2021年3月のダイヤ改正で定期運行を終了した七尾線の415系。
このうち、松任へ回送されずに金沢総合車両所に留置されていた415系C06編成とC09編成が金沢から北陸本線を上り吹田総合車両所まで配給輸送されています。
七尾線の世代交代とその後
七尾線では1991年の電化に向けの車両として、415系800番台が投入されました。
この415系800番台は純粋な415系ではなく、113系初期車に交直流化や耐寒耐雪対応などの様々な改造を施して転用して誕生したグループです。
113系としてもかなり古参の部類で、1964年から1968年製造の車両となっています。
2015年の北陸新幹線の金沢延伸開業と北陸本線の第三セクター化を前に521系が多く投入されたものの、並行在来線ではない七尾線は一部が413系に代替された程度で大半は引き続き活躍していました。
JR西日本の中でも特に長い活躍となっていましたが、2020年度に遂に置き換えに着手されることとなりました。
2020年7月1日に七尾線の輪島塗カラーを踏襲した521系100番台がデビューし、2021年3月13日のダイヤ改正前日となる12日に413系とともに定期運用を終了することとなりました。
その後は今回輸送されたC06,C09編成は金沢総合車両所運用検修センターにて、それ以外の各編成は松任本所で静かに余生を過ごしていました。
415系にとっては“里帰り”
先述のようにかつては関西圏を中心に活躍していた113系をベースとしており、これらの改造は吹田工場(現:吹田総合車両所)・鷹取工場(現:網干総合車両所)・松任工場(現:金沢総合車両所松任本所)で実施されました。
特に今回輸送された2編成のうちC06編成については、113系から415系へ改造する工事も当時の吹田工場にて実施しています。
かつて関西圏などの近郊輸送を支えていた113系だった彼らも五十路越え、既に全車両が七尾線転用となってからの期間の方が長くなっていました。
久々の“里帰り”は廃車のための輸送という格好ではありますが、そのまま北陸の地で使命を終えることが自然な状態だった415系800番台の“里帰り”の実現は意外な動きと言えそうです。
高度経済成長期に生まれ、国鉄分割民営化の激動の時代に大改造を受けた415系800番台。再開発も進む関西圏を久々に目にして何を思ったのでしょうか……。
どうしてわざわざ来阪?
今回の輸送の見どころは、従来であれば金沢総合車両所松任本所で実施されていた廃車車両の解体作業を、わざわざ遠く離れた吹田総合車両所まで輸送したうえで実施とされた点が挙げられます。
七尾線の世代交代は2020年度に急ピッチで実施されたため、今後の解体対象となるであろう車両は413系・415系で比較的多い数となっています。
最も考えやすいところとしては、解体作業ペースが追いつかず、比較的余裕のあった吹田総合車両所で解体作業を実施することとなったものが考えられます。
JR西日本では過去にも関西圏の103系解体を下関総合車両所で実施した事例が多くありました。このほか、北陸エリアでは富山県の伏木にある日本総合リサイクルへ419系を搬入して解体した事例もあります。
このほか、金沢総合車両所・松任本所を含む金沢エリアでは、2023年度末となるであろう北陸新幹線の金沢〜敦賀駅間延伸で北陸本線の第三セクター化が行われることとなり、これに向けて少しずつ検修体制の見直し・縮小が始まっていても不思議ではありません。
現状では解体作業について何らかの折り合いがつかなかった結果である……以上の断定は出来ませんが、北陸エリア・関西エリアだけでなく、国鉄型3形式の併結運行という編成構成は全国のファンにとって注目される列車と言えそうです。
今後の他編成の解体がどのように進められるのか、今後も機関車+直流事業用車+交直流電車の配給輸送が再び見られるのかなど、引き続き進展を見守りたいところです。
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