製造からわずか21年。
名鉄ファンの中でもデザイン性の高さで人気の1700系に置き換えの動きが進んでいます。
昨年末に代替となる特別車が落成していましたが、2月23日から24日にかけて1703F,1704Fの特別車が機関車牽引にて廃車回送を実施しています。
全車特別車・名鉄1600系として登場
現在は6両編成・一部特別車で運行される1700系ですが、登場時は3両編成・全車特別車の車両として登場しており、形式名も1600系として1999年に登場しています。
パノラマDX同様に3両編成の全車特別車構成を継承して、兄貴分の1000系・1200系同様の「パノラマSuper」の愛称が付与されていますが、7000系から続く前面展望席を廃した点が大きな特徴でした。
3両固定編成で製造されており、3両編成または6両編成で運用されていました。
特急運行体系変更で大改造
中部国際空港開港を前にした2005年1月の空港線開業に伴うダイヤ改正で、1600系は早くも不遇な時期を迎えることとなります。
1600系開発の時点で空港アクセス特急として使用することを想定に入れていたものの、新造する2000系と一部特別車編成の運用とされることとなり、1600系は繁忙期に稀に乗り入れる程度の存在になってしまいました。
その後も西尾線特急などで活躍していたものの、2008年改正で全車特別車はミュースカイのみとされることとなり、1600系はわずか9年で全車特別車としての使命を終える形になりました。
運用を離脱した1600系ですが、3両編成のうち先頭付随車を外した2両が新造された2300系一般車4両とペアを組み、1700系-2300系の6両編成に改められました。
この製造には9年の若さで余剰車となってしまった先頭車の部品が多数流用されているほか、中間車サ1650のパンタグラフも移設されており、一般車にも1600系のDNAが少しだけ継承されました。
特別車の内装面については、自動販売機撤去・荷物棚設置などの最小限の改造が施されましたが、登場時の雰囲気を継承しています。
改造にあわせて方向転換がされたほか、カラーリングも2200系に準じたものに変更されました。
2200系譲りのブラックフェイスとなり、当時はファンを驚かせました。
改造を終えて以降は2200系に混ざって営業運転で活用されており、空港線での定期運用も姿を変えて見られるようになりました。
最近では名鉄車両全体でカラーリング変更の動きがあり、この2200系譲りのブラックフェイスから1600系時代に近いデザインへ再変更となり、他形式とは異なりファンからも概ね好評でした。
名鉄車両では非常に珍しい「前パン」(先頭車の運転台側にパンタグラフがある車両)・1600系時代からのつり目形状のライトなど、外観の良さを上げるファンも多い人気車両です。
当面の活躍が期待されていたが……
塗装変更・行先表示器のフルカラーLED化など、現役車両の1つとして今後も活躍するかと思われていた矢先、2019年に大きな転機が訪れます。
昨年秋頃から2230番台を付与された特別車が製造されている姿がファンから目撃され、名鉄ファンから一躍脚光を浴びました。
2300系30番台の一般車を製造する際には、廃車となった先頭車から部品流用が多くされていましたが、運用時期を考えるとこちらは純粋な新造車となっている模様です。
2019年末に輸送されてきた特別車4両は、1700系の特別車に代わって2330番台一般車とともに新たな編成を組み、既に営業運転入りとなっています。
置き換えについてのアナウンスは現在まで一切ありませんが、名鉄ファンの方々で噂されている点として、相方となっていた2330番台との相性の悪さが挙げられます。
私自身も1700系に乗車したことは何度かありますが、発車時の押される感覚が気になりました。
登場経緯を振り返ればお分かりいただけるかと思いますが、1M2Tでの運用を基に設計されており、ギア比の違いもあります。
併結に際して、過剰出力となる1700系側のソフトウェアを2200系に合わせたものへ修正しているものの、ギア比を中心とした元の設計を生かしたゆえに加速特性は大きく異なりました。
3M3Tで運用する2200系の一般車設計そのままの2300系側と根本的な設計構想が異なるため、この辺りの衝動の強さは運転士さんのスキルでなんとか出来る問題ではなかったようです。
このほか、空調操作なども特別車側・一般車側で個別操作が必要などの取り扱い上のややこしさや、先頭車体長が長いために将来的なホームドアへの干渉を挙げる声もあります。
とはいえ、改造前に9年・改造後に12年という運用期間の短さはやはり異例と言えるでしょう。
結果論ではありますが、ギア比などの走行機器類を2200系側に揃えておけばこんなことにはならなかったのでは……?直系の後輩であった2000系ミュースカイ3両編成との併結対応改造にしておけばもう少し使いやすかったのでは……?など、残念がる声は大きいですね。
名古屋近郊では、最近の短命車両として名古屋市交通局の3050形3159Hの例(関連記事)がありますが、目先の投資を削って残念な車両を生み出すのは名古屋人らしい……という地元ファンの声が印象的でした。
ただし、2300系製造段階で2200系との番号重複を避けるために30番台を付与されていたことを考えると、ある程度使い倒したら廃車とする……という予定通りだった可能性もあります。
最近はさよならイベント・デビューイベントなどを一切やらない名古屋鉄道からこの辺りのこぼれ話が出てくる可能性は低く、ファンの間での推測が飛び交っているうちに運行終了となりそうです。
また、1700系は片方向の運転台しかなく、今回の輸送にあわせてスカートを焼き切る形で撤去をしていることを考えれば、地方私鉄などへの譲渡なども期待できません。
名鉄の短命車両として有名なキハ8500系気動車が現在も海外で活躍できていることも考えると、とことん不憫な車両となってしまいました。
形式消滅は時間の問題か
以上の動き・置き換えの背景を考えれば、現在も活躍している1701F,1702Fについての置き換えも時間の問題と言えるでしょう。
1704Fの運用離脱が2230系代替車が登場する前に行われていますので、代替の特別車が登場する前に運用離脱が再開される可能性もありそうです。
元々数が少ない車両な上に半数が離脱しているほか、特別車側を撮らないと分かりにくいという編成構成など、写真撮影をする難易度は上がっています。
乗車をする場合にも、パノラマSuperの展望席有無のような目立つ違いがないため、狙って乗るのは少し難しい車両です。
遠方から1700系に乗車したい場合は、10時〜16時であればふらっと特別車を使える「まる乗り1DAYフリーきっぷ」を買って探し回るのが現実的でしょうか。
パノラマSuperを名乗っていた彼らがここまで短命に終わるとは思いませんでしたが、従来の前面展望設計を捨てた1600系の開発コンセプトは、車体断面や運用体系などで2000系ミュースカイ・2200系の様々な点に影響を与えています。
1601F時代に試験搭載していた車体傾斜が2000系で本格採用されたことも知られていますね。
今回の廃車回送を牽引したEL120形2機のミュージックホーンも、1600系からの改造に漏れたク1600の流用品(4両の先頭車から2両の機関車の各エンドに移設)です。
機器流用・組み替え・珍車といった名鉄車両の面白さを現代に伝えるという点でも、名鉄らしい……とも言えるかもしれませんね。
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今回の画像は、フォロワーの三 河 鐵さま(@simakaze50000_2)から許可を頂いて掲載しています。
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