JR東海の次世代新幹線N700S系の試運転が続いていますが、JR東海から営業車での計測実用化が発表され、ドクターイエローの去就が心配されています。
今回発表の技術的進歩をお伝えするとともに、気になるドクターイエローの今後について考えます。
営業車に搭載される新機構とは?
今回発表の新技術としては、既存の営業列車(N700A系)で実用化済の軌道状態監視システムの項目追加のほか、新規開発の電気関係の設備監視を目的とした2つのシステムの実用化が挙げられます。
これらの技術はN700系の量産先行車・Z0→X0編成時代にも試験搭載の実績があり、現在のN700S系確認試験車・J0編成に搭載されているものは実用化予定のものと同等のものと思われます。
特にトロリ線(架線)の計測では、従来ドクターイエローの測定した数値を基に電気部門の担当者を現地に派遣という方法から、複数編成の測定データを統合することで実地での測定を省略化しており、人的コストの削減が見込まれます。
ドクターイエローではパンタグラフを照らすサーチライトが搭載されていて外観上のポイントでしたが、このシステムでは赤外線LED(不可視)でトロリ線の摩擦や高さを計測します。
もう1つのATC信号・軌道カイロ状態監視システムでは、レールに流しているATC信号電流・車両→変電所へ戻る「帰線電流」のデータ取得で、こちらは異常予兆の早期発見が目的とされています。
自分が何気なく乗ったのぞみ号がドクターイエローの代わりとなっている場合があるということになります。
営業車への計測機器設置は九州新幹線のほか、京成電鉄、京急電鉄など複数鉄道事業者で実績こそありますが、営業車で日常的に監視するというスタイルはJR東日本が各路線で設置を進めている線路モニタリング装置に近い発想です。
気になるドクターイエローの去就と搭載編成は?
2020年度から営業車の投入が始まるN700S系ですが、初年度の製造本数はJR東海で12編成としています。
一方で、先述の計測機器設置編成は軌道・電気両方搭載編成が3編成、軌道のみ搭載編成が3編成の6編成体制となります。
そして、搭載機器のスケジュールとして、2021年3月までは搭載機器の運用試験を進めるとしています。
N700S系の営業運転開始は2020年7月としつつ、計測機器搭載編成の営業運転開始は2021年4月という時期の違いから、トップナンバーJ1〜J6編成が夏デビューの運用開始編成として通常仕様、J7〜J12編成が計測機器搭載編成で翌年度デビューとされる可能性が考えられますね。
N700系投入当初の運用開始編成がZ編成5編成・N編成1編成という体制だったことを考えると、初年度から12編成という大量増備の理由はこの計測機器運用試験分でしょうか。
以上の動きを考えると、2020年度の間はドクターイエローの10日に1度の検測体制に変化はなさそうです。
一方で、既存のドクターイエローでの検測車としての運行を廃止するとも維持するとも発表されていません。
少なくとも架線検測の分の運行を減らすことは可能ですが、現在も軌道状態監視システムをN700A系で採用しながら検測頻度は落としていません。
ドクターイエローの1,2,3,6号車が電気検測関係、4号車が軌道検測関係の機器という構成や搭載機器の新技術との互換などを考えると、検測車を持たない=ドクターイエロー次世代車は登場しない可能性も結構高いのではないでしょうか。
少なくとも、架線検測サーチライトを光らせて走ることがなくなるのはほぼ確実となります。
今回の新技術最大のメリットはドクターイエローのデータを基にした実地での測定の省略にあるほか、N700系・N700S系で16両編成の試験車を所有している堅実派のJR東海さんですので、もしも新幹線開業以来の検測車両が廃止となると少し驚きですね。
もしドクターイエローの代替車を製造しない計画なら、元祖幸せの黄色い電車発祥の路線として、営業車の1編成くらい黄色い塗装にして欲しいところですが、京都の景観保護条例の絡みもあるので難しいでしょうか。
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