【粋・雅は見納めに】東武100系“スペーシア”原色復元!リバイバルの裏を考察

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東武鉄道では、2021年度より100系“SPACIA”(スペーシア)9編成のうち、5編成を登場時のカラーリングへ復元することを発表しています。

バブル設計で現在も根強いファンを持つ東武100系の歴史を振り返りつつ、原色復元の背景と今後の展開について考察します。

東武100系の登場から2度の転機、そして現在

東武鉄道では、それまで日光・鬼怒川方面への看板列車「きぬ」「けごん」に1720系ほか“デラックスロマンスカー(DRC)”を6両9編成運用しており、この後継として1990年・1991年に同数製造されたのが100系“スペーシア(SPACIA)”です。

銀座東武ホテルを手掛けたロバート・マーチャントが内装デザインを担当、シートピッチはJRグリーン車相当の1,100mm、3号車の半室にビュッフェやサービスカウンターを設けるなど、同時期に開発・製造されたいわゆるバブル設計の他社特急列車にも負けない豪華な車両です。

デビューからしばらくは堅実な活躍を続けていましたが、100系の歴史の転換点は2つ挙げられます。

まずは、2006年のJR線直通運行の開始です。

日光アクセスでは国鉄と東武が長年しのぎを削っていましたが、事実上勝利を収めた東武鉄道にとっても玄関口が浅草駅となっていることで池袋・新宿といった東京の西側からの利用者確保が課題となっていました。

双方の利益もあることから、JR東日本と東武鉄道が相互乗り入れを実施する体制となり、2021年には15周年を迎えます。

これらの運行ではJRは外装・内装を東武特急色に改めた485系(予備車は189系)を、そして東武鉄道では100系のうち106F〜108Fが選抜されました。

この改造ではJRの保安装置追設に加えて6号車の個室をグリーン車扱い・JRのマルスシステムでの発売に対応するため座席番号を両社方式掲げるなどの乗り入れ対応が施されました。

これらの3編成はその後も各駅を始発とする臨時列車、更にはイベントでスペーシア那須野号としてJR線内完結の臨時列車に充当されるなど幅広い活躍が見られます。

そして、2つ目の転機としては、2012年に東武鉄道が墨田区に東京スカイツリーを開業させたことで、観光戦略が大きく変わったことが挙げられます。

最寄り駅の業平橋駅をとうきょうスカイツリー駅と改称したほか、インバウンド層などをスカイツリーから日光・鬼怒川へ運ぶ観光ルートを作るべく一部特急の停車開始、そして100系9編成をスカイツリーの「東京スカイツリーのライティングデザイン「粋」・「雅」のイメージを取り入れ」(過去プレスリリース)た2色と、「日光・鬼怒川方面の観光列車の象徴であるサニーコーラルオレンジをベース」(同)とした合計3色のカラーリングに変更されました。

当時の東武鉄道のファンからは何でもかんでもスカイツリーで……と賛否はまちまちでしたが、現在ではカラフルになって一般層にも楽しい車両となっていました。

2015年には日光東照宮四百年式年大祭を記念して、103Fが特別塗装列車「日光詣スペーシア」となり、人気となったことからJR直通対応の106Fも同様の仕様となっています。

プレスリリースの発表を見る

今回のプレスリリース(PDF)では、30周年を記念してデビュー当時のカラーリングへ変更することがメインとなっています。

在籍する9編成のうち5編成がデビュー時のカラーリングに戻されることとなります。車号も記されており、新旧対応は以下の通りです。

編成現行塗装変更計画備考
101F「別のリバイバルカラー」
102F原色化
103Fサニーコーラルオレンジ
→日光詣
104Fサニーコーラルオレンジ
105F雅 原色化
106Fサニーコーラルオレンジ
→日光詣
JR直通対応
107F原色化JR直通対応
108F原色化JR直通対応
109F原色化

101Fが「別のリバイバルカラー塗装」とされているほか、200型「りょうもう」についても2編成が今後リバイバルカラーとなることも記されており、今後の展開が楽しみです。

コスト削減が狙い……?

今回の発表は素直に喜ぶ声が多い印象ですが、2011年に実施された東京スカイツリーのライティングデザインをベースとした“粋”(水色)・“雅”(紫色)のカラーリングが近い将来に見納めとなります。

車内リニューアルとともに塗装が変更されてから10年での“リバイバル”ですが、20年間維持していた塗装を東京スカイツリーの開業記念でリニューアルした経緯を考えると複雑な印象です。

浅草を行き来する特急けごん・きぬ号はもちろんですが、JR線新宿駅発着でスカイツリーとは無縁な運用も多い107F,108Fにもこれらのカラーリングで乗り入れており、塗装変更当初ファンからは賛否が割れていました。

今回のリバイバル施工対象は“粋”と“雅”とされている6編成のうち5編成で、トップナンバーの101Fについては「別のリバイバルカラー塗装」と記されています。

これにより、明記こそされていませんが、わざわざ記されている編成番号からもスカイツリー2色がこれらの塗装変更の過程で見納めとなることを示しています。

一方で、“当面の間”として登場したはずの金色の“日光詣”103F,106Fや、3編成用意されたはずが唯一の存在となった“サニーコーラルオレンジ”の104Fは対象外とされています。

これらの経緯を振り返ると、日光・鬼怒川への看板特急にスカイツリーの塗装をするという10年前のスカイツリー開業に沸いていた東武鉄道の熱が覚めただけにも思えます。

しかし、10年前の塗装変更が検査時期ではなく内装のリニューアルとともに急速に進められた点を考えると、今回の“リバイバル”はやや消極的な印象です。

東武鉄道で100系の登場時の塗料はジャスミンホワイト・パープルルビーレッド・サニーコーラルオレンジともに6050系や300型,350型と共通のものとなっており、スカイツリー2色と反対に1編成のみの“サニーコーラルオレンジ”についても青帯はフューチャーブルーで8000系などで使用されるコーポレートカラーです。

これらの状況を総合すると、今回のリバイバルの本心は塗装の合理化(使用塗料の削減)があるのではないか?という推測が飛び交っています。

近年で同様の背景と考えられる事例は、現在のJR貨物の国鉄型電気機関車があります。

発表通り推移すれば、現在のJR貨物機で更新色の方が珍しくなっているように、向こう数年でスカイツリー塗装2種の方が珍しい光景となりそうです。

このほか、東京スカイツリーのデザイン許諾が10年間だったのではないか?と推測する声もあります。

先述のJR貨物の塗装変更も“JRF”・“JR FRIGHT”といったロゴマークの使用問題が背景の1つとして噂されていますが、公式発表はありません。

プレスリリースで編成番号をわざわざ記してまで“粋”・“雅”が見納めとなることを直接記していないことを加味すると、可能性は否定できません。

ただし、そもそも東京スカイツリーは東武グループの東武タワースカイツリー株式会社が著作権・商標権を有しています。グループ傘下であることを踏まえると、これ自体は大きな障壁とは考えにくいでしょうか。

大人の事情が背景であったとしても公式に記されることは今後もなさそうですので、この辺りの事情の真偽は、東武博物館花上名誉館長のおこぼれ話辺りに期待するしかなさそうです。

残された101Fはどうなる?

原色復活で大きな注目を集めていますが、9編成中5編成が対象の原色化以上に注目される存在として、トップナンバーの101Fについて「別のリバイバルカラー塗装を実施します」という告知が添えられている点があります。

また、「200型りょうもうについては2編成(205、209編成)リバイバルカラー塗装を実施します。」という記述もあります。

全く計画がない段階でわざわざこれらの記述を入れる必要はなく、101F,205F,209Fについては公式発表に至らない段階ながら異なる塗装への変更計画があることが確実な状態です。

しかし、100系・200系ともに、登場時から纏ったことがあるカラーリングは全て網羅する格好となり、これらの“リバイバル”は両形式の過去塗装ではなく先輩形式の塗装を施すものと推察できます。

ワンマン用の8000系や他社でも近年流行りの先輩形式塗装のアレンジと考えると、100系は1720系“デラックスロマンスカー(DRC)”・200系では1800系の塗装が考えやすいところです。200系については2編成用意されることから、更に遡った塗装や見納めとなった台鉄“普悠瑪”カラーの復活など2種類の塗装となるかもしれません。

続報を楽しみにしつつ、100系はデザイン消滅・200系は500系への代替の動きも並行しますので、日常の乗車・撮影などの記録も併せて進めたいですね。

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コメント

  1. しんみざき より:

    えー( ノД`)…

    紫のスペーシア、失くなっちゃうの?
    好きなのになぁ……
    オレンジのより好きだし!
    残して欲しい。。。