秋葉原駅とつくば駅を結ぶつくばエクスプレスでは、大幅な輸送力増強のために5編成の新型車両導入の準備が進められています。
開業以降初となる新形式車両、TX-3000系の製造・準備が続いていますが、12月14日から16日にかけて、第2編成となる3182Fの甲種輸送(貨物列車による輸送)が行われています。
ヘッドマーク掲出でファンから大人気
つくばエクスプレスの新型車両は、他の日立製作所笠戸事業所によって製造される他社車両同様に、貨物列車により輸送する“甲種鉄道車両輸送”によって行われます。
長い歴史があるこの甲種輸送には昔から根強いファンが絶えませんが、このつくばエクスプレスの甲種輸送は開業前から現在まで撮影される方が多い列車です。
これは、以前より専用のヘッドマークを掲出さして運転されることと、その牽引機自体も必ずと言っていいほど珍しい機関車が抜擢されることが背景です。
特に、前回の甲種輸送でEF66形0番台最後の生き残り・EF66 27号機がヘッドマークを掲げて走行したことは大きな注目を集めていました。
今回の2編成めとなる3182Fの輸送では、広島車両所にて更新工事を施工し、その時の広島更新色風の塗装が唯一維持されている“カラシ”という愛称があるEF65 2127号機が吹田以東にて登板しました。
前回に引き続き特製のヘッドマークを装着しての運転となり、沿線・各駅には多くのファンが足を運ぶ姿が見られました。
車両製造・輸送スケジュールに変更も
今回のTX-3000系は、先述のように山口県・日立製作所笠戸事業所にて製造が進められていますが、当初の輸送スケジュールから変更が加わっていることが明らかになっています。
理由については明らかにされていませんが、つくばエクスプレス側の受け入れ体制の問題・輸送の問題・製造側の問題のいずれかが考えられます。
つくばエクスプレス側の受け入れですが、車両数自体は2171F(TX2000系・TX-71F)の事故廃車もありますので今のところは大きな問題はなさそうです。
年末の在籍車両数が異なることにより、税制上のメリットが存在します。
今回の新造車両はすべて増発目的で製造されていますので、2020年1月1日時点で車籍を有する車両を6両減らすことで固定資産税などの課税対象を減らすことが出来ます。
各鉄道会社は年度ごとに予算編成をしていることと総合して、毎年1月〜3月に各社の新造車両納入が続く理由の1つにこの関係が挙げられます。
今回の輸送計画が年内3編成・年明け2編成の納車が年内2編成・年明け3編成だったため、この恩恵だけは受けられます。
尤も、節税目的なら当初からそのスケジュールで計画する方が合理的ですので、今回は直接の関係は考えにくいでしょう。
輸送上の課題としては、積み替えの問題があります。
越谷貨物ターミナルではトレーラーへの積み替え・陸送準備のためにコンテナホーム1線が使えない状態となります。
積み替え・陸送の業者手配のほか、巨大な鉄道車両が道路を走行するための申請等の手続きもあり、このいずれかのスケジュールが取れなくなった可能性もありそうです。
12両の輸送となると、この作業が6日間連続で行われますので、それが支障となった可能性もゼロとは言い切れません。
一方で、当初計画の2編成ずつ=12両での輸送の方が、乗務員手配等を考えるJR貨物的には効率がよさそうにも思えます。
結果として甲種輸送の設定回数が1回増えています(1編成・2編成・2編成の当初計画→第3,4編成のみ12両で輸送に変更)ので、こちらも少し考えにくいですね。
最後に日立製作所側の製造上の都合です。
車両製造の遅れ状況が明らかになる例は滅多にありませんが、製造側の都合と考えられる納車順序の違いなどから推測が出来るケースはたまに発生しますね。
有名なケースとしては、構内事故等が発生して大幅な納期遅れとなったJR西・クロ683-1や京急1625編成などがあります。
今回の製造については作業遅れとなる明確なトラブル等の情報はありません。
強いて挙げるとすれば、本年度は比較的国内受注が少ない日立製作所にとっては、秋の台風被害によって最優先課題となるであろうE7系代替新造・上越新幹線向けの前倒し製造等を優先する手配がされた可能性がある程度でしょうか。
また、日立製作所では大型受注案件となっているインドネシア向けの新造車両関係で何かあったのかもしれませんが、こちらについても遅れになりそうな情報は出ていません。
以上を総合すると、これと言った計画変更の理由らしい情報はありません。
新幹線の納車を優先したのではないか……というのが最も納得が行く理由ですが、甲種輸送スケジュールをここまで修正して行うかという疑問も残りますね。
つくばエクスプレス線内では日中試運転も
製造・輸送の計画変更はちょっと今後が心配になるニュースです。
一方で、先に納車して終電後の試運転が続けられていた3181Fを使用した準備は着々と進められており、日中時間帯に秋葉原駅〜つくば駅の全線を使用した試運転が開始されています。
早速沿線・各駅ではファンの方による走行シーンの写真・動画などが出ており、つくばエクスプレス公式YouTubeチャンネルでも製造・輸送シーンのPR動画が公開されているなど、沿線利用者・ファンの注目が集まっています。
着々と準備が進められているTX-3000系。営業運転開始と増発が楽しみですね。
動画資料集
Youtube=鉄道ファンの待合室資料館では、71791Fの甲種輸送の様子を公開しています。
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