2019年度冬の臨時列車にて、幻のスーパービュー踊り子6号・11号が約3年ぶり・1日限りの復活となります。
外観は普通なものの、特異な歴史を持ったこの両列車の歴史と見どころをお伝えします。
所以は定期列車
スーパービュー踊り子号の歴史は1990年(平成2年)に始まりますが、最初の2年間は2編成で2運用・3往復を担っており、週1日は185系で代走というダイヤが取られていました。
その後、1992年 (平成4年) から1994年 (平成6年) に定期5往復体制があったほかは、そのほとんどの時期が定期3往復+臨時列車という体制で運用されています。
2007年3月には列車名・付番法則変更とともに踊り子系統の大幅な臨時化などが行われるなど、何度か転機もありましたが、登場時から長い歴史を持つ運転形態の1つに「伊豆急下田駅での滞泊」が挙げられます。
これは朝に新宿方面をスタートした車両が伊豆へ、その後東京駅に戻ったのちに東京駅15:30発の最終下り踊り子号として運用されるもので、翌朝のスーパービュー踊り子始発列車に充てられるという運用体系でした。
翌朝のスーパービュー踊り子2号が伊豆急下田駅を10時ごろと沿線ホテルのチェックアウト時刻に近いほか、地元から東京に向かう需要もある人気の列車であるため、現在まで定期列車の中でも特に乗車率の高い列車として活躍をしています。
その一方で、東京駅を15:30に発車するという時刻は伊豆急下田駅の到着が18時を過ぎており、沿線の旅館で夕食を食べるには遅すぎる時間設定となっていました。
利用客も伊豆半島在住の地元利用者程度だったため、平日の同列車の乗車率は10%を切る数字が続いていました。
そのため、踊り子号が大量に臨時化された流れで臨時列車に格下げをされてしまいました。
スーパービュー踊り子11号は行楽需要を取り込みにくい列車でありながら、臨時化後も頻繁に運転される変わった臨時列車でした。
スーパービュー踊り子6号の時間は人気
利用率が明らかに低かったスーパービュー踊り子11号ですが、この列車が定期列車として・格下げ後も平日・休日ダイヤ問わずに頻繁に運転されていた理由として、スーパービュー踊り子6号の存在が挙げられます。
この列車は伊豆急下田駅に12時過ぎに到着のスーパービュー踊り子3号の折り返し列車でしたが、下田駅発車が12時半ごろ・繁忙期には満席となる時間帯に設定されており、特に東京から東北・上越方面まで帰る遠方からの旅行者に喜ばれる列車として活躍していました。
現在の定期列車のスーパービュー踊り子5号が乗り継ぎ需要で最混雑列車となっているように、上り列車では定期列車の8号と並んで人気の列車でした。
スーパービュー踊り子号では車掌業務の多くを委託業務としている都合から、片道の臨時列車の設定を行わないのが通例となっていましたので、臨時格下げ後も多くの日にこのスーパービュー踊り子6号が運行されていたため、翌朝への送り込みを兼ねた11号についてもガラガラながら設定が続きました。
しかしながら、近年に入って251系の故障が目立つこともあり、走行距離抑制のために臨時列車運用を控える傾向が続いていました。
ここ2〜3年は、この6号のダイヤのみをそのまま生かして185系の踊り子156号が設定されています。
当初は回送で送り込み・全席指定での運行となっていましたが、現在は踊り子103号などの下り臨時列車と組み合わせて運用される機会が増えたほか、波動用編成での運用も定着してきました。
ここ数年は熱海駅→横浜駅を49分で走破するダイヤ設定が特徴的で、同区間の所要時間はサンライズ出雲・瀬戸号や定期スーパービュー踊り子号・マリンエクスプレス踊り子号などを差し置いて、最速のダイヤ設定です(単線の伊豆急線・伊東線のスジが寝ているため、全区間の所要時間はスーパービュー踊り子5号が最速となります)。
幻のスーパービュー踊り子11号が再度設定された理由
以上のように、踊り子156号としての設定により出番が無くなってしまったこの臨時行路。
もはやダイヤが残っていないのではないかという噂さえあったスーパービュー踊り子11号ですが、ここ数年についても、予定臨としてスジだけは残存しており、昨年の臨時特別快速・河津夜桜号などで活用例が少しだけ存在します。
この8011Mのダイヤに大きな需要が生まれる日が一年に一度だけあり、それが今回奇跡の復活を遂げた大晦日です。
定期列車時代・臨時列車時代を振り返っても、ハイシーズンの中でも大晦日だけ突出した乗車率を誇っていました。
初日の出・初詣に向けての需要や、年越しは行楽地で過ごす需要、伊豆出身者の帰省などが重なった結果、普段から空気輸送のこの列車の利用が急増します。
しばらく設定されていませんでしたが、おそらく秋臨以降で毎週末運転のスーパービュー踊り子1号・4号を走行距離調整で185系の臨時列車として余裕が生まれたことにより、思い出したかのように復活を遂げています。
スーパービュー踊り子号は日本レストランエンタプライズ→JR東日本サービスクリエーションへ車掌業務の多くを委託している特殊な列車です。
1990年から一貫してアテンダントの伊豆急下田への越境・外泊行路が設定されていましたが、2018年春の担当営業所移管・同年夏に宿泊行路が廃されているようですので、今回の復活は両社での調整に苦労しているのではないでしょうか。
JR車掌についても池袋電車区→新宿運輸区担当が廃されてから東京車掌区が専門的に担当しており、185系踊り子号が国府津運輸区・熱海運輸区と横浜支社持ちが増えているのとは対照的です。
通常の臨時SVOは東京~伊東を1往復=1名の手配で済むところですが、この臨時列車設定時は東京車掌区から6号に1名・11号に1名をそれぞれ東京~伊東で片道便乗が発生することも考えると、やはり手配の都合を含めて奇跡の復活と言っても過言ではなさそうです。
撮り鉄的な面白さは特にありませんが、乗り鉄視点だと魅力いっぱいのこの列車。
スーパービュー踊り子号の歴史に思いを馳せながら、大晦日の日没を大きな窓から眺めるのも楽しそうですね。
関連記事はこちら
動画資料集
YouTubeチャンネル【鉄道ファンの待合室資料館】にてこの列車についての動画を公開しています。チャンネル登録・通知ON・コメント・評価もお願いします。
コメント