JR東日本では、機関車牽引列車の効率化などを目的に、レール輸送用のキヤE195系の製造を急ピッチで進めています。こちらは既にJR東日本管内各地で乗務員訓練が進められています。
残される格好のバラスト輸送用の専用車両は登場していませんが、2020年9月15日にバラスト輸送用の貨車・ホキ800形の廃車配給輸送(いわゆる廃車回送)が尾久車両センターから長野総合車両センターへ向けて実施されました。
今後のバラスト輸送の展開を考えます。
国鉄時代の拠点をベースに運用されるも削減が続く
線路保守を目的とした、レール・バラストなどの“工事用臨時列車”とその貨車は、国鉄分割民営化の際に線路を保有する旅客会社に継承されることとなりました。
これにより各社の方針で運転体系が少しずつ変化していますが、このうちJR東日本では概ね国鉄時代からのレール・バラストの拠点駅・輸送方法に大きな変化はなく、国鉄時代の拠点駅から管内に発送する方法を続けていました。
2003年には真鶴での積込を廃止して、東京支社・大宮支社・横浜支社のバラスト輸送拠点を宇都宮に集約する動きがありましたが、それ以外は拠点の変更などはありません。
その後は水面下でトラックでの輸送機会が増加して見かける機会が徐々に減っていましたが、2018年には八王子支社が完全にトラック輸送に転換。比較的運行頻度が多かった中央本線では見かける機会が無くなってしまいました。
首都圏のバラスト輸送の分担と変化
北局→大宮支社・東京支社北側:宇都宮
南局→横浜支社・東京支社南側:真鶴→2003年に真鶴積込廃止・宇都宮へ
西局→八王子支社:初狩→2018年に初狩積込廃止で全車除籍
千葉局→千葉支社:新小岩
水戸局→水戸支社:西金
高崎局→高崎支社:高崎(小野上常駐)
上記の画像は2008年11月2日に同様の経路で廃車配給輸送を実施した際のものです。この際も宇都宮常備車両の廃車となっています。中央線内で頻繁に見られる組み合わせゆえ、わざわざ都心部で撮影した記憶があります。
余談ですが、この写真は今は亡きEF64 39号機の牽引で実施されたものです。この頃は高崎に4機(36〜39号機)・長野に2機(41,42号機)にEF64形0番台が配属され、中央本線・篠ノ井線・大糸線のレール・バラスト輸送を中心に活躍していましたが、こちらもブルートレイン廃止による機関車の使用機会の減少で、37号機を残して置き換えられています。
これらの動きはその後も続いており、先述の八王子支社のほか、高崎支社管内を担う小野上常駐ホキも2019年7月4日に7両が廃車されて半減しています。
積車(荷物を積んだ状態)での運転機会自体が大幅に減少しており、特に宇都宮常駐については、車両の維持のために毎週水曜日に尾久〜宇都宮を往復する配給列車が定期的に運転されている程度となっていました。
今回の廃車は宇都宮ベースの貨車
今回配給輸送されているホキ800形は、尾久車両センター所属・宇都宮貨物ターミナル常駐となっていた9両です。配9441列車の連結順に、ホキ1467+ホキ1378+ホキ1463+ホキ1143+ホキ1547+ホキ1156+ホキ1473+ホキ1546+ホキ1730となります。
大宮支社管内のほか、東京支社・横浜支社管内でも活躍していました。
毎週水曜日の午前中に宇都宮貨物ターミナルから尾久車両センターへ・夕方には尾久車両センターから宇都宮貨物ターミナルへ車両の入れ替えを兼ねた配給輸送が続けられていましたが、2020年夏から設定されない週が発生しています。
EF64 37号機がレール輸送・1052号機が交番検査だったためか、長岡車両センターから1051号機を持ってきての充当となっています。中央線の入線自体が珍しい機関車だったこと、中央線では既にバラスト輸送が廃止されていることから、沿線には多くのファンの姿が見られました。
拙い画角で恐縮ですが、こちらは宇都宮のホキが運用されていた頃の写真です。
2009年9月6日の大宮駅3番線ですが、撮った記憶すらないくらい、当時は日常的に走行シーンを見ることができました。
尾久車両センターには45両の配置がありましたので、まだ30両以上が在籍している格好となります。
しかしながら、今回の廃車には2020年1月に検査を通過したばかりの車両も含まれており、用途廃止……という色合いが強そうです。
機関車牽引の工臨列車消滅はまもなくか
明確な代替車両こそ登場していませんが、宇都宮貨物ターミナル常駐のホキ800形の定例配給もなくなり、いよいよ首都圏ではバラスト輸送を見る機会が大幅に減少しています。
もはや時間の問題となっており、既に全車引退が宣告されているレール輸送貨車に加え、ホキ800形についても順次廃車が進められると考えて差し支えがなさそうです。
長年に渡り人気の熱い国鉄型電気機関車牽引の列車ですが、寝台特急や貨物牽引機の被写体が多かった頃に比べると、注目度が急上昇している印象が強い工臨列車。
2008年春のJR東海から機関車が消えたあの日のように、最後まで後悔なく記録をしておきたいところです。
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