先日、西武鉄道から新型特急が甲種輸送され、本日報道発表があり、愛称がLaviewと発表されました。
今回は、報道発表されたデータを基に、西武鉄道の思惑を分析していきたいと思います。
西武鉄道新型特急発表まで
西武鉄道から新型特急の導入が発表されたのはのことです。
画期的なイメージ画像が大きく話題となりました。
本日の報道発表では、愛称がLaviewと発表されたほか、独創的なインテリアデザインについても発表がなされています。
今回製造された日立製作所からの甲種輸送では、このイメージがどこまで具現化しているか、多くのファンの注目を集めていました。
車体が透明であったり、車体自体が球体であったりということはありませんでしたが、前面の球体形状や、とてつもなく大きな側面ガラスなど、とても画期的な車両となりました。
前面の球面状のガラスは国内初の曲線半径1500mmの三次元曲面ガラスだそうです。
女性専用トイレ・Wi-Fi設置・電源コンセントの設置など、近年の鉄道車両の標準装備もばっちりです。
形式の001系は「次の100年に向けた出発点の車両」として100年を逆から表した001が採用されていて、00には∞=無限という意味も込められています。
Laviewは
L=贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間
a=矢(Arrow)のような速達性
view=大きな窓から移り行く眺望(View)
という意味が込められています。
運賃についても発表があり、現行のちちぶ・むさしと同額とされています。
置き換え対象の今後は?
今回投入される新型特急は、8両×7編成となっています。
一方、現在活躍している西武鉄道のNRA=ニューレッドアロー・10000系は7両×12編成となっています。
これは、西武池袋線・秩父線系統の「ちちぶ」「むさし」に使用されている7編成が置き換え対象で、西武新宿線系統で使用されている「小江戸」については現時点で置き換えについて触れられていないことに起因します。
10101 | 南入曽 |
10102 | 小手指 |
10103 | 小手指 |
10104 | 南入曽 |
10105 | 小手指 |
10106 | 南入曽 |
10107 | 小手指 |
10108 | 南入曽 |
10109 | 小手指 |
10110 | 小手指 |
10111 | 小手指 |
10112 | 南入曽 |
10112編成はVVVFインバーター制御など、西武20000系世代の増備車なので、このほか4編成が引き続き西武新宿線系統に残存するものと思われます。
西武鉄道は池袋線・新宿線系統間での転属はよく行われていることから、必ずしも現在新宿線系統の編成が長生きするとも限らず、状態のいい編成が5編成(予備車を共通で持っていたので、6編成)の残存が見込まれます。
報道発表から読み解く西武鉄道の思惑
やはり多くのファンが気になるところとして、前面に貫通扉が設置されていることでしょう。
これについては、設計上は地下鉄に乗り入れられる構造となっているが、現時点では運用しないという発表がされています。
しかし、西武鉄道の在来車としては、特急は7両編成でした。
8両編成で製造されたのは、副都心線・東横線で実績のある両数という観点があるものと思慮されます。
ホームドアには乗務員室ドア用の出入り口がある都合や、ATO装置が8両・10両のみの対応である以上、これらの新設となると初期費用がかかります。
既にATO装置類が床下機器に搭載されていることから、現時点では、と発表しているものの、数年以内には営業運転をする目論見があるのではないかと推察できます。
また、ホームドア対応が全部のドアではないようにも思えます。
これについては資料がまだ少ないので、追加情報に期待です。
地下鉄に導入する場合の運用線区・運用はどうなる?
現在、S-TRAINが、平日は豊洲~小手指方面、休日は元町・中華街~西武秩父として運用されています。
S-TRAINの副都心線・東急東横線への導入が、新型特急の利用者動向をつかむための試金石だという声もありましたが、これが西武鉄道の本音なのではないでしょうか。
小田急的な名称を付けるとすれば「メトロちちぶ」を週末1往復、現在のS-TRAINのダイヤで運行したい、といったところでしょう。
少なくとも、現在の7編成という投入数は、既存車の置き換えにしかならない本数であることから、毎時〇本といった形態ではないことは明らかです。
ただ、この際のS-TRAIN 40000系の処遇については疑問が残ります。
残される小江戸をS-TRAINとして安く提供するにも10両編成は過剰ですし、池袋線系統で使うにも特急車とのサービス格差が大きすぎます。
また、現状の長距離輸送に40000系が適任かといえば異なりますし、運賃面なら特急車の方が圧倒的に有利です。
先行事例~小田急ロマンスカーに学ぶ
今でこそ、メトロはこね号、メトロホームウェイ号などは大活躍していますが、当初はなかなかの苦戦をしていました。
投入編成数もMSE1次車最小限、週末は短絡線を経由して新木場方面行き「ベイリゾート号」としても運転されていました。
ベイリゾート号は数年のうちに見る影もなくなってしまい、多くのファンからは「有楽町線ホームドア設置の影響」とされています。
しかしながら、こちらは小田急の実験的運行で、いい成果が出なかったからだと考えています。
そもそも、MSEは将来的なホームドア設置の際、一部ドアがホームドアに対応するという前提で設計されており、もしも大人気であったなら現在でも維持していたことでしょう。
乗務員繰りなどの手間もある以上、そこまでの成果が出せなかったのではないかと推測されます。
小田急さん的には、「やっぱり箱根行きの需要に専念すべきだよね!」という結論に至ったのでしょうけれども、新たな需要にチャレンジした姿勢はとても好印象でした。
また、西武鉄道自身もS-TRAIN運行当初は利用者の少なさで悪い意味で話題となってしまったことも記憶に新しいです。
2編成のみの導入、3時間に1本というあまりにも使いにくいダイヤで、固定客を獲得できませんでした。
すぐに増備車を納車し、晴れて高頻度で運行するようになって乗車率を確保しています。
大々的に運行を開始して定着させた例としては、東武東上線のTJライナーや、京阪電車のPREMIUM CARが挙げられます。
これらの特徴は、運行当初から気軽に使える本数の多さが特徴でした。
この法則は単純ながら、初期投資という大きなリスクを抱えるのも事実です。
新快速のA SEATはわずか2両のみとなっていますし、西武鉄道の40000系も当初は2編成のみでした。
初期投資を渋るとあまり成功していない傾向にありますが(セントラルライナー……)、これも企業である以上は仕方のないことでしょう。
初期投資を渋って運行開始前から心配の声しか聞こえないA SEATの記事はこちら
まとめ
今回の発表内容を考察すると、Laviewは当面の間(少なくとも7編成の投入が完了する2019年度末)は地下鉄運用をしないことが推測できます。
S-TRAINの現状も、週末の運行についてはまだまだ定着していないのが本音でしょう(長期休暇などでは満席だったようですが)。
西武鉄道のフラッグシップが話題だけで終わらないよう、今後の動きに期待です。
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