【外回りも一部減便】渋谷駅線路切替工事は2日間!増発・臨時列車の見どころ

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これまで埼京線・湘南新宿ラインのホームが移設されて大きく利便性が向上したJR東日本の渋谷駅。

既にJR東日本が積極的に広報しているように、2021年10月23日(土)・24日(日)の2日間は山手線のホーム拡幅のための線路移設工事が行われます(公式発表)。工事内容をおさらいしつつ、公表されている臨時列車のダイヤを掘り下げます。

渋谷駅の略歴と再開発事業

同時進行している一連の渋谷駅周辺での再開発事業は、開発事業者として東急・JR東日本・東京メトロの事業者のほか、国土交通省・東京都・渋谷区・東京国道事務所なども加わった、官民一体の大規模事業となっています。

このうちのJR東日本渋谷駅の工事は、渋谷駅の再開発の一環として2015年より着手されている工事です。駅南側の国道246号拡幅事業との共同事業であるほか、東西自由通路を渋谷駅街区土地区画整理事業(渋谷駅街区は現在の渋谷スクランブルスクエアを指す)と一体で進められています(2015年発表)。

山手線渋谷駅の歴史は非常に古く、1885年の日本鉄道品川線として開業した際にはかつての埼京線ホームに近い南側にホームが設けられていましたが、1920年に各社の路線が北側に乗り入れる現在の位置へ移動しています(参考 三井住友トラスト不動産ホームページ内:「渋谷駅」と乗り入れ路線の変化)。

翌1921年から1922年にかけて、渋谷駅周辺は貨物線が別線化されており、現在のように渋谷駅周辺が複々線となりました。

この際、渋谷駅の貨物駅としての機能は旧来の渋谷駅の立地が有効活用されたものの、長い時を経て1980年には渋谷駅での貨物取扱廃止。1996年に山手貨物線を活用した埼京線の恵比寿駅までの延伸が行われた時には、この貨物駅跡地を活用してホームを建設したため、2020年まで数百メートルの乗り換えを強いられる不便な駅となっていました。

当時はすぐ東側に東急東横線や東横百貨店などがあり、山手貨物線にホーム建設分の拡幅が困難だったことが伺えます。

そして、2008年の副都心線開業の際には東横線との直通運転を見据えた2面4線構造とされ、2013年に東横線の地下化・副都心線乗り入れが実現しました。

それと前後して東横線跡地の活用を含めた渋谷駅の再開発が本格化しており、JR東日本でも東横線や東横百貨店があった東側を活用し、山手線・埼京線の線路移設を含む改良工事が進められています。

2021年度の切替工事

画像:JR東日本リリースより

JR東日本の渋谷駅改良工事は大規模な切換工事を5回予定しており、今回の工事はそのうちの3回目です。

2018年5月には第1回切換工事にて埼京線上り(4番線・湘南新宿ライン南行)の線路を東側に移設と嵩上げしています。

2020年5月の第2回切換工事で埼京線下り(3番線・湘南新宿ライン)の線路を東側に移動と嵩上げをするとともに、埼京線ホーム自体を山手線ホームに隣接する現在の体制となりました。同時に旧ホームを活用した連絡通路の使用が開始されています。その後は「中央改札」「南改札」の移設も行われていました。

今回の2021年10月の第3回切換工事では、山手線の内回り(2番線)の線路を東側に移し、その分ホームが拡幅する内容です。これにより2番線ホームが少し広くなりますが、この体系は次回工事までの仮の姿です。

その次となるの第4回切換工事では、山手線外回り(1番線)の線路を西側に大きく移設・従来の2番線ホーム側となり、現在の2番線ホームが1つの島式ホームに生まれ変わります。

山手線は混雑緩和のために外回りへホームを増設した経緯があります。最近では山手線原宿駅が臨時ホームの活用として2面2線とされたほか、現在は横須賀線武蔵小杉駅が同様に島式ホームから2面2線の変則的な対向式ホームへの改良工事が進められているなど、混雑緩和目的では多くの駅で採用実績があります。

一方で、わざわざこれを島式ホームに戻す工事は異例で、配線構造を抜本的に変えることが出来る連続立体高架化事業でもないことを考えると極めて特殊な工事と言えそうです。

最後の第5回切換工事にて山手線双方向の線路・ホームの嵩上げが行われた後に完成となる計画です。

画像:JR東日本リリースより

運転計画の概要

画像:JR東日本リリースより

今回の第3回切換工事では、山手線内回りの線路移設を含む工事となるため、山手線内回りの池袋→新宿→渋谷→大崎間が運休となります。

通常の路線であれば特定区間の上下線を運休とする措置が採られるところですが、山手線の環状運転を生かして運休は内回りのみとなっています。

山手線〜外回りの環状列車と東側の区間運転が混在

山手線は運休区間以外にもダイヤが大きく異なっています。

内回りは大崎→品川→東京→上野→田端→池袋の東側の運転も行うこととなりますが、その折り返し列車は外回りの同区間を運行して車両を戻す必要があります。

このため、内回りの大崎→池袋・外回りの池袋→大崎と東側のみの区間運転列車が10分に1本程度運されており、この列車本数に相当する外回りの大崎→渋谷→新宿→池袋間も列車本数が通常より少なくなっています。

概ね外回りの環状線が毎時12本・内回りを含む区間運転が毎時6本となっており、外回りで見ると環状2本・区間運転1本の10分サイクルに近いダイヤです。

中京圏の方であれば地下鉄名城線を、関西圏の方であれば大阪環状線の運転体系に近いため少し理解しやすいかと思いますが、環状運転される列車と区間運転される列車が混在する、山手線では極めて異例のダイヤとなっています。

池袋駅・大崎駅ともに山手線の入出庫としては不適な経路となっており、折り返し作業は進行方向が変わる煩雑な経路です。以前の品川駅工事時の山手線上野駅・京浜東北線田町駅折り返しが同様で、こちらも約10分間隔とされていました。

京浜東北線〜快速運転中止

京浜東北線では、山手線並走区間で実施している快速運転を中止します。

これ自体は過去のリフレッシュ工事や輸送障害で時折見られた光景で、他の系統に比べると珍しさでは少し劣る印象です。

埼京線・りんかい線〜赤羽駅以南で増発

直接的な区間運休と並行する区間は池袋〜大崎間ですが、りんかい線についても増発対象とされています。

通常は日中時間帯に快速列車の毎時3本のみとなっている直通運転を大幅に拡大し、日中で毎時7〜8本が直通運転とされており、かなり大規模な増発となっていることが伺えます。

書き口としては大規模な増発となっているものの、基本的には新宿以北折り返し・大崎以南折り返しの区間列車が延長されているような構成です。ただし、毎時1本程度の列車は赤羽駅発着として純増しています。特に現行ダイヤでは日中時間帯の赤羽駅発着が大きく減少しており、隠れた見どころと言えそうです。

早朝時間帯の赤羽発池袋行きなども大崎まで延長されているなど、普段なら山手線が輸送の主力となる早朝・深夜時間帯にも積極的に運行されています。

JR東日本のホームページ内では所定・臨時ダイヤが混在して表示されますが、東京臨海高速鉄道ホームページ内でりんかい線直通列車の抜粋(外部リンク)があるので、併せて見ると興味深いです。

相鉄直通〜池袋駅へ延長

JR東日本〜相鉄直通の列車は、延長運転として通常新宿駅折り返しの列車が元番号+9000の列車として池袋駅まで運転されます。

これまで埼京線新宿以北まで運行される列車は新宿駅で列車と電車が変更される構成でしたが、今回の延長分は“列車”である末尾Mの列車番号が割り振られており、2019年11月に運行を開始した相鉄直通の旅客列車では初めて新宿駅以北で“列車”としての運行が行われます。この運転設定の違いからか、JR東日本「駅の時刻表」では湘南新宿ラインに区分されています。

従来であれば新宿を境に乗務員が必ず交代する体制ですが、池袋駅の構内入換要員さえ仕立てれば単純に乗務行路を池袋まで延長しても特段支障はなさそうですので、埼京線の電車扱いではなく列車とされているのもこの辺りの事情でしょうか。

(参考:2013年の常磐線日暮里駅工事で北千住発着とされた際の田端操車場での折り返しの事例では、水戸支社乗務員は通常行路の区間短縮+北千住〜田端操間に専属の乗務行路を設定)

車両運用面では、通常の新宿駅での折り返しと比較して1段落としとなっていることが想像できます。

池袋駅では1番線発が基本形となっています。板橋駅電留線と池袋運輸区への引き上げ双方が想像できますが、列車によって折り返し場所が異なる場合もあり得ます。

(参考:川崎駅工事の際の踊り子号の迂回経路が横須賀線・東海道貨物線と列車によって異なった事例)

車両運用が単純に1本増えることとなり、単純にJR車の運用が増えるのが考えやすいところです。

ただし、埼京線の増発本数の多さや現行の運転体系を考えると、通常は相鉄かしわ台車両センターや相模大塚に留置されている車両の活用もあり得るところで、この場合は長距離の臨時回送が運転されることとなります。

どのような動きとなるのかの全貌は想像が難しいところですが、埼京線の歴史に残る特異な運転体系となることは間違いなさそうです。

新宿〜品川間で設定される臨時列車

今回の臨時ダイヤで特に印象的なのは、新宿〜渋谷〜恵比寿〜品川のピストン列車の設定です。

成田エクスプレスの運休枠を活用した臨時列車ですが、通常は大崎(ホームなし)〜品川間のデルタ線区間は成田エクスプレスでしか乗車することが出来ず、一般車両での運用となればE259系では不可能な前面展望が見られる極めて貴重な機会となります。

ダイヤを眺めてみると、概ね30分間隔での運行で、車両運用としては2編成で事足りる体制です。

使用車両が明らかされておらず、ファンの間ではここが最大の注目ポイントでしょうか。

車両運用上は新宿側が始発・終着となっており、相鉄直通での準備で頻繁に試運転が行われた埼京線E233系7000番台・今回は増発対象外で余裕がありそうな湘南新宿ラインのE231系・E233系3000番台、車両置き換え過程で編成数に余裕がある横須賀線E217系やE235系1000番台、はたまたE259系の一般開放まで様々な憶測が飛び交っています。

どの車両が使用されたとしても普段は乗車機会の少ない路線だけに、大きな話題となることが予想されます。

テレビ番組(TBS Nスタ)により、E231系・E233系近郊タイプの運用であることが報じられた模様です。

グリーン車の開放が行われるのか否かは不明です。

ファン目線でも明らかに複雑な運転体系

これらの列車を総合すると、山手貨物線の池袋〜新宿〜大崎駅間にはかなりの本数が運行されることが伺えます。真っ先に線路容量が心配されるところですが、運転本数自体は平日朝ラッシュに比べれば極端に多いわけでもなく、ネックとなるのは池袋駅・大崎駅で毎時2本発生する平面交差支障と湘南新宿ラインや横須賀線が定時運行出来るか否かに懸かっている……といった印象です。

過去にも大規模な工事の実績が多いJR東日本ですが、今回の運転形態もなかなか複雑な印象です。山手貨物線を走行する列車本数と系統数が非常に多いため、ダイヤ乱れが発生するとかなり厳しい状態に陥りそうです。

次回の切換工事も運休対象が内回りから外回りへ変わるだけと予想出来ますので、実績としてもなるべく無事に乗り切りたいのではないでしょうか。

作業や変則ダイヤでの輸送に携わる、JR東日本と協力会社の皆様にとってトラブルなく終わる2日間となることを祈るばかりです。

参考:過去の切替工事

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