【意外と最近?】ここ5年で広まった鉄道の『計画運休』効果と課題は?

スポンサーリンク

既にニュースでも報じられているように、首都圏・東海・近畿の多くのエリアで多くの鉄道を始めとする公共交通機関が『計画運休』をしています。

鉄道の計画運休の歴史は意外と短く、まだまだ試行錯誤の状態です。

なぜ最近まで行われなかったのか、利用者の理解、そして前回の台風15号での課題と今回の事業者の対応など、気になるトピックを紹介していきます。

台風で自宅待機をされている方向けの考察記事となります。

台風の最新の情報を確認しつつ、まずは身の安全の確保を最優先してください

この記事は台風の影響が比較的小さそうな地域のビジネスホテルからお伝えしています。

計画運休はなぜ生まれた?事前告知をして運休する理由

そもそも、鉄道事業者は公共交通機関としての使命として、台風で不要不急の外出が減っていても、本当に必要な利用者が存在する以上はなるべく動かしたいというのが大前提です。

一方で、各鉄道事業者の安全綱領でも示されている通り「安全は輸送業務の最大の使命」ですので、雨風に弱い乗り物である鉄道は、風が強くなればすぐに止めなければなりませんし、大雨による路盤流失のリスクがある場所を走らせるわけにはいきません。

この2つの板挟みになるため、鉄道事業者としては悩みどころです。

従来は各社ともに規制値を超えたら運転を見合わせるという方針だったため、従来は事前に具体的な時刻で区切る対応はありませんでした。

計画運休は駅間での列車の立ち往生などによる混乱の防止・乗客の安全確保に有効という観点から投入された画期的な発想です。

計画運休が大きく注目されたのは2014年

そもそも、計画運休という言葉が広く使われるようになったのは、2014年の台風にてJR西日本が京阪神地区で大々的におこなったものがきっかけとなっています。

この際は、関西圏の私鉄各社が従来通りの動かせる限り動かすという対応を取るなか、JR西日本だけが独自に事前告知を始めて運休を計画通り実施した点がクローズアップされました。

台風の被害自体が想定よりは少し下回るものとなったため、「走らせられたのに走らせなかった」という批判の声も当時は多くみられ、物議を醸しました。

昨今では当たり前となった計画運休は、これ以降この痛い失敗を糧に精度が磨かれるなかで定着していきました。

この2014年の例は、土休日・関西圏という環境だからこそ出来た英断だったと言って差し支えないでしょう。

当時、他社は消極的なコメントをしていましたが、気づけば今では全国区の制度となっていますね。

前日まで詳細が発表されない理由は?

利用者の多くにとって、計画運休の詳細はいち早く知りたい情報であることだけではなく、電車が動くかどうかを会社・学校が休みとなるかどうかの判断基準としている組織も非常に多く、社会的な影響が非常に大きいものですね。

そのため、利用者からは早く時刻を知らせてほしいという声が毎回多く上がります。

しかしながら、台風などの自然災害は刻一刻と状況が変化していくため、正確な時間を決めるのが難しいものとなっています。

5年目の今年、国土交通省は運休時刻発表は24時間前を目安にすることが望ましいと結論付けています

天気予報の精度が劇的に改善される変化がない限りは、今後もこの体制が確実でしょう。

2019年台風15号での課題

2019年9月の台風15号では、千葉県を中心に首都圏に大きなダメージをもたらしました。

首都圏のJR・私鉄各社では今年も計画運休が実施されましたが、この台風15号では運転再開後について課題が挙げられています

通常の輸送障害では、各駅に滞留していた電車を順次動かす一方、前日に徐々に本数を絞って車庫へしまい、そのまま始発から運転を見合わせていたため、運転再開後の本数は通常ダイヤの早朝のようにごく僅かなものでした。

特にJR東日本では、8時から運転再開と当初アナウンスをしたため、各駅では通勤・通学の利用者が滞留。

多くの路線では計画より延びて9時以降となり、再開しただろうと見越した旅客がさらに押し寄せた結果、各駅の入場規制がかなりの長丁場となってしまいました。

計画運休という制度自体が関東ではここ3年程度の実績ですので、利用者・事業者ともに理解・周知が足りていなかったことを強く感じさせるエピソードとなりました。

・運転再開見込みはもっと余裕をもっておく

・運休スタート同様、通常の運転本数に戻るのは〇時ごろ、という旨も併せて周知する

・他社で先例がある、主要駅に回送で据え付けてから運転再開する

このあたりが手っ取り早い対策と言えそうです。

回送で据え付けるのも、だったら運転再開を早めてほしいという意見が出てきそうですが、ほかの輸送障害でありがちな列車の運転間隔調整と同様、利用者理解を進めることで解決していくべきではないでしょうか。

今回の計画運休でもさっそく課題?

今回の台風19号でも、各地で計画運休が行われており、いよいよ浸透してきたと感じさせられます。

今回は3連休前ということを背景に国交省指針より前倒しにて発表がされています。

一方で、5年経ってもまだまだ課題も多いことを感じさせられます。

気になった鉄道事業者をいくつかピックアップしてみました。

京成電鉄:結局当日まで発表なし

首都圏の鉄道会社では、京成だけが計画運休を発表しないまま当日を迎えてしまいました

数年前まではごく普通のできごとですが、今や全国各地で当たり前になった情報の早期発信を1社だけ行わないことは足並みが揃わず、批判の声がさっそく上がっています。

今年に入って国土交通省が24時間前を目安に発表することが望ましいと結論付けていますし、子会社では発表されています。

空港アクセスという特殊な使命で、前回の15号の際の運休で成田空港が陸の孤島となって批判を受けた矢先でしたので、対策が間に合わなかったことが背景として推測できるものの、次回までには何とか解決策を見出して欲しいですね。

東急・京急:発表時刻から前倒しで運休開始

京成電鉄はそれなりの事情がありそうですが、東急・京急についてはただ読みが甘かったために運休時刻を直前に前倒ししており、計画運休の信頼を崩すものとなります。

そもそも、こういった運休開始の前倒しで混乱を起こさない為に発表を24時間前を目安にしているわけですので、24時間で起きる情勢の変化を加味して時刻を決めなければ意義が薄れます

今回は前倒しで発表をする以上、その分更に余裕を見るか、見込みと確定時刻の二段階にするなどの対応が不可欠だったはずで、前倒しした結果精度が落ちて混乱を招いてしまっては本末転倒です。

特に他社より明らかに遅い時間まで運転を見込んでいた京急電鉄は読みの甘さが相変わらずとも言えそうです。

路線事情として土砂崩れや風の影響は受けやすい立地で、過去の自然災害で土砂崩れのハード面の対策は進んでいるだけに、ソフト面が対応できていないのは要改善です。

京急のギリギリまで動かす姿勢自体は鉄道事業者として本来あるべき姿という考えもあるものの、今回の対応では計画運休の意義を見失っています。

JR東海:シンプルで的確な案内

上記3社は課題が残るところですが、こちらは好事例が目立ちました。

根幹となる東海道新幹線は、ほかの新幹線より開業が古いことと経由地から、自然災害に比較的弱い新幹線と言えます。

今回の台風では「今日は、東京へは行けません」という非常にシンプルな言い回しで旅客案内をしており、混乱は他社に比べると普段の輸送力の割には少なかったのではないでしょうか。

全線運休でも差し支えない情勢でしたが、名古屋~新大阪間は12日早朝だけ3往復走らせらり、11日最終便の直後に救済ののぞみ号を走らせたりと、柔軟さはさすがのひとことです。

一方で、本来の最終便は阿鼻叫喚の混雑だった反面、救済便はガラガラだったようで、関係部署の連携が少し間に合わなかったのでしょうか。

以前から柔軟な特発列車を設定してきたJR東海。

接続在来線もしっかり接続させるなど的確な対応にはいつも感心させられます。細かい点をあと一息といったところでしょうか。

JR東:前回課題は対処しつつも……

前回の反省もあってか、「台風が通過したのち設備点検を行い、飛来物の撤去、被災設備の修繕等を行い、その後、運転を再開」と念入りなアナウンスがされています。

更に、前回は一部路線で運転再開時刻が大幅に延びたことを踏まえてか、「少なくとも昼まで運転を見合わせます」といったアナウンスがされています。

こういった対応はJR東日本らしい柔軟さを発揮している一方、計画運休より前に規制値に達したのか、中央本線で4列車が途中駅抑止→沿線避難所に避難という対応がされた模様です(詳細は続報待ち)。

都心部の東急・京急とは少し事情が異なるかと思いますが、運転見合わせのアナウンスを早めた結果として精度が下がっているのだとしたら、国土交通省の指針と異なる動きをして失敗した事例とも言えそうです。

計画運休は災害に見舞われる前に安全を確保する手段ですので、この情報が正しければ計画運休大失敗と言えます。

続報待ちとなりそうですが、中央本線では梁川で路盤の浸水も発生しているようですので、今後の検討材料になりそうな課題ですね。

筆者の考える計画運休の未来

最後に、私が考える計画運休の今後について記しておきます。

これからはこの計画運休が台風・大雨などの自然災害のスタンダードとして定着していくのは間違いなさそうです。

僅か5年で全国区になっただけの威力の大きい対応策ですが、やはりまだ「なるべく動かしたい」という本来の基本概念が強く出過ぎて混乱している事例が多そうです。

もちろん、ギリギリまで動かしてくれたおかげで救われた利用者も数多くいますが、やはり計画運休の大義は輸送障害が発生する前に運転を取りやめることにありますので、今後はもう少し余裕を持って取りやめ時刻を設定する方向に進むのではないでしょうか。

最初のJR西日本の批判を乗り越えて、今や全国区になった計画運休。

災害大国ですので、いつかは起きる次の災害でより高い精度で発揮されることを願います。

結びになりますが、この度の台風の最中お仕事をする業種の皆様の活躍があって日本が護られています。どうかこの後もご安全に……!

おすすめ記事はこちら

コメント