2019年9月5日、神奈川新町駅〜仲木戸駅間「神奈川新町1号踏切」にて発生した京急電鉄と11tトラックの踏切道での衝突脱線事故。
丸二日間に及ぶ輸送障害で沿線・乗り入れ路線・平行路線の利用者を中心に大きな影響を及ぼしました。
マスコミ各社が報じる「事故は未然に防げなかったのか」「京急は悪いのか」とともに、京急のファンが多く口にする「京急は安全」は正しいのか、数々の資料・文献を元に考えていきます。
お読みいただくにあたって
当サイトは鉄道趣味サイトです。資料や文献は報道各社よりは多くのものを用意・研究していると思いますが、正確な事故原因は事故調査委員会の公式発表をお待ちください。
「可能性がある」以上のものについて、独自で考察しているものです。
京急電鉄をはじめとする関係各社へのお問い合わせはお控えください。
京急電鉄・トラックドライバー・運送会社等を批判するつもりは全くございませんので、該当会社から修正・消去依頼があった場合は予告なく訂正・掲載取り下げをする場合があります。
事故の概要
2019年9月5日午前11時44分ごろ、京成電鉄青砥駅始発の快特三崎口駅行き1088SH列車が、神奈川新町駅〜仲木戸駅間の神奈川新町1号踏切道にて11tトラックと接触、前3両が脱線した事故が発生しました。
車両・軌道・送電設備に大きな支障が発生し、該当区間については丸二日経った9月7日午後1時18分ごろに運転を再開しました。
元地元民見解:神奈川新町駅〜仲木戸駅の複雑な道路事情
やっと一部メディアでも報じられるようになりましたが、今回の事故の引き金は仲木戸駅周辺〜神奈川新町駅特有の複雑な道路事情にあると考えています。
現場は京急電鉄の仲木戸駅や神奈川新町駅のほか、JR東日本の東神奈川駅などがあり、東側から京急線・京浜東北線・横浜線・東海道本線・横須賀線が並ぶ京浜間の鉄道大動脈です。
さらに視野を広げてみると、これらの鉄道線路の西側には「東海道」国道1号線・東側には「第一京浜」国道15号線・「横羽線」首都高速神奈川1号線といった交通量が非常に多い幹線道路が並行して存在する、まさに東京〜横浜間の生命線です。
道路と線路が同一方向に密集している場所は全国に複数ありますが、線路・道路ともに線路の数・車線数を考えると全国トップと言って差し支えがないでしょう。
昔から栄えているこの地域ですが、昔から栄えているゆえに一歩路地に入ると細い道・古くからある道が存在しているエリアとなります。
今回、事故原因のトラックは国道15号線東京方から神奈川二丁目信号を右折にて、片道2車線の仲木戸駅南端ガード下を潜る道に入りました。
Googleマップ・ストリートビューなどを先にご覧いただければ一目瞭然ですが、この道こそが「絶望」の入り口となっています。
そのまま直進すると東神奈川駅を地下道で潜る道に繋がっていますが、幅・高さ・カーブともに非常に小さなものとなっており、普通乗用車の交通量は多く、地元民もよく使う道ながら、大型トラックが国道1号線方面へ通り抜けることはできません。
現場の手前には大型車はUターンをするよう道路標識に記されていますが、交通量が多い道で大型トラックがUターンをするのは現実的ではありません。
仲木戸駅手前に「高さ2.8m 超える車はUターン」という標識があり、どうしようと考えながら仲木戸駅のガードを潜ると信号に差し掛かります。
この交差点で頑張ってUターンをするか、直進ののち右折して駅のロータリーに入る、入り口は狭い路地に左折して入るといういずれかの選択をすれば問題はありませんでした。
しかしながら、一番広い道は右折ですので、ドライバー心理を考えると右折してしまうのも当然でしょう。
その先に待ち受けているのは一方通行のロータリーの出口ですので、その次の鋭角の交差点を頑張って右折する必要があります。
11tもの巨大なトラックのサイズを考えると、ここも曲がりたくないというのがドライバー心理としては当然です。
しかし、直進したら最後、じわじわと狭まっていく線路ぎわの路地を神奈川新町駅まで進むしかありません。
今回の事故を受けた地元民からは、入り口は広いのにどんどん道幅が狭まる様を「アリ地獄」と例える方も見られましたが、まさにその通りかと思います。
そして全幅わずか4m程度の路地を進んだ先の神奈川新町1号踏切付近ですが、道幅などを考えると左折の方が出やすい道路構造となっています。
しかし、左に進んで新町検車区の踏切を進んだところで、その先も路地。
右に曲がれれば目の前に元の第一京浜に戻れる……通行人や行き交う車も多いなか、現地で4分以上離脱に苦戦、焦りや恥ずかしさでパニックに近い状態のトラックが強行して踏切に突入する心境も想像に難くありません。
踏切にいた京急職員が槍玉に上がっているが……
休憩のため歩いていたと思われし京急職員2名の姿が事故直前のドライブレコーダーに映っており、彼らの行動についても話題になっています。
報道各社の情報が正しければ、彼らは貴重な休憩時間にも関わらず、トラックの誘導にも協力していた上、非常停止ボタンの押下についても報じられています。
制服を着ている拘束時間内とはいえ、カンテラを持って走って列車を止められる状況でないことは明らかで、適切な処置を施している以上、彼らに責任追及をするのは誤りです。
神奈川新町駅は乗務員の乗継拠点であることから、駅にいたその他の職員の存在(退避の1056列車ほか)も挙げられますが、どのみち線路配線上踏切同様に視認出来ない場所ですので、彼らがどう頑張っても事故を防げたかと言えば難しいでしょう。
そもそも止まった場所を考えると、神奈川新町駅構内を見渡す前には非常ブレーキを扱っていたことが推測できます。
以上を鑑みると、「適切な停止措置を取っているにも関わらず、列車が止められなかった」という着眼点については間違ってはいないと言えるのではないでしょうか。
「なぜ列車が止められなかったのか」は真剣に考えて然るべき課題
大前提として、踏切進入をした自動車側の過失が100%であり、鉄道事業者は本来責められるべき対象ではありません。
これは踏切道は鉄道事業者の敷地に鉄道事業者が善意で設置している場所で、踏切道の進入前に一旦停止・列車往来を確認する義務が車の全てのドライバーにあります。
進行していた列車が非常制動をかけて600m以内に停止できる設計は、昔の法律を基にしたものではあるものの、現在も完全なトンネル・高架などの特例を除いて全ての鉄道事業者はこれに倣って設計をしています。
京急電鉄でもこれに倣って安全対策をしているほか、メディアがセンセーショナルに報じている止まれる仕組みだったのかという点について、京急電鉄側も認めている事実ですので、これについては深堀りをして考える必要があります。
もちろん、明らかに止まれない直前に踏切へ進入した状況であればやむを得ないところですが、今回は踏切鳴動から突っ込んでいた状況下で列車を止めることが出来なかった状況ですので、京急電鉄の安全対策を問う声が上がるのもおかしくはありません。
京急の安全対策
闇雲に疑問を投げかける各種メディアや自称アナリスト氏には毎回呆れてしまいますので、まずは京急電鉄の安全対策について考えます。
神奈川新町1号踏切は交通量・列車通過本数も多い踏切で障害検知装置などの安全対策を数々施しています。
「触車事故」防止
まずは鉄道各社で標準的な設備となっている、「踏切障害物検知装置」と「特殊信号発光機」。
踏切障検については様々な方式が存在しますが、そもそも適切な動作が既に報じられているほか、11tトラッククラスであれば初期のシステムでさえ認知できるサイズですので、方式の議論は除外出来ます。
これについて、京急電鉄では運転士がそれを現認して非常ブレーキを作動させる方式を採用しており、他の大手私鉄ではATS,ATC連動で自動的に停止させる仕組みがあることをメディアでは報じています。
しかし、これは他の大手私鉄でも原則論であり、そういう仕組みが存在していても全ての箇所で連動させられない背景も存在します。
これは、交通量が多い箇所・直前横断がある箇所で毎回非常停止をしていると正常な運行に支障をきたすというものです。
この考え方についても安全側に設定するという鉄道の大原則ではかなり例外的なものですが、実運用上の制約から、運転士の判断で減速するという方法を取るのもやむを得ないところでしょうか。
また、この自動で止まる仕組み=列車は止められれば絶対に安全という考え方には例外として、火災系のトラブルが存在します。
古くは北陸トンネル列車火災事故が近い事故例ですが、こちらは当時の国鉄の規定に従って非常停止措置をとった結果、多数の死者を出しています。
この事故以来、鉄道マンには「異常時の停車は大原則だが、火災は例外」という考えが刻まれています。
最近の目新しい事故例として、2017年9月10日に発生した小田急電鉄小田原線・代々木八幡〜参宮橋駅間の沿線火災です。
列車が通過しないよう、良かれと思って踏切道の非常停止ボタンが押下された結果、列車は現場付近で停車して安全確認を実施。
その結果として車両が延焼、大幅なダイヤ乱れとなったもので、小田急電鉄では2015年にATCと非常停止ボタンが連動するようになったばかりです。
こちらについては今のところ抜本的な対策が取られていないものの、踏切非常停止ボタンとATCを連動させることや、その後の処置の内部規定について日本中の鉄道事業者の考えに一石を投じるものとなりました。
踏切非常停止ボタンで列車を強制的に停止させるという安全対策はここ数年で急速に広まったものですので、今後様々な議論が必要な分野だと私は考えています。
よって、一部メディアが京急電鉄の現状の取り扱いを批判しているのは大きな間違いです。
「事故発生後」
京急電鉄では独自の安全対策が多く施されており、これは特筆に値します。
まず、軌道側としては、全国に先駆けて踏切直後に脱線防止ガードを設置して対向列車との接触を避ける構造となっています。
今回の事故では大きく傾いて停車こそしていますが、重量級のトラックが架線柱や防音壁と列車の間に挟まっていますので例外的事象でしょうか。
この辺りは事故調査の進展を待つ形となりそうです。
そして、「丸山イズム」とも評される、先頭電動車設計です。
これは、先頭車が脱線すると後続車両も横の力が働いて大きく脱線する・先頭電動車とすることで脱線しても転覆しないという研究結果に基づいたものです(鉄道ピクトリアル誌98年7月号p95ほか)。
信号回路など様々なメリットが存在することが彼の研究により明らかとなっており、京急電鉄では現在も乗り入れ他社車両を含めてこの編成構成をしています。
京急電鉄新1000形ステンレス車“銀1000”についてもこの設計は継承されており、電動機や制御装置といった電装だけではなく、様々な補機を先頭車に設定しています。
登場時は京急らしくないステンレスボディと散々な評判でしたが、京急のDNAは確かに引き継がれた車両です。
さらに、前面強度を確保するために鋼鉄製の前面部としているほか、この“銀1000”では京急の歴史では久々の高運転台になっており、今回の事故でその安全設計の高さにも注目が集まりました。
余談ですが、並行するJR東日本の安全設計としてクラッシャブルゾーンについても話題となりました。
列車運転士が殉職した重大事故である成田線の過積載ダンプカーとの踏切事故を契機にJR東日本が考案している安全設計です。
運転台にクラッシャブルゾーン=壊れることで衝撃を車両上部に逃す構造を設けることで、先頭車乗客や乗務員の保護を目的とした設計となりました。
京急電鉄の先述の設計思想とは大きく異なるものの、いずれも事故事例でそのフェイルセーフは発揮されていますので、どちらが正解かという議論は不毛なものです。
安全対策は不十分だったのか
報道各社が槍玉に上げるこの課題ですが、一個人の見解としてはやむを得ない点はあるものの改良の余地あり、と考えます。
そもそも、視認して止まれる保安設計で設置している特発が、視認してからブレーキをかけて間に合わないのであれば保安装置の意味を成しません。
神奈川新町1号踏切ですがには、踏切の10m,130m,340m手前に特殊信号発光機=以下特発が設置されており、この340m手前の特発について、京急電鉄は300m手前から視認できる=視認してから非常ブレーキをかければ間に合ったはずとしています。
一方で、運転士は特発を視認してから非常制動を取り扱ったが間に合わなかったとしています。
事故前にも何度も当該区間に乗車したことがあるほか、今はYouTubeなどで鮮明な前面展望動画も見られるご時世ですのでぜひご覧いただければと思いますが、当該特発は神奈川新町駅場内信号機のすぐ後ろに近接して設置されており、更に左カーブの左側・車庫で架線柱が乱立と、視認性においては見えない・もしくは見えにくいとも言えそうです。
子安駅南端には子安1号踏切があるからそれ以上手前には設置出来ないのでは?という意見もありますが、もし同位置でも上り本線や車庫線の右側(西側)架線柱に設置していれば、子安駅構内から確実に視認することが出来たはずです。
特発位置不適は2009年の奥羽本線の鉄道事故調査報告でも指摘されている事象です。
この点については公式発表を待つべき点ですが、左カーブの左側という配置が視認遅れの原因という可能性については、今後の争点になってくるのではないでしょうか。
自動停止=正義ではないものの、テコ入れは欲しい
メディアが報じる自動停止についてですが、先述のように、全ての特殊信号発光機に対して非常ブレーキを強制するシステムが正しい訳ではありません。
ただ、特発が作動した場合、現場の踏切を視認できる時点から非常ブレーキを掛けて間に合う速度まで落としておく=大丈夫なら再力行すればいい仕組みであれば、費用はかかるもののどこでも活用出来るでしょう。
ATS,ATCでは速度制限地点までの距離に応じて徐々に速度を抑制する仕組みがあります。
これらの発想を応用した、自動で止まる・特発を現認したら止まるの2択ではなく、実地を現認してから止まれるような設計思想が好ましいのではないかというのが筆者の考えです。
保安装置のプログラムまでは専門を超えてしまうので詳しいことは記せませんが、この辺りの次世代設計に期待したいところですね。
不幸中の幸いだったこと・特に不運だったこと
起きてしまった事故の“If”を考えても……という意見もありますが、今回の事故で列車の乗客が軽傷者のみだったことは不幸中の幸いとも言えます。
まずは対向列車が手前で停車できた点が挙げられます。
列車防護措置が適切にできていたことの賜物ですが、1088SH列車の接触前後の対向列車のダイヤが少しズレていたらと考えると恐ろしいところです。
事故の3分前には神奈川新町駅11:41着の1123D列車が、後続は同駅11:45着の1031列車が存在しました。
多重事故の例として三河島駅事故や鶴見事故といった重大事故の例もありますが、タイミングが異なっていたら多くの死傷者を出す事故になっていました。
また、京急電鉄の拠点駅の1つである神奈川新町駅での事故ゆえに、人員や設備面で初動対応や事故後の復旧については比較的動きやすかった現場でもあります。
逆に、拠点駅である神奈川新町駅が使えなくなってしまったため、輸送障害の範囲が大規模になってしまったという面では不運だったと言えるでしょう。
車庫が寸断されているにも関わらず京急川崎駅以北で通常ダイヤに近い形で列車運行を続けた点や、架線柱が倒されて送電に支障が出ているなか、き電区分を変更して横浜駅〜上大岡駅の区間再開をした点などは、さすが京急電鉄といったところでしょうか。
踏切事故と安全の未来
「踏切道がなくならない限り踏切事故は発生する」というのは大前提であり、どんなに対策を施したところで直前に車で進入する車との事故を防ぐことは困難です。
長期的には主要路線の完全な立体交差が望まれるところではありますが、向こう数十年で解決するのは不可能です。
京急電鉄については、万が一の事故発生後の安全設計をはじめ、同業他社に比べて独自の安全設計の開発に秀でている会社ですので、今回のような防げる可能性がある事故を少しでも減らせる新技術の考案に期待して止みません。
末筆ながら、今回の事故対応に終われた京急電鉄職員の皆さまをはじめ、振替輸送・代行輸送などで対応された多くの事業者の皆様のご尽力に感謝申し上げます。
事故についての記事・内容については様々な考えがあるものですので、賛否両論かと思います。
コメント欄や各種SNSでご意見も伺えればと思いますのでお待ちしております。
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参考文献
鉄道ピクトリアル誌1998年7月号
本文記載の事故に関する各事故の報告書 等
コメント
注意
私のコメントには、個人的な意見と怒りが多いです。
あと、長文です。
個人的には、マスコミの報道の仕方や行動についても触れて欲しかった。
マスコミは、線路内に不法侵入していました。それは、マスコミが叩かれるべきじゃないでしょうか。そこに触れてほしい。
今回は、明らかに、トラックが悪いと言わざる負えないでしょう。トラック運転手が亡くなったのは残念ですが…
京急は、被害者なのに、被害者が叩かれるのは、おかしいでしょう。
被害者の京急を叩くのは、一部のマスコミやコメンテーターです。
「鉄道会社を批判するわ、鉄道を使わない人が言うわ」相当ひどいものです。
高速化が事故の原因と言う人もいますが、それは違います。
第一に、事故車両の運転手と車掌、現場対応の京急社員の心のケアをして欲しいです。
そして、安全防止策を国として、見直して欲しいです。
井田清助さま
閲覧・コメントありがとうございます。
マスコミの取材方法の問題は私も目に余ると感じています。
報じ方についても多くのメディアは知識・調べが甘すぎるし、某アナリストさんのような絵空事を言っている自称知識人の存在も違和感を覚えます。
発生した事故について特定の者を批判することは、メディア同様に本旨を外れてしまうため、あえて割愛した次第です。
記事の要約にもなりますが、
・大前提として、踏切事故の過失はドライバーにある
・ドライバーが事故を起こすような道路事情という複雑な背景
・京急電鉄の当該乗務員を含めた職員の皆様の対応は、現在出ている情報の限りでは問題はない
という3点は前提条件ですね。
これについては多くの方が言及している点ですので、本記事では噛み砕いて説明するに留めています。
鉄道知識全振りの趣味サイトとして、今後の事故調査の進展で中長期的な視点で考えたとき、課題として挙げられる点として
・京急電鉄の設備上の問題点はなかったのか
これが今回の事故調査の争点になるのではないかと考えています。
マスコミの批判は雑で、素人の着眼点ながら、私は的確な指摘だと思います。
会社の「間に合ったはず」乗務員の「信号を現認して非常ブレーキを扱ったが間に合わなかった」
……この矛盾は事故調査のプロフェッショナルである、航空・鉄道事故調査委員会が考えるレベルの難しい問題ですが、この矛盾は同業他社を含めてしっかり考える必要があると思います。
私個人の見解ですが、神奈川新町駅場内信号機・神奈川新町1号踏切の特発(特殊信号発光機)の設置位置については適切なものではなかったと考えています。
仰るように、当該乗務員・関係者は大きなダメージを受けていることと推察できます。
会社によって事後フォローは異なるので何とも言えませんが、若くして難しい動免取得・ハンドルを握る夢を叶えた運転士さんの将来を握りつぶすことがないよう願って止みません。
信通関係の仕事をしている者です。記事を非常に興味深く拝読しました。
私も同じく、「列車防護を適切に行っていると思われるにも関わらず、
列車が止まりきれていないこと」を疑問に感じました。
本文にもありますが、特発動作しても止まりきれないのでは意味がありません。
そこで技術上の基準を定める省令の解釈基準を改めて見返してみましたが、
・踏切の遮断時間は20秒標準、15秒以上とすること
・特発は制動距離以上の地点から視認できるよう設置しなければならない
ということは記載があります。
しかし、「踏切遮断終了と同時に特発動作した場合に、線区最高速度であっても
踏切道までに停止できること」を規定する条文が見つけられませんでした。
京急さんの実施基準がわからないため、当該の踏切の制御はわかりませんが、
仮に最高速度(120km)で接近する列車の遮断完了から到達までの時間を15秒として
踏切設計していた場合、遮断完了時点ではすでに500mまで接近していることになります。
実際には障検の動作時間や運転士の反応時間もあるのでさらに縮みます。
これではいくら特発が見通し600m以上確保していようが意味がないように感じます。
もし上の理解が正しいならば、踏切制御の抜け穴のようでもあり、
同種の事故を防ぐためには解釈基準の見直しが必要と思います。
事故の原因は複数あるが、主要原因は・・・
「障害物検知センサーも非常時停止システムも正常に作動していたにもかかわらず事故になった」
情報操作なのか何なんのか知らんけど、踏切で異常が発生したときに止まれるように列車は手前で信号を検知するように事前にシステムを作ってある。
事故を起こした下り列車ばかりに意識が言っている人たちが多いようだが、実際に、上り列車は停車できてる。
踏切の警報機が鳴り始めても、列車がすぐに来ないのは「安全を見越して距離マージンを取ってあるから」
小学校6年生にもわかる、簡単なシステムだ。
ブレーキが間に合わなかった、というのは言い訳に過ぎない。
京急は、各信号機の位置は、運転席から見える位置にある、と公表してる。
カーブで見えなかったのでは、という意見もマチガイ。
YOUTUBEで運転席の真後ろから撮った動画がアップロードされているから、誰でも見られる。
京急の列車の速度が速いのであれば、警報機を鳴らすタイミングを前倒しして、「早めに鳴らし始めればいいだけ」
JRほかの在来線列車よりも速度が速いのだから、実際に踏切で警報機が鳴り続ける総時間は、ほかの路線と大して違わないはず。
340m(踏切の手前特発設置位置) + 300m(特発の見通し距離) = 640m
湿潤など悪条件下でも 600m以内停止出来る仕様であるから 40mのマージンあり… となるのだろうが……
120キロ走行なら 40mは 1.3秒
600m規定 が空走距離を含むハンドル操作を始めてから のものなのか、そうではなく 効き始めてから のものかにもよるが、設置場所は適切 と言いきれるものではない気がする
他の踏切のものと誤認の恐れがあるので、それ以上手前には置けない というのも分岐駅の出発信号機にあるような対象を書いた補助板を付ければ足りる話であるので説得力は無い
特発確認で即非常制動 というのがルールだったとしても、直前横断などで常習的に特発が点灯し、先ず常用最大制動で様子見、後に非常制動を打つ というルール違犯を当然に誘発し、運転士の操作を責めきれない
乗客としては事故を起こされてはたまらないのは当然だが、頻繁に非常制動など打たれては、それもたまったものではない……
トラックが無理な横断を試みたのが 100%悪いのは確かだがもし、遮断棹が降りているので止まってしまい、踏切内に立ち往生 だとしたら、突き抜けるのが当然で止まるな と言うのは簡単でも、躊躇したのを責めきれない
設備、電車運転士、トラック運転手、踏切を渡る者・車のルール違犯…
全てにそれなりの非があり、全てが揃ってしまったために起きた事故… と想う……