2022年度下半期に開業する東急・相鉄新横浜線の準備が各地で進行しており、2021年9月には相鉄21000系が東急電鉄へ搬入(過去記事)されて注目されていました。
この21101×8(21101F)は9月より東急目黒線内で深夜試験が行われていましたが、10月16日深夜に都営三田線の車庫である、東京都交通局志村車両検修場へ入線しました。
徐々に明らかとなる各社局の対応
東急電鉄新横浜線・相模鉄道新横浜線の開業に向けた準備が進められていますが、東急目黒線と相互直通運転を行なっている都営三田線・東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線では準備工事に留まっていた8両編成運転を開始するものの、相鉄への直通については明言されていない状態が続いていました。
都営三田線:新車で8両化・車両は未対応
東京都交通局では、6300形のうち初期に投入された13編成分を新型かつ8両編成の6500形への置き換えとしており、2020年秋に最初の6501編成が登場し、記事公開時点では5編成が落成しています。
これまで相鉄直通に対応した設備を有さずに投入が進められており、直通運転開始時点での運用範囲は新横浜駅までとなる可能性が高い車両です。
ただし、準備工事自体は行われているものと推測でき、将来的な直通が実現すること自体は否定できません。
東京メトロ南北線:23編成中15編成に増結
南北線は東京メトロの運営する路線の中で最も利用者数が少なく、当初は増結自体も消極的な姿勢が見られました。
最終的には23編成中15編成と大多数の車両の8両化が決定しています。
既に大規模修繕(B修繕)を済ませている9101F〜9108Fの8編成では、相鉄直通では使用できないデジタル無線が選定されています。これにより、三田線6500形と同様に南北線9000系は相鉄線の走行は見られず新横浜駅以北での活躍に留まる可能性が高い状態です。
埼玉高速鉄道:地上設備のみの対応
埼玉高速鉄道は開業以来利用が芳しくない路線で、東京メトロ以上に8両対応に消極的でした。
自社保有車両である2000系は引き続き6両で運行するものと伺える記述で、これにより相鉄線へ同車の乗り入れは望めません。
一方で、ホームなどの地上設備は8両編成に対応させるため、8両編成の各形式の乗り入れは日常的に見られそうです。
輸送力過剰となることから、赤羽岩淵駅以北まで運行される列車は6両編成中心とされるのでしょうか。
東急線から三田線に乗り入れた21000系
2021年9月には、相鉄の厚木操車場から東急電鉄長津田駅まで21000系21101×8(21101F)の甲種輸送(貨物列車としての輸送)が実施されて東急入りを果たしました。
その後は田園都市線・大井町線を経由して元住吉検車区まで自走。以後は目黒線内で各種試験が続けられていました。
10月16日終電後の試験では、目黒から都営三田線を走行して東京都交通局の志村車両検修場へ入庫しています。
到着後は洗浄線に収容される姿が確認されていましたが、翌17日午後には志村検修場の特徴である団地の直下にある留置線へ転線しています。
今後は三田線での試験が開始されるものとみられます。
相鉄〜東急〜都営の直通が濃厚に
以前より東京メトロ・東京都交通局所属車両が相鉄の保安装置(JRタイプのATS-P形)やデジタル無線装置(JR東日本と同様のチャンネル切替機能があるもの)の搭載を見送っていたため、対する相鉄車も目黒駅までの乗り入れとなるのではないか?という推測が飛び交いました。
今回の入線により、少なくとも相鉄21000系や東急車を使用した三田線への直通運転が実施されるものと考えることが出来るようになりました。
今後、南北線の王子検車区や埼玉高速鉄道の浦和美園車両基地への入線が行われるか否かも注目したいところです。
ダイヤパターンを考えると日中の直通先は固定になってしまう……?
東急・相鉄新横浜線の開業後のダイヤは朝ラッシュ時毎時12本程度・それ以降は毎時4〜6本程度と発表されています。
これは建設時点で決められている数字ですが、初年度はこの本数での運行開始となるものと見られます(先に開業したJR直通もこの数字通りの運転)。
過去のJR直通に倣えば、日中時間帯に毎時4本・夕ラッシュ時間帯に毎時6本といったダイヤが想像できます。相鉄のダイヤパターンとも概ね合致する印象ですが、西谷〜鶴ヶ峰〜二俣川駅間のダイヤの処理なども気になるところです。
これまでの動向や建設意図を考えると、目黒線内と東横線内は急行列車とすることが最も考えやすいところでしょうか。
東急側のうち、目黒線では毎時4本(15分に1本)の急行列車が走り、その間に各駅停車が2本(毎時8本)入る、15分サイクルと呼ばれるダイヤ構成です。
隣を走る東横線との乗り換えも重視されており、東横線の概ね15分のサイクル(日比谷線直通代替の各停の運転有無で30分サイクル)と連動して利便性の高いダイヤとされています。
急行運転開始以前は南北線直通・三田線直通が交互に入り、白金高輪駅で対面乗り換えの美しいダイヤだったものの、急行運転開始・日吉延伸後の現在では武蔵小山駅以東・直通先では白金高輪駅での乗り換え有無が異なる列車が連続する構成です。
これは、白金高輪駅以西は毎時12本・以北は毎時10本となっていることが背景と考えられます。
目黒駅ベースで考えると、三田線直通が3本連続・南北線直通が3本連続の交互で、三田線・南北線はそれぞれ白金高輪駅以北の列車を2本入れる構成です。
利用者目線では1本待てば直通……とならないことは一見すると不便ですし、乗り換えの“ハズレ”の時間帯は白金高輪駅で同数の始発列車があるわけでもないので待ち時間も発生します。
ただ、運転間隔を最適化しており、有効列車本数(目的地に行くのに実際に利用できる本数)の最大化という観点で考えると、毎時12本・10本の差を埋めるための非常に合理的なダイヤ構成と言えます。
かつての目黒線では線内完結列車が運行されていましたが、この構成に変更されたことで早朝・深夜のみの設定となりました。
この現行のダイヤ構成では、急行列車だけを抜き出して見ると、三田線・南北線に交互となるような構成です。このまま目黒線からの相鉄直通が30分間隔で毎時2本の急行とされた場合、日中時間帯だけは三田線または南北線のどちらかのみとなることも考えられます。
相鉄21000系の試験が都営側のみで進行すれば完全に三田線直通で固めると断定できますが、南北線や埼玉高速鉄道でも試験を行う場合はダイヤの想像は再び困難となりますので、今後どのように進行するのかは注目したいところです。
他社局のダイヤをなるべく変えないという前提であれば、日中毎時4本で東横線直通・目黒線直通が各2本ずつ・東横線直通は既存の菊名〜池袋間の日比谷線直通ルーツの列車を渋谷止まりの急行で代替すると考えられ、そこに目黒線直通がその間に挟まると日中の直通先は都営三田線とされる方が等間隔に近い……ですが、前提のパターン自体を変更する動きも十分考えられるため、依然として全貌は不明なままです。
大規模修繕が同時進行する南北線よりは開通時点で8両編成が出揃っている三田線を基軸にした方が都合も良い印象も受けますが、もう少しヒントが出てくるのを待ちたいところです。
異常時のみの入線は考えにくい?
このほかの見方として、これまで各社局が相鉄直通に積極的ではない姿勢が垣間見られ、相鉄線からの目黒線直通は目黒駅折り返しに留まるのではないか?という声もありました。
今回は試験目的での入線が伺えますが、試験が行われた=営業運転で恒常的に乗り入れが行われると考えるのが自然なものの、これだけでは断言は出来ません。
例えば、都営三田線の現行車両6300形は埼玉高速鉄道浦和美園車両基地へ・新型車両の6500形は東京メトロ新木場CRへ入線していますが、どちらも試験目的での入線で営業運転での使用は見込めません。
輸送障害(ダイヤ乱れ時)の入線に留まるという見方も出来なくはないですが、技量維持が困難となるため、やはり現実的とは言いにくい印象です。
JR東日本と相鉄の直通運転の事例でも、埼京線の列車は大宮運転区・大宮車掌区の担当ですが、相鉄線直通が新宿運輸区(湘南新宿ラインなどを担当)とされて分離されています。
通常時は12000系の乗務行路が設定出来なくなってしまうため、相鉄直通の新宿〜大崎間に両区の乗務員が混乗する12000系使用列車を設定し、異常時に埼京線に入線した際も大宮の乗務員が運転出来る体制とされました。
また、東急5050系4000番台が有楽町線で運転される事例も、有楽町線と副都心線の乗務員が共通であることで実現しています。
一方で、三田線や南北線の場合は技量維持が困難となるため、JR埼京線のようなダイヤ乱れ時のみ入線も不可能に近く、試験のみで乗り入れはしない・乗り入れるなら日常的に乗り入れる……の2択と考えられます。
これまで各社局の動きがバラバラで直通後の景色は不明瞭でしたが、東横線・目黒線方面双方の運転体系が少しずつ想像しやすくなってきました。
依然として東京メトロ南北線方面の乗り入れの有無・乗り入れる場合は埼玉高速鉄道まで乗り入れるのか、東横線の不足する10両編成の増強はどうするのか、まもなく登場する5080系の増結中間車の仕様など、残された疑問点も数多くあり、これらの答え合わせも楽しみです。
コメント
10/9終車後=10/10未明に相鉄21000系が王子神谷まで試運転して一時的に王子検車区に入っていたそうですが、目撃情報が極めて少ない模様です。
とれいん最新号の甲種輸送計画によれば、12月に相鉄21000系が綾瀬発で厚木まで返却されるようですね。