9月11日、「びわこ号」塗装になった京阪600形603編成が石山坂本線内で試運転をしました。今後4年間は「びわこ号」塗装で活躍します。今回は京阪ファンの中で反響が大きい600形603編成「びわこ号」をレポートします。
「びわこ号」とは?
今回の塗装変更の元ネタとなった「びわこ号」は1934年にデビューした60形の愛称です。60形は路線条件がまったく異なる天満橋駅~浜大津駅(現びわ湖浜大津駅)間の直通運転を目指すべく開発されました。
前面は当時、流行していた流線形を採用。急曲線に対応するために全国初となる連接構造を導入しました。また路面区間も走行することから、高床・低床対応の2種類の側面扉やパンタグラフ・トロリーポールを設置するなど、現代では見られないユニークな列車に仕上がりました。デビュー時の塗装はレモンイエローに黄土色系・グレー系の配色です。
1934年のデビュー当初から天満橋駅~浜大津駅間で直通運転を開始し、「びわこ特急」という名で大活躍しました。しかし昭和30年代に入ると、京阪本線のスピード化・長編成化に対応できず、活躍の場が狭まりました。運転区間も天満橋駅~浜大津駅間から枚方公園駅・伏見稲荷駅~大津線内(京津線・石山坂本線)間の臨時急行に変化しています。
乗り入れ末期に運行された浜大津発枚方公園行き「きく号」は浜大津駅から枚方公園駅まで68分を要し、三条駅から枚方公園駅までノンストップでした。
1960年代に京阪本線が淀屋橋駅への延伸を果たすと、60形は当時の京津線高床車の標準色である京阪特急色となり、大津線専用車両となりました。1970年に廃車となりましたが、1980年には開業70周年記念事業のひとつとして復元され、ひらかたパークに保存されていました。
現在は寝屋川車両基地で保存され、2008年には経済産業省から「近代化産業遺産」に認定されました。寝屋川車両基地で行われるイベント「ファミリーレールフェア」で60形の外見や車内を見学できます。
なお復元塗装となった600形603編成は過去1度も「びわこ号」塗装にはなったことがありません。それどころか、600形は1980年代に製造された車両ですので、60形と現役時代は被っていません。
レトロな雰囲気を醸し出す「びわこ号」塗装
「びわこ号」塗装となった600形603編成は石山坂本線で活躍していますが、私が訪れた日の昼間は錦織(にしごおり)車庫で休んでいました。平日の日中時間帯は石山坂本線に所属している車両のうち約半数が運用に就きます。緑系統の京阪電車あってレモンイエロー・グレー系の塗装は目立つはずですが、不思議となじんでいます。
600形603編成は近江神宮前駅14時44分発石山寺行きから午後の運用に就きました。沿線住民もスマホで撮影するなど、ファン層以外からも注目度は高いように感じられました。
前面には60形「びわこ号」が描かれたオリジナルヘッドマークが掲出されています。掲出期間は2020年9月14日~2021年3月31日までです。
車端部には「こわび」とあり芸の細かさを感じます。もちろんこれは60形を再現しており、60形車内には「こわび」と書かれたプレートもあります。
「びわこ号」塗装となった600形603編成は今後4年間にわたって石山坂本線で運行されますが限定運用ではありません。
ところで錦織車庫には1997年の京津線一部区間廃止まで活躍した80形のカットモデルがあります。こちらは敷地外から撮影可能です。
企画乗車券「京阪電車 びわこ号色塗装記念大津線フリーチケット」の発売
京阪電気鉄道では「びわこ号」塗装車両の運行を記念して、9月13日から2021年3月31日まで企画乗車券「京阪電車 びわこ号色塗装記念大津線フリーチケット」を販売します。
切符は2枚セットなっており、それぞれ60形「びわこ号」の写真があります。この企画切符は石山坂本線と京津線で利用できますが、京津線電車が乗り入れる京都市営地下鉄東西線では利用できないのでご注意ください。大人のみで2枚セット、発売額は1400円です。発売枚数は1000枚となっており、発売場所はびわ湖浜大津駅のみです。
大津線では大津線オリジナルカラーで有名な800系旧塗装や少し前の京阪電車を思い出させる600形・700形の旧塗装といった注目車両が走っています。これらの旧塗装車両も2021年3月にはすべて新塗装に切り替わります。「びわこ号」塗装車と合わせて撮影することをおすすめします。
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