装置・放送装置・保安装置・空調装置・蓄電池装置・標識灯
17機器700項目6000点
ネガティヴな要素として思い浮かぶのは、ファンですら驚く置き換え対象の車齢の若さぐらいでしょうか。
総合車両製作所(J-TREC)新津事業所の年間製造能力は250両程度ですので、京浜東北線向けを2024年から同所単独で製造を続けた場合、単純計算として横浜線向けの製造は2027年後半ごろより実施されることが考えられます。
E233系6000番台の投入が2014年頭からでしたので、減価償却の面ではギリギリ13年経過となります。機器更新時期よりは少し手前ではあるものの、他のメリットの多さを考えて……でしょうか。
様々な要素が複雑に絡んでおり、複数回の計画変更を経たからか、なかなか歪な置き換え計画になっています。特に中央線快速電車のE233系0番台に莫大なコストを掛けてトイレ設置・グリーン車増結を進めているのが素人目線ではとてももったいない印象です。
ファン目線では改めてJR東日本の財力に驚かされますが、それだけワンマン化での人件費削減効果が絶大なのかもしれませんね。
E233系の房総方面以外の転属も
既に房総方面にはE233系の転入による中編成ワンマン運転実施が組合資料に記述されていましたが、これ以外の対象線区が仙石線、高崎エリア、松本・甲府エリアとなることが新たな情報となります。
過去の組合資料でE231系の転入を想定されていることが触れられていた路線ですので想像できた範疇ですが、いずれも中編成ワンマン対応として転用されることが読み取れる内容です。
まだまだ段階的でしたが、向こう10年で急速にワンマン化の波がやってくることと考えられます。
E235系により捻出されるE233系
京浜東北線 E233系1000番台:10両82編成(6M4T)
横浜線 E233系6000番台:8両28編成(4M4T)
※過去報道にあったE235系UT/SSへの投入計画の残存は不明
組合資料により代替されるとみられる車両
仙石線 205系3100番台:4両17編成
房総エリア 209系2000,2100番台:4両42編成・6両26編成
※E131系2両12編成の投入前時点
高崎エリア 211系:4両23編成・6両7編成
松本・甲府エリア 211系:3両39編成・6両14編成 (E127系:2両12編成)
E233系1000番台と6000番台では車両仕様が異なる点が多く混結は避けそう(211系の転用例)な一方で、車齢や仕様の違いを考えると、初期に製造された1000番台を4両編成・後期に製造された6000番台を6両編成とする可能性も考えられます(209系500番台とE231系0番台の武蔵野線・八高線への転用例など)。
高崎地区は211系投入時点で4両・6両への運用整理を行なっているほか、東日本大震災と仙石東北ラインの運行で輸送体系が変更されている仙石線については、同数に近い車両数が転入することが推測できます。
一方で、過去の組合資料でも編成構成変更が触れられていた松本・甲府地区と、既にE131系の新造が公表されている房総地区については、E233系転用にあわせる形で大規模な輸送体系の変化が加わることが予想されます。
筆者個人の推測としては、組合資料にあえて長野地区と記述されていない(現行の211系は長野・E127系は松本に配置)ことから、中央本線運用はE233系で中編成ワンマンにて代替・大糸線と篠ノ井線運用は短編成ワンマン対応の2両編成の投入……が車両数の効率化・E127系の代替として最適に感じます。この辺りは房総方面の新造・転用の使い分けが推測のヒントとなりそうです。
捻出元としては、依然として新情報が出ていない2021年度からと言われていた東海道・高崎・宇都宮線のE235系投入は見送りとなっている可能性も高そうですが、209系以降の新系列電車の転用事例に則って先頭車化改造などをしない前提で考えると、上記の車両数を確保するには数不足にも思えます。
房総エリアはE131系の投入・乗り入れ先の都合、中央本線などは直通する快速電車やE127系の淘汰などその他の要素がありますので、新しい輸送体系がわからない以上は推測も困難でしょうか。このあたりは向こう数年ファンの間で様々な推測が飛び交いそうです。
残された相模線と宇都宮エリアの処遇は?
あらかたの在来車の置き換えが具体化してきた一方で、今回触れられていない205系使用線区である相模線の205系4両13編成と、日光線・東北本線の205系4両12編成の今後も気になるところです。
どちらも205系のなかでは比較的後期車ではあるものの、JR東日本の車両たちのなかでは経年車です。209系が淘汰される計画のなかで置き換えの話が出てこないことは不思議に思う方も多いのではないでしょうか。
小山車はE531系0・3000番台での置き換え・小山の付属編成の共通運用化・高崎地区との共通運用化と様々な効率化が行われる可能性が高そうですが、相模線については適当な車両が思い浮かびません。
少数の製造に留まるE131系が将来的な他線区向けの製造も視野に入れている割にほとんどがE233系転用で代替されることを考えると、E233系の転用から漏れた相模線がこの対象となるのかもしれません。
1991年の電化とともに4両固定編成の205系を投入しているものの、気動車時代や今後の房総方面のように2両・4両で使い分ける輸送体系に戻すことを前提としているとすれば納得のいくところでもあります。
ともに輸送体系の刷新も絡んできそうですので、今後が楽しみですね。
205系以来の大規模転属に?
現在はE257系・E231系が転用改造を行なっているものの、それ以外は機器更新工事とE217系の直接代替などが進行しており、やっとJR東日本も同一線区で使い続ける方向で落ち着くかと思われた矢先でした。
いよいよその概要が明らかになってきたE235系投入とE233系転用。平成の205系・209系に続き、令和の大転用劇となりそうです。
事実上の余命宣告がされた各路線についても、後悔が残らないように日常の乗車・撮影の記録は早めに始めておきたいですね。
コメント
両数だけでいえば 2百両ほども余るが…
編成数でいくと…
仙石・高崎・房総 まで分でギリギリ…
中央・大糸系の編成数分の先頭車が足りないことになる……
中央・大糸に投入しないと、置き換え数の半分近くの5百両近くも余剰になる……
最近の お面つけ忌避 の禁を破ってサハ→クハ改造するのか…
東北・高崎・東海道の 231を 235で置き換える等して先頭車の系列間改造でもしないと… ?…
まだまだ謎が残る……
素人意見ですが、相模線はリニア橋本駅、東海道新幹線倉見駅設置を見据えてまだ決めかねているというのはどうでしょうか