2021年の夏休み期間中は多くの臨時列車が大会会場へ向けて設定されていましたが、ほとんどの会場が無観客開催となったことで、一旦発表された多くの臨時列車が設定が取り消されました。
有観客となる宮城・静岡県向けのみ臨時列車が維持されていますが、7月26日には小田原〜伊東間という珍しい区間で運行されています。27日にも同様の運行が予定されています。
多くが運転取りやめに
JR東日本では、2021年6月30日に「東京2020オリンピック期間中における臨時列車の運転について」(PDF)として、増発や終電繰り下げなどを発表していました。
首都圏21路線の深夜輸送の実施・京葉線,川越線,横浜線,武蔵野線,東北本線(利府線),仙石線,仙山線に増発・総武快速線〜総武本線〜成田線〜鹿島線直通の臨時列車「カシマスタジアム号」や東海道線〜伊東線直通の臨時快速列車、そして大きな注目を集めた東北新幹線に臨時「やまびこ号」として深夜帯に運行するなどといった大規模なもので、鉄道ファン層以外からも注目された発表となっていました。
しかしながら、7月8日に東京都を対象に緊急事態宣言が発令され、1都3県の会場については無観客の開催が決定されました。翌9日に「東京2020オリンピック期間中における臨時列車の運転取りやめについて」(PDF)としてまずは終電繰り下げが取り止められました。
その後は福島や北海道が無観客開催=宮城・静岡のみが有観客での開催となり、13日には「東京2020オリンピック期間中における臨時列車の運転計画について」(PDF)として、仙台エリアと伊東線の臨時快速を除いてほとんどの臨時列車の設定が取りやめられることとなりました(福島向けの「やまびこ」「つばさ」のみ維持・仙台から東京への「やまびこ」は取りやめ)。
一般的な季節の臨時列車と異なる運転体系が組まれている路線が多く、残念がる声も多く聞かれました。
東京近郊区間では唯一の生き残り
今回運行された列車は、小田原12:30発→熱海12:49着,12:52発→伊東13:16着(9541M)の下り列車と、伊東19:04発→熱海19:28着,19:33発→小田原19:52着(9544M)の上り列車の合計1往復です。競技スケジュールにあわせた2021年7月26日・27日の2日間のみの運行です。
先述のようにほとんどの列車が取りやめとなっているものの、自転車競技が行われる伊豆MTBコース(静岡県伊豆市)については有観客となったため、神奈川県西部のみですがJR東日本の首都圏エリアを走る臨時列車が運行されることとなりました(このほか、JR東海管内の御殿場線でも増発・増結対応がされており、神奈川県の増発列車がある)。
途中の停車駅は熱海駅のみと、同区間を走行する特急踊り子号に準じたものとされています。
ダイヤ面では、下り列車は踊り子11号(かつての“我孫子踊り子”)・上り列車は踊り子58号のダイヤをトレースしている格好です。そのため、下り列車では根府川駅で先行する定期列車の追い越しも行われています。
会場輸送という列車の使途から、途中停車駅での乗降を意識することなく設定されたことが推測できます。この設定目的であれば、単線区間がほとんどの伊東線を走行する列車として、特急車両のダイヤをそのまま活用することが最適解だったことが分かります。
一方で、使用車両についてはE231系(またはE233系)10両編成とされており、輸送力を担保しています。
これらの状況から、一般タイプの車両が特急のダイヤで走行する珍しい設定となったものと見られます。一般形車両とされている遠距離列車は、運行されなかったものの「カシマスタジアム号」も同様です。
伊東線では早朝・夕方以降にE231系・E233系10両編成を使用した東海道線方面直通の定期列車が運行されているものの、日中時間帯には運行されていません。
日中時間帯には年に数回、5両付属編成が訓練のため伊東駅に訪れることがありますが、旅客が乗車できる機会はありません。
乗客目線で記すとすれば「スーパービュー踊り子号」が無くなった今、日中の明るい時間帯に二階から景色を見下ろせる……という意味では、希少性は高そうです。
伊東駅から先の伊豆急行線では例年2月〜3月の河津桜まつり開催期間中に無料快速列車を運行していますが、伊東線では久しく運行されていません。
快速列車自体が2020年に運行を終了した「伊豆クレイル号」以来で、無料のものでは215系を使用した快速「ビュー鎌倉号」が伊東→横須賀・大船→伊東で運行されたことがありましたが、これ以来でしょうか。
また東海道線内についても、快速アクティーや過去の湘南新宿ライン特別快速の延長運転も含め、E231系で小田原以西の通過運転は特異な設定です。
車両運用面では、高崎発小田原行きの上野東京ライン定期列車(1857E・小田原12:10着)の使用車両をそのまま充てています。この運用はその後が全て定期回送となっており、他の編成・運用を巻き込むことも、予備の車両を使用することもせず非常に綺麗な設定となっています。
なお、往路で使用されたK-15編成は伊東駅電留線への留置・上り列車へ充当とはならず、回9542Mとして伊東線を回送列車として熱海方面へ向かっています。
関連記事
注釈:本記事は、観客輸送のために運行された列車について報じることを目的として執筆しています。
コメント