『黒磯訓練』と通称される、一般の方には目を向けられない客車列車が宇都宮線を時折走行しているのはご存知でしょうか。
撮り鉄の皆様を中心に大人気のこの列車、密かに走り続けて10年近くが経過する長寿列車になっています。
絶滅寸前の機関車牽引列車を見ることができるこの列車の歴史・背景、そして気になる運転日や時刻についてまとめてみました。
黎明期は顔ぶれも豪華!? 様々な編成で活躍
「黒磯乗務員訓練」「黒磯ハンドル訓練」「黒磯転換訓練」などファンからは様々な呼称がされるこの列車。
JR東日本で電車の運転士の一部に電気機関車の運転を担ってもらう(免許自体は同じだが、操縦が大きく異なる)ために設定されており、尾久車両センターと宇都宮線・黒磯駅の間を1往復する行程になっています。
運転の訓練のための列車ですので、一般旅客が乗車することはできません。
しかしながら、今や全国的に見ても非常に珍しい機関車牽引の客車列車が時折走るということで、年々ファンからの注目度が上がっている列車です。
この列車の登場経緯は電気機関車運転士の養成で、少なくとも2009年4月ごろから10年以上に渡って不定期で設定されています。
過去には、2007年(平成19年)3月までは平日日中に”試客”と通称されていた尾久車両センター〜高崎駅に何十年も設定されていた定期列車=試6991列車〜試6992列車が存在していました。
客車の定期検査入場回送と定期検査出場車両の試運転を行うという設定背景は現在も健在であり、この“試客”の実質的な後継と言える列車です。
編成を彩ってきた豪華な客車たち
24系寝台車
言わずと知れた”ブルートレイン”の余剰車をつなげて走らせていたのがこの列車の始まりです。
6両連結されていることが多かったですが、本業である”北斗星”の予備車を活用していたため、両数は4〜5両に減らされることもしばしば存在したほか、少数ながら7両編成で走行した例も。
開放B寝台のオハネフ24,25・オハネ25が中心の編成構成でしたが、北斗星の個室車両も編成に組まれることもしばしばありました。
特に、寝台特急北斗星号が1往復化して用途がなかった全室ロビーカー=オハ25-503や異端の個室車オロネ24-501が組み込まれることが多く、編成に彩を加えていました。
日によって編成が異なるという点は”試客”に通じるところもありますね。
(当時は、北斗星定期運用編成2編成分+予備1編成分+開放B寝台や電源車が予備数両+オロネ24-501という配置でした)
14系寝台車
こちらは単独での使用実績はないものの、寝台特急”北陸”で使用されていたスハネフ14が上記編成に加わって、7両編成で走行した例がありました。検査明けの試運転だった模様です。
E26系寝台車
札幌向けの豪華寝台特急”カシオペア”の為に製造されたこの客車。
黒磯訓練開始直後は、寝台特急”カシオペア”の運転日ではない少ない休みに極まれに使用されて話題を集めていました。
北海道新幹線開通以降、クルーズ・ツアー形式の団体臨時列車で活用されていますが、その合間に登板しています。
今や尾久車両センター所属の営業用客車はこれが唯一ですので、登板頻度もかなり高くなりましたね。
幻の電源車・カニ27-501
カシオペア号が現役第一線で活躍していた頃、ラウンジカー兼電源車として製造されたカハフE2*-*の予備車両としてカニ24-511から改造して生まれた予備の電源車です。
24系電源車そのままのボディにカシオペア塗装を施したほか、編成内は密着連結器のE26系に合わせて貫通側が密着連結器に改装されています。
現役時代は乗り鉄のハズレ枠・撮り鉄の当たり枠でしたのでご存知の方も多いでしょうか。
彼も今だに現役であり、クルーズ・ツアー形式の団体臨時列車には登板していないものの、故障時に備えて配置されています。
黒磯訓練で頻繁に使用されていますが、客車1両という編成で少し人気が落ちてしまう印象ですね。
ただ、ごく稀にE26系と組み合わせた本来の用途で組成されて黒磯訓練に活用されることもあり、往年のイレギュラー編成の面影を見られるチャンスもあります(後述の動画)。
12系高崎車
ここまで全て尾久車両センター所属車両ですが、2010年に高崎車両センターでSL列車を中心に活躍する12系客車を使用した例が存在します。
更に、先述の24系4両と組み合わせて9両編成という長大編成で運転した例も(サムネイル画像)存在します。
EF510形の訓練のため、そのまま東北方面にも又貸しされていました。
この頃はちょうど旧型客車がリニューアルを施工した直後ということもあり、運用がなかったことが背景かと思われます。
数少ない現役客車ですので、今後の再登板に期待したいですね。
ファンの目当てはやはり牽引機!時期とともに変化
EF81形
交流・直流双方に対応している万能さから、JR東日本で重用されている電気機関車です。
この黒磯訓練でもポピュラーな機関車で、黒磯訓練開始時から頻繁に使用されています。
元お召し列車牽引機の81号機や、”虹釜”の愛称もある元スーパーエクスプレスレインボー牽引機の95号機を中心に多くのファンが存在します。
ここ10年で配置数を大幅に減らしているものの、81号機のローズピンク復元などの明るい話題もありました。
EF81 139号機
田端運転所のEF81形は寝台特急が残っていた黒磯訓練開始当初から時折登板していましたが、特異な経歴を持つのが139号機です。
寝台特急”あけぼの”で使用されるために長らく青森車両センターに配置されていた139号機ですが、同列車の合間で電車等の配給輸送を担うために双頭連結器(機関車列車の自動連結器と電車の密着連結器を切り替えられる)装備改造をしていました。
この機能を買われ、あけぼの号廃止・北海道新幹線開通に伴う青森車両センター無配置化の余波で田端運転所に転入しています。
先述のカニ27-501を単独で牽引すると、片道は通常の機関車では連結出来なくなってしまうため、この客車で訓練する時は上野側をこの機関車が専属で担当しており、最近ではおなじみの存在です。
EF65形1000番台
東海道ブルートレインを中心に活躍していたEF65 PF形ですが、現在も大幅に数を減らしながらも田端運転所に配置されています。
機器配置や運転特性などがEF81形と異なる点もあるのが理由かと思われますが、時折EF65形も黒磯訓練に登板しています。
EF81形に比べると充当回数が少ないことと、最近の被牽引車両であるカシオペア号、現役時代から現在まであまり多くはない組み合わせであり人気度も高いですね。
EF510形
短命に終わったJR東日本の新製機関車・EF510形500番台ですが、関東地区の乗務員訓練はこの黒磯訓練で行われていました。
ちょうど12系客車が訓練に加わっていた時期でもあり、24系のみの日・12系5両の日、そして12系と24系が混結された日など様々な組み合わせで運転されていました。
デビュー前の走行シーンということで、多くのファンが駆けつけていたため、写真を見かけたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
この頃は、EF81形の黒磯訓練も継続されていたほか、まだまだ残存していた高崎線方面のブルートレイン・引退間際のEF81形牽引の”北斗星”・”カシオペア”など、機関車ファンには話題が尽きない時期でした。
EF510形の営業運転開始以降も新たに機関車牽引を担当する乗務員養成のために時折登板していました。
EF64形1000番台
かつてはEF64形もこの黒磯訓練に充当された経歴を持っています。
寝台特急”あけぼの”が現役だった頃、早朝上京してきた牽引機の間合い運用として充当されており、2013年9月・10月に集中的に使用されました。
峠越えが主目的の直流電気機関車であるEF64形が宇都宮線を走る機会は滅多にありませんので、珍しい列車となりました(JR貨物のEF64-1000の宇都宮線運用が当時は少しだけ設定されていました)。
10回以上使用されたものの、それ以降は一切登板していないためか、あまり知られていません。
配給輸送や工臨列車で今だに活躍の場が多い機関車ですが、今後の登板に期待したいですね。
機関車牽引列車が減少しているのに続けている理由は?
JR東日本では、団塊世代の定年退職が多く続いており、寝台特急運行時代からの機関車牽引列車を担当できる乗務員の退職が背景に存在します。
各組合が発表している資料を総合すると、工事用臨時列車のディーゼルカーを進める一方で、今後も機関車の運転が出来る乗務員を育てていくとしています。
黒磯訓練に出会う方法は?運転時刻は?
JR東日本の業務用列車のため、その明細な時刻は明かされていません。
しかしながら、10年以上設定が行われていること、近年のSNSの発展でおおよその運転時刻が判明してしまっているのはドクターイエローなどと同様ですね。
まず運転日ですが、当日朝の尾久駅でそれらしい編成が組まれていればその日の運転はほぼ確実でしょう。
ドクターイエローが10日に1回と考えると、それに比べると不規則・頻度も低いですが、近隣の方なら見にいく価値はありそうです。
土休日に運転されることもたまにありますが、過去の設定を遡ると多くは平日に設定されています。
そして、運転時刻ですが、最後までお読みいただいた方のために、目撃情報や私の経験から算出したおおよその時刻を掲載します。
但し、ダイヤ改正ごとに時刻変更が行われ、数十分単位で変更が加えられているようです。
時刻については独自に算出したものとなりますので、JR東日本関係各所にお問い合わせはくれぐれもしないようにお願いします。
また、当サイトではイーストアイ・小田急の検測車テクノインスペクターについては運転日予想を掲載していますが、この列車については事前に推測する根拠が現時点で存在しないため非掲載とさせていただいております。
暫定版です。過去の撮影データと照らして、2019年度の細部の時刻変更を後ほど反映・修正します。
【下り】試9501列車・試9581列車
前者が多くの日に使用される所定時刻ですが、最近では”遅スジ”と通称される後者の使用頻度が増えている印象です。
カヤ27-501使用のプッシュプルの場合は後者が多いですが、明確な関連性は不明です。
各社の乗務員訓練の多くは、乗務員数に余裕がある朝ラッシュ終了後に設定されますので、その行路の関係がありそうですね。
駅 | 試9501列車 | 試9581列車 |
尾久 | 9:16ごろ | 10:15ごろ |
赤羽 | 10:20ごろ | |
浦和 | 10:29ごろ | |
大宮 | 9:37-38ごろ | 10:35-37ごろ |
蓮田 | 10:47-49ごろ | |
小山 | 11:30-32ごろ | |
小金井 | 10:32-35ごろ | 11:38ごろ |
宇都宮 | 11:07-08ごろ | 12:00-02ごろ |
矢板 | 12:31-33ごろ | |
黒磯 | 11:58ごろ | 12:55ごろ |
【上り】試9502列車・試9582列車
前者の時刻で下った日は上りも前者の時刻、後者の時刻で下った日は上りも後者の時刻、と規則が非常にシンプルです。
折り返しで乗務員の休憩を確保する必要があるためか、時刻上は試9581レ〜試9502レといった運転が可能ですが、実施された例は皆無です。
駅 | 試9502列車 | 試9582列車 |
黒磯 | 13:12ごろ | 14:15ごろ |
宇都宮 | 14:05-10ごろ | 15:02ごろ |
小金井 | 14:30-32ごろ | 15:28ごろ |
小山 | 14:39ごろ | 15:35-37ごろ |
蓮田 | 15:19-36ごろ | 16:16-18ごろ |
大宮 | 15:47ごろ | 16:26-28ごろ |
尾久 | 16:17ごろ | 16:48ごろ |
上野 | 16:24〜?ごろ | 16:55〜17:11ごろ(13) 四季島運転日(15) |
尾久 | ? 推試9552列車? | 17:20ごろ (推)試9582列車? |
動画資料集
YouTubeチャンネル【鉄道ファンの待合室資料館】にてこの列車についての動画を公開しています。
あまり鉄道に詳しくない親御さんが子どもを連れて……におすすめな大宮駅・さいたま新都心駅と、撮り鉄から絶大な人気を誇る蒲須坂の撮影地の走行シーンの動画を用意しています。
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