【元 東武20000系列】アルピコ交通クハ,モハ20100形が改造を終え新村車両所へ

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以前より動向が注目されていた、アルピコ交通(旧:松本電鉄)上高地線向けの新形式。

京王重機整備北野事業所を2021年12月25日晩に出場し、28日未明にかけて陸送にてアルピコ交通新村車両所へ輸送が実施されました。

アルピコ交通の車両代替

アルピコ交通上高地線は、長野県松本市の松本駅から新島々駅を結ぶ全長14.4kmの鉄道路線です。

路線名に「上高地」の地名が入っていますが、これは新島々駅のバスターミナルで乗り換えて上高地方面へアクセスする路線といった趣旨です。同様の事例は他社でもあるもので、関東の方なら横浜駅の手前で終わる「横浜線」・関西の方なら奈良県にすら入らない「JR奈良線」が有名どころとして挙げられます。

以前は松本電気鉄道を名乗っていましたが、経営不振による事業再編の一環で松本電気鉄道株式会社が2011年に諏訪バス・川中島バスを吸収合併した際に名称が変更され、現在のアルピコ交通株式会社が社名となっています。一時は自力での経営維持が困難とされていましたが、長野県と県内各社による官民一体の支援により大規模な経営改善が進められています。

鉄道事業では、これまで京王井の頭線で使用されていた京王3000系を譲受した3000形2両編成4本を1999年より運用しており、製造から50年以上が経過していました。以前から置き換えが示されていましたが、当初の2020年度から導入の計画から若干遅れての納入となっています。

2021年6月22日には地元の信濃毎日新聞にて4編成とも置き換え・前面形状のデザインは従来車と異なる・1年に1編成ずつのペースで導入する計画であることが報じられています。

2021年12月13日付で「【鉄道】鉄道車両の譲受について」(外部リンク)として東武鉄道からの車両譲受を正式発表しました。2021年度は1編成2両が導入されること・2022年3月には運用開始となること・車両形式が示されています。クハ20100形・モハ20100形を名乗ることが明らかにされています。

小噺;今なお続く「松本電鉄」の呼称

2011年にアルピコ交通となって既に10年以上が経過しますが、依然として松本電気鉄道時代の「松本電鉄」の案内が随所に見られ、自社でもアルピコ交通・松本電鉄の併記で記載されている掲示類が多く見られます。

松本駅を管轄するJR東日本でも、会社移管前から使用されていた駅自動放送・駅掲示はもちろん、ホームページ公開の松本駅構内図まで未だに「松本電鉄」と記載しています。JR東日本自身が愛称を付けるのが好きで、同じく利用者に全く定着していない感がある東武野田線→東武アーバンパークラインの変更にも対応している事業者ですので、修正し忘れではなく意図的に愛称として使い続けているものと考えられます。

利用者に長らく親しまれた会社名が愛称として使われているのは嬉しいところです。

東武鉄道20000系列の世代交代と車両譲渡

東武鉄道では、東京メトロと共通設計の20m級7両編成の70000系列を導入し、日比谷線・スカイツリーライン(伊勢崎線)のホームドア導入に向けたドア位置統一を目指す動きが進められました。

日比谷線直通で使用されていた20000系列は20400型として4両化とリニューアルが施工されており、20000型の先頭車2両と20050型,20070型の中間車2両を除外した6両を組み合わせる転用が進められました。

元の形式東武鉄道での転用譲渡・解体
20000型
(13編成)
・先頭車
20420番台3編成
・先頭車
20440番台8編成
・全車解体:2編成
・中間車全車解体:9編成
・中間車4両解体,2両譲渡:2編成
20050型
(8編成)
・先頭車(5扉),中間車
20430番台8編成
・中間車(1両は5扉)
20440番台8編成
・中間車2両(1両は5扉)解体:4編成
・中間車1両解体,1両譲渡:4編成
20070型
(3編成)
・先頭車,中間車
20410番台3編成
・中間車
20420番台3編成
・中間車2両解体:3編成

この中で、20000型・20050型の中間車各4両が譲渡対象と見られる状態で長らく保管されており、東武博物館名誉館長花上氏による「山の方の地方私鉄」への譲渡が示されるなど動向が注目されていました。

2021年5月28日深夜には、そのうち20000型のモハ24803号と20050型のモハ25853号が渡瀬北留置線から栃木県・埼玉県・東京都を陸送(トレーラーによる輸送)され、京王重機整備北野事業所へ搬入されていました。輸送前の時点で床下機器に「京王」「アルピコ」のチョーク書きが見られており、アルピコ交通譲渡改造を京王子会社の同社で行うことが確実視されていました。

改造を行なった2両を見る

京王重機整備北野事業所に輸送された2両は、外装を中心にさまざまな工事が施工されています。

今回の改造では、運転台設置・パンタグラフ増設・走行機器類一新・半自動ドアボタン設置・整理券発券機設置などが確認されています。

輸送時点で、運転台がトレーラー側・パンタグラフ1基搭載の車両が20050型改造のモハ20100形・運転台が後側・パンタグラフ2基搭載の車両が20000型改造のクハ20100形です。

モハ20000型はパンタグラフ装備・モハ20050型はパンタグラフ非装備の車両が改造種車となっていましたので、この構成をベースとして設計されていることが読み取れます。この改造内容から、付随車のパンタグラフ2基を通常使用・電動車は霜取りパンタグラフ……といった運用がされるものと考えられます。

特異な構成であることは間違いないですが、20050型の5扉車・車齢が浅いものの譲受される4編成分がない20070型を種車から避けつつ、直流モーターの20000型ではなく交流モーターの20050型を電動車としながら改造コストもなるべく抑える……といった改造設計者の努力が垣間見られます。

同様の付随車にパンタグラフを設置する構成は、機器が大型化する交流電車の短編成で時折見られますが、直流電車としては珍しく、趣味的にはかなり面白い設計です。

走行機器類についても最新のものに交換されており、東武鉄道の転用車は機器更新をせずに転用されていることとは対照的です。東武20000型,20050型からの流用品は少なく、譲渡改造前の時点でチョーク書きされていたもの以外は新たに調達したものとみられます。

従来の3000形では新島々側に電動車(奇数番号)・松本側付随車(偶数番号)に霜取りパンタグラフ(2編成のみ)といった構成でした。今回の20100形はパンタグラフ位置や搬入向きから新島々側に付随車(パンタグラフ2基)・松本側に電動車(霜取りパンタグラフ)といった構成と見られ、従来車の付番で考えると前者が奇数・後者が偶数となりそうです。

元形式車号新形式車号編成構成主な改造箇所
モハ20050型25853モハ20100形モハ20101松本側先頭車運転台設置
モハ20000型24803クハ20100形クハ20102新島々側先頭車運転台設置・付随車化

気になる前面形状については、輸送では養生が施されており、全貌は明らかにはなっていません。

改造途上の目撃情報を見る限りはヘッドライト・テールライトは運転台上部に設置される形状(+上部中央に行先表示器)・東武20000系列のような窓配置であることが伺えます。東急1000系譲渡車のようなライト位置と東武20000系列の窓配置が合わさった、ありそうで無かったデザインとなりそうです。

スカート(排障器)については左右でセパレートの物が新設されています。同様の形状は北越急行HK100形でも見られますが、同様にスカートと台車スノープラウの併設となることが想像しやすいところです。ただし、松本電鉄時代に譲受した3000系には、スカート・スノープラウはいずれも非設置となっていました。

12月29日追加:アルピコ交通公式Twitterにて、前面形状が公開されました。

改造途上で確認されていたライト位置などが明らかになったほか、推測通りスカート部分にはスノープラウが設置されています。

1月4日追加:編成向きと車号が発表されました。

従来の3000形は新島々側が奇数・松本側が偶数でしたが、20100形では逆となっています。動力車の連結位置が逆となっているため、奇数=モハ・偶数=クハであることが維持された格好です。

長野県全体・特に路線名にもなっている上高地が雪深いイメージが強い方も多そうですが、盆地である松本市街地の平野部は積雪が比較的少ない地域です。

新設された乗務員扉が京王7000系のものと同一形状で、廃車発生品と推測できます。運転台新設時にビート(強度のための出っ張り部分)を撤去して平らなステンレス板を貼り付ける改造を施す事例が多いですが、20100形の改造は違和感なく仕上がっています。京王8000系で中間車化改造を数多く行ってきた京王重機整備のノウハウが活かされている格好でしょうか。

運転台機器については不明ですが、先代の3000形も京王6000系の廃車発生品を使用しており、今回も京王の発生品が使用されているかもしれません。東武20000型2編成の先頭車が解体されていますが、全編成分を賄う数には至りません。こちらも今後の発表が気になるところです。

今後の改造も急ピッチで……

大方の車両改造は済ませているものの、車体については帯剥離がされたままの状態で、今後は新村車両所にてラッピングを施すこととなる模様です。

アルピコ交通では白色に紫・ピンク・橙・緑・赤のストライプカラーを電車・バス共通で採用しており、同様の外観となるものと考えられます。

また、従来車とは異なり最新の機器類が並ぶ車両ですので、誘導障害試験(信号機や踏切が走行機器からのノイズの影響を受けないかを試験する)などの各種試験を行う必要があり、3ヶ月で進めるのはややハードな印象も受けます。

2021年8月の大雨で田川橋梁が大きく損傷し、現在も松本駅〜渚駅のバス代行輸送が継続するなど苦戦を強いられている上高地線。かつては快速「ムーンライト信州」からの接続列車を運行することでファンからも知られ、登山客以外にも乗車する鉄道ファン層を多く見かける路線でした。

都心から「あずさ」1本で乗車出来るアクセスの良い路線ですので、新車デビュー・路線復旧の折にぜひ乗車したいところです。

東武20000系列24編成の転用・譲渡一覧

クハモハモハモハモハモハモハクハ
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画像元ツイート紹介

記事内掲載写真は、鉄道ファンの待合室Twitter フォロワーの😎🤪🥳様(お名前は機種依存文字/@minahide2614)・とある地方の幻影鉄録さま(@toarusr)より掲載許諾をいただいています(名前は許諾順)。

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