貨物列車牽引機として開発されたものの、その性能を買われてブルートレイン牽引機に抜擢。
既に多くの保存機を有するEF66形ですが、国鉄特急色をまとった27号機が0番台として最後の活躍を行なっており、電気機関車のファンにとっては今一番“熱い”車両です。
生い立ちを振り返りつつ、生き残った背景とともに今後の動向を考えます。
JR貨物の気まぐれ?国鉄特急色で一躍大人気に
EF66形は、EF65 PF型の後継形式として開発された、国鉄平坦線区向け最後の新規設計形式です。
従来の箱型のボディから流線形の先頭形状に変更された点が目立つ機関車で、1968年に製造された試作機の901号機のほか、1968年から74年にかけて1号機から55号機までの56機が製造されました。
貨物列車の高速化にあわせて開発された形式ですが、その性能を買われて九州方面へのブルートレイン牽引機に抜擢された点も特徴的です。
1987年の国鉄分割民営化では39号機までがJR貨物へ、40号機以降はJR西日本へ継承されていますが、後年のブルートレイン運行本数減少で41,44,52,54号機はJR貨物へ譲渡されています。
1989年からはJR貨物が100番台として外観が大きく異なる増備をはじめ、JR貨物で引き続き活躍していた0番台についても、走行機器類の更新工事を施工することとなりました。
当初は100番台に似たカラーリングとなったほか、施工途中から原色塗装のデザインに近い、新更新色へ変更されています。
最後に更新工事を施工された27号機については、車体のカラーリングや車号の飾り帯を原色時代のまま維持した形態で出場し、大きな注目を集めました。
最後の原色機・菱形のPS17形パンタグラフ・ひさし無しの原形機だった11号機が退役・鉄道博物館入りとなった代わりに、この27号機が一躍人気の機関車となりました。
その後は0番台のEF210形への置き換えが進行、JR西日本機のブルートレイン廃止による淘汰など、2000年代後半から急速に淘汰が進んでいます。
JR貨物では休車と運用復帰を繰り返しながら0番台を使用していたものの、2018年の30号機廃車回送以降はこの27号機が最後の残存機となっています。
この30号機の廃車の牽引も27号機が務めることで、無動力ながら0番台の重連が最後に実現したエピソードが有名です。
最近では、2019年には新たに福山通運の貨物列車、カンガルーライナーの運用がEF66形に変更。国鉄特急色に近い統一されたコンテナ編成として脚光を浴び、多くの貨物列車ファンを魅了しました。あまりにも注目度が高くなってしまうことから、その後は意図的に避けた運用がされています。
2020年3月改正で運用順序が変更されたものの、この列車自体は維持。
そして2020年6月21日には久々にこのカンガルーライナーに登板して注目を集めました。
今後同列車に入る機会も多くはなさそうですが、EF66形自体の運用範囲が都心部で少し拡大するなど、もう少しその勇姿を楽しむことが出来そうです。
全般検査から5年・今後の活躍は?
現在もあくまで100番台と共通運用で活躍している27号機ですが、JR貨物関西支社・吹田機関区によって特別な存在であることは言うまでもありません。
2019年には先述の2059列車が運休となって充当されないような木曜A1運用で固定されていたほか、つくばエクスプレスTX-3000形の甲種輸送ではEF65 2127,2139といった人気機関車とともにヘッドマーク付きで大きな注目を集めました。シキ800形最後の東海道本線走行のエスコートも実現しています。
こういった動きは2020年度も継承されており、現場・ファンから人気の熱い機関車としてイレギュラーな運用がされることもありそうです。
もっとも、既に15年以上経年差がある100番台でも廃車の動きが始まっているほか、EF210形300番台の大量増備が明らかにされている状況を考えると、次回の定期検査などの遠くない将来にその伝説に幕を下ろすこととなりそうです。
残存していること自体が奇跡のような存在ですので、後悔残らぬように記録しておきたい機関車です。
0番台の保存機は多数
EF66形0番台はブルートレイン牽引という使命から、様々な世代に親しまれていた機関車です。
その知名度の高さもあってか、主に活躍していた関東・関西でその勇姿を見ることが可能です。
登場時の姿になるべく近づけているのは鉄道博物館の11号機です。
引退まで運転台窓部分のヒサシ増設・パンタグラフ交換を施工されないままでファン人気の熱い機関車でしたが、更に連結器周りの配管復元なども施工されています。
一方の京都鉄道博物館保存機である35号機は、目立つ運転台上部のクーラーや塗色復元こそされているものの、パンタグラフや台車周りの塗装などでその歴史をミックスしたような形態です。
鉄道博物館は原型重視・京都鉄道博物館は晩年の形態も大事にしている印象がありますが、この形式が一番分かりやすい保存への考え方の違いと言えそうです。
JR西日本が主体となっている京都鉄道博物館の保存機が運転台周りのみのカットモデルとなった10号機と、ともにJR貨物機である点が意外でしょうか。
番号 | 状態 | 場所 | 形態 |
1号機 | 動態保存・訓練機 | JR貨物広島車両所 | 2エンド側は新更新機風 |
10号機 | カットモデル | 京都鉄道博物館 | 1エンド側運転台周りのみ |
11号機 | 静態保存 | 鉄道博物館 | |
35号機 | 静態保存 | 京都鉄道博物館 | PS22・床下グレー |
45号機 | カットモデル | ①ジオラマ・京都・ジャパン ②さいたま市ほしあい眼科 | ともに乗務員室扉までの カットモデル |
49号機 | カットモデル | ①ジオラマ・京都・ジャパン ②京都木津川 パン オ セーグル | ともに乗務員室扉までの カットモデル |
この保存実績を踏まえると、27号機の引退後は解体となる可能性が高そうです。
動体で生きる最後の車両として貴重だったJR東日本のEF60 19号機同様、除籍されてしまえばその車両自体の希少性が高いものとは言えません。
コメント
さいたま市のEF6645の前頭部はほしあい歯科でなくほしあい眼科ですので修正宜しく。
たこさん樣
閲覧・コメントありがとうございます。
ご指摘の件、誤植ですので加筆・訂正させていただきました。
今後とも当サイトのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
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