【定期減便の副産物?】“波動用”E257系5000番台が踊り子臨時運用に

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JR東日本は2022年12月13日、2023年2月の臨時列車追加設定を公表しました。

例年「河津桜まつり」期間中は多くの臨時列車が設定されますが、今回は初めて緑色のE257系5000番台を使用する列車が設定されており注目されています。

全運用を2000番台で賄えるはずの運用構成

E257系の東海道線転用では、185系全運用と251系の大半の運用を代替するため、9両編成13本・5両編成4本の布陣となりました。

2021年3月改正ではE257系に代替が完了し、この時点ではE257系9両編成が11運用+予備2・5両編成が3運用+予備1で回すことが可能な構成となっていました。

「踊り子号」の臨時列車についても「踊り子55号」「踊り子56号」のみ予備編成を使用・それ以外の臨時便は茅ケ崎・国府津・小田原・熱海の停泊車両を使用することで賄うことが可能なダイヤとなっていました。

突如として設定された“緑の踊り子”

2022年12月13日に河津桜まつり期間中の「踊り子号」臨時列車の運転予定が公表されており、このうち土休日の「踊り子51号」「踊り子56号」と見ごろが近いことが予想される週の平日に運行される「踊り子53号」「踊り子60号」について、『車内に指定席の発売済み区間をお知らせする「座席上方ランプ」がございません。』との記載が登場しました。

また、えきねっと・指定席券売機のシートマップにより、E257系5000番台の特徴である半室グリーン車構成から同区分の充当が断定できるようになりました。

これまで「踊り子号」のE257系は全て2000番台・2500番台を使用しており、5000番台での運用は初の事例となります。

2023年2月 E257系5000番台使用列車

運転日列車番号
列車名
始発駅発車終着駅到着
2/11(土),12(日)
18(土),19(日),23(木祝)
25(土),26(日)
8051M
踊り子51号
東京7:30下田10:12
2/20(月)〜22(水),24(金)8053M
踊り子53号
東京7:52下田10:41
2/11(土),12(日)
18(土),19(日),23(木祝)
25(土),26(日)
8056M
踊り子56号
下田15:23東京18:19
2/20(月)〜22(水),24(金)8060M
踊り子60号
下田16:55東京19:49

2022年3月改正の(実質的な)運用増が原因?

先述のように、本来の計画ではE257系2000番台のみで全列車の運用を賄える数として13編成が転用されており、臨時便が“フル稼働”したとしても問題なく運用出来る体制となっていました。

当初の転用計画の前提を覆す、不可思議な設定にみえます。

E257系2000番台の運用は先代の185系と同様に複雑な構成となっていますが、2022年3月改正では事実上の“運用増”となっている点が注目されます。

2022年3月のダイヤ改正では「踊り子5号」「踊り子18号」が臨時化され、「湘南11号」「湘南10号」が14両編成から9両編成へ変更されています。

前者では伊豆急下田駅停泊関連の運用構成が変更されて、従来は同一編成で運転されていた「踊り子4号」〜「踊り子15号」が別編成を使用する体制となりました。「踊り子18号」臨時化により、伊豆急下田駅停泊の編成を入れ替える必要性からこの変更は必須であることは明らかです。

後者では単純な平日運用の削減とはせず、改正以前は同一編成を使用していた「湘南4号」〜「踊り子3号」を別運用とする構成となりました。

従来の運用構成ではかなり短い時間で保全(仕業検査等)を行うダイヤとなっており、2022年2月の労組資料では「14両分割もあり体制が厳しいと聞いている」とも記載されているように、東大宮センターでの作業時間確保の狙いが読み取れます。

これらの変更により、2021年3月改正では9両編成全体で11運用+予備2本と出来たところ、2022年3月改正では12運用+予備1と運用数が増加する結果となっていました。運転列車・区間を削減したのに運用数は増えてしまった……という興味深い内容です。

9両単独運用は9運用に増加。詳細内容はPDF版でご覧いただけます。
9+5両編成併結は3運用を維持。詳細内容はPDF版でご覧いただけます。

現在の運用を眺めてみます。上記図では青色が特急「湘南」、緑色が特急「踊り子」、グレーが回送、黄色が(保全作業などが実施可能な)東大宮センターに滞在している時間を示しています。

2022年3月改正では運用数が増えたことに加え、そもそも定期運用で使用している編成の“間合い”の臨時列車設定が困難になっていることが分かります。

改正前であれば51号-52号・53号-54号は国府津等での留置編成で運用可能・55号-56号は東大宮から新規で仕立てる必要があるものの臨時全列車が走っても12編成あれば賄えたのに対し、現行ダイヤでは仮に臨時列車を全て走らせると東大宮センターから2編成新規で仕立てる必要が生じる構成となっています。13編成配置に対し14運用となり、そもそも設定不可能な状態でした。

先述の労組資料でも「E257系の保全ダイヤが変更になった理由を明らかにすること。また、ダイヤ改正以降はNA編成に臨時運用をつけないこと。」といった記述がありました。

今回の臨時運用についてもNA編成(2000番台)ではなくOM編成(5000番台)を充当させているように、波動用編成の使用は定期運用設定時点から想定されていたものと推察できます。

これら一連の動きですが、185系・E257系が共存していた2020年3月改正ダイヤの設定事例を見ると動きが追いやすいです。

このダイヤではE261系「サフィール踊り子号」が運転を開始・251系「スーパービュー踊り子号」が運行終了となり、251系の代替分のみE257系が投入されている状態でしたが、一部の臨時列車でのみE257系が使用されていました(過去記事)。

平日ダイヤながら盆暮れの需要が多い2日が特徴的で、8月7日の「踊り子51号」〜「踊り子52号」と12月29日の「踊り子17号」(現在の59号)〜「踊り子20号」(現60号)については、平日2運用・土休日3運用のE257系を活用して運行されました。

また、河津桜まつり期間については平日ダイヤでは「踊り子53号」〜「踊り子20号」(現60号)・土休日ダイヤでは「踊り子53号」〜「踊り子58号」(現62号)の1往復はE257系の新規出庫とされていました(過去記事)。

この年度の事例を見ると、185系の間合い運用で設定可能な場合は185系を使用するものの、新たに出庫させる必要がある運用の一部にE257系を使用していたことが読み取れます。

過去の事例と併せて考えると、今回は全臨時便運転とはならなかったものの、平日の「踊り子53号」〜「踊り子60号」・土休日の「踊り子51号」〜「踊り子56号」はいずれも定期運用の間合いでは充当が困難なことから、東大宮センターから新規で仕立てる必要があり、かつ2000番台に臨時運用を設定する余裕がないことから5000番台で運行される……といった背景が見えてきます。

「踊り子53号」〜「踊り子54号」が運行される2月23日(木),25日(土),26(日)以外の土休日は2000番台のみでも運用可能なはずですが、これは発売状況に応じた増発の余地を残した格好でしょうか。

一方で、そもそも定期運用の構成自体を異なる形態としていたら、1運用程度は余裕で捻出可能です。

これは無駄が多いようにも思えますが、2022年3月改正はJR東日本の在来線特急全体の傾向として減便した分は通常ダイヤでの遅延吸収やメンテナンス時間確保に振って運用数を維持する内容となっていました。

東海道線特急についても、そもそも臨時列車の稼働予測が不透明な時期(前年同時期は繁忙期でも臨時便設定がなかった)にダイヤが作成されていましたので、最繁忙期は必要に応じて波動用車を充てる方向にシフトしたのも一理あり……といったところでしょうか。

新たな光景に期待

日々E257系が行き交う東海道線・伊東線・伊豆急行線ですが、塗装変更・機器更新を施工した5000番台,5500番台とも伊豆急行線への入線実績はなく、伊東線についても5000番台が2回・5500番台が1回と波動用区分の活躍は乏しい状態が続いていました。

少なくとも現時点で2000番台と5000番台が伊豆急下田駅電留線で並んで留置されること・途中駅では「踊り子」表示での行き違いも実現することとなります。平日ダイヤでは(撮影で狙うのは困難ですが)特急「湘南」との離合も生まれます。

先述のように、運用の組み方さえ変えれば5000番台使用の「踊り子」は再び淘汰することも可能なように見えます。一方の波動用編成は「あかぎ」「草津」運用進出で余裕が少なくなることから、2023年3月改正以降も見られるのかどうかは不透明な状態とも捉えられます。

ぜひこの春に乗車・撮影を楽しんでおきたい列車です。

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