新潟エリアのディーゼルカーの世代交代が2020年春に行われましたが、総勢32両のキハ40系列(キハ40,47,48)がミャンマー国鉄に無償譲渡されています。
3月改正で残されていた只見線運用の置き換えが完了し、残されていた「只見縁結び」ラッピング車キハ48-545を含めた6両が渡航のため甲種輸送を実施しています。
海外譲渡は電車が有名だが……
日本で活躍していた車両が海外で第二の人生を送っているというニュースは各所でご覧になった方も多いかと思います。
最も有名なのは首都圏の電車が相次いで送り込まれているインドネシアの通勤電車でしょうか。古くはJR東日本103系・都営三田線6000形・東急8000系列・東京メトロ東西線5000系・東陽高速鉄道1000系。その後は東京メトロ千代田線6000系・有楽町線7000系・東西線05系初期車、JR東日本から常磐緩行線203系、そして最近では埼京線・横浜線・南武線・武蔵野線の205系が船舶にて輸出されています。
車両数では遠く及ばないものの、譲渡元の会社・車種の多さが特徴的なのが、ミャンマーに渡航したディーゼルカーの数々です。
JR北海道・東日本・東海・西日本・四国5社の国鉄型気動車のほか、北海道からは北海道ちほく高原鉄道、東北からは三陸鉄道、関東からはいすみ鉄道・真岡鉄道、北陸からはのと鉄道、東海からは名古屋鉄道・伊勢鉄道・天竜浜名湖鉄道・樽見鉄道、中国からは井原鉄道、九州からは松浦鉄道・平成筑豊鉄道・甘木鉄道と日本各地のローカル線の少数形式を数多く保有している点が特徴的です。
このほかにもJR北海道・貨物のDD51形ディーゼル機関車・24系客車、最近では広島電鉄から路面電車の譲渡も実現しています。
初期に譲渡された車両たちは日本の気動車一般色に似たミャンマー国鉄の標準色で塗装されている一方で、最近では元の塗装をそのまま維持している事例が多くなっており、日本のファンにとっても嬉しい形態となっています。
国鉄各形式と久々の再会?
今回の譲渡対象は、新津運輸区に所属していた総勢32両となります。2月に5両・5月に21両が現地に到着しており、今回の甲種輸送6両で完了となります。只見線で活躍していたグループ・旧青森車両センターで留置されていたグループは譲渡対象から外れており、現在解体が進められています。
国鉄分割民営化以前は全国で“広域転配”と呼ばれる地域を超えた転用がされてきましたが、会社分割によりこういった動きは見られなくなりました。
JR東日本に継承されたキハ40系列では、2015年の仙石東北ライン開業に関連して、冷房改造を施工していた車両を転属して継続利用・非冷房車を中心に19両がミャンマー国鉄に譲渡される動きがありました。
今回の譲渡により、2015年の動きで余生を分けたかと思われた車両たちとの再会が実現することとなります。
このほかにも久留里線で活躍していたキハ38形・盛岡エリアで活躍していたキハ52形など、どこかで顔を合わせた機会があるであろう顔ぶれと新たな仕事に就くこととなります。
ただし、同じ新津運輸区に在籍していたキハ58形・キハ52形も譲渡が実現していますが、こちらはフィリピン国鉄が譲渡先となっており、異なる国での再就職となりました。
現地事情で計画が狂うことも?
日本から世界各国に旅立つ車両たちですが、全車が全車無事に「再就職」しているわけではありません。
先述の広島電鉄から譲渡された路面電車・750形と3000形ですが、電化開業で注目された2016年1月のデビューから僅か半年で路線自体が運行休止。譲渡からデビューまでは順調だったものの、すぐに保留車となってしまいました。
今回のミャンマーへの譲渡は車両の運用離脱に合わせて速やかに施行された一方で、譲渡を前提とした動きがありながら途上で計画が中断となってしまう例も存在します。
現在、海外譲渡に向けて港まで輸送されたものの国内で動きがない車両としては、北海道各地の特急列車で活躍していたキハ183系列やブルートレイン“北斗星”などで活躍していたDD51形ディーゼル機関車や24系客車、“あけぼの”で活躍していた24系客車、今回譲渡が進められるキハ40系列の元JR東海車両が挙げられます。
いずれもミャンマーやタイで再活用されている車両も多数居るなか、記事公開日現在も譲渡に向けた計画進展がなく、北海道の各車は崎守駅付近、24系は秋田港、キハ40系列は名古屋港にて潮風に晒されながら静かに余生を過ごしています。
彼らの詳細こそ明らかにされていませんが、鉄道会社から輸出入を担う商社の手に渡っていることなど様々な事情もあり、要らないなら解体……とも簡単にはできない様子です。
日本とは大きく異なる政治事情なども絡みますので、国内譲渡以上の難しさがあることは想像に難くありません。
彼らが無事に渡航できるのか、それとも当初計画以外の再活用がされるのか、はたまた頓挫して解体されてしまうのか。いずれの形式も日本では人気の熱かった形式だけに、処遇が注目されます。
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