2019年(令和元年)7月1日より、新会社「JR東日本サービスクリエーション」が始動して、JR東日本管内を中心に活躍しているグランクラスやグリーン車のアテンダント・車内販売員の皆さんはこちらの所属となります。
新会社設立となるといい響きですが、本日から最後の砦であった北陸新幹線でもメニュー大幅削減と、主要路線で稼ぎ頭のホットコーヒーが廃止されています。
急激な変化をしているJR東日本の車内サービスの今に迫ります。
朝の列車の売上ダメージは深刻か
皆さんは、朝の新幹線や特急で車内販売を使うとしたら、何を購入するでしょうか。
車内販売を使う大人世代の方なら、コーヒーやサンドイッチがほとんどでしょう。
新幹線では短区間列車は既にほとんど車内販売が行われていませんが、あずさ号の新宿~八王子間といった短区間利用でもコーヒーを買ってお仕事前の一息をする光景をよく目にしていました。
そんな朝の稼ぎ頭であるコーヒーが無くなってしまい、いよいよワゴンで販売に行けない普通列車グリーン車と同じメニューとなってしまいました。
朝については「売るものがない」「買うものがない」……といったラインナップとなっています。
なお、先月末は「飲み納め」をするべく、通常よりも多い利用があったそうです。
私が先月末乗車した列車でも、利用者からも寂しがる声を耳にしました。
これはダイヤ改正前にも電車グッズ関係がかなり売れたと話しているアテンダントさんがいらっしゃいましたので、同様の「最後だし買っておこう」といった需要が働いたものと推測できますね。
機会損失をしても構わない理由とは?
朝の列車の車内販売では、コーヒーポットを4本以上積み込んでいる姿を東京駅などで目にすることができます。
途中の仙台駅などで追加補充をする分を差し引いても、閑散期で50杯分、繁忙期なら最大80杯~100杯分程度の機会損失です。
4分に1本発車している新幹線各列車でこれだけの損失をしているとしたら「もったいない」と感じる方も多いでしょう。
JR東日本では、親会社主導で人口減少社会に向けた取り組みとして、駅の子会社委託化や窓口業務の削減などを積極的に進めており、これは列車内についても車掌の人員削減(1名化)を進めるための全席指定席化という動きでした。
1名で回れない分をカバーするため、既存の車内販売アテンダントに委託業務として車内巡回や切符発券以外のご案内業務をさせよう、という基本構想で今回の新会社設立となっています。
コーヒーの販売は1件1件に時間がかかる・コーヒーを基地で作る要員が必要・積み込みに行く配送要員も必要と、原価は安いものの人件費が多くかかっており、委託業務を行うには目の上のたんこぶでした。
この辺りは過去記事で詳しく触れていますので、あわせてどうぞ。
この動きは以前から検討されていた?
JR東日本、そして車内販売事業を展開していたNREは、以前は同業他社よりも力を入れていた会社でした。
他社でも採用事例の少ない生ビールサーバー搭載ワゴンを積極的に運用していたり、ICカード決済やクレジットカード決済を真っ先に取り入れたのもJR東日本管内でした。
営業列車も売上が下がる中でもなるべく多くの本数を維持しようと努力していました。
そして、最近の在来線の標準的な構造となったE259系・E657系・E353系といったグリーン車に車内販売準備室を設置した形式では、準備室にシンクが設けられています。
これは、小売業ではなく喫茶店営業が出来るようにするための設備であり、生ビールやカップ販売のアイスコーヒーを販売するために必要な設備です。
つまり、E353系の開発段階では「幅広い商品を販売できる設備を作ったからNREさん頑張ってね」というのがJR東日本の方針だったと推測できます。
また、3月ダイヤ改正での発表も、直近まで物事が決まっていなかったことの裏付けと言えそうです。
通常であれば、切符購入が出来る1か月前には廃止のアナウンスをするのが妥当であったところ、一部駅での掲示に留まり、ホームページで掲載したのはその数日後というものでした。
社長の変更も関係あり?
社会人の方なら社長の変更で意向が変わることは多くあるでしょう。
現在の日野正夫社長は、JR東日本の財務部門で長い経験を持っている方です。
……つまり、鉄道現業・利用者の動向などに明るい方ではありません。
JR東日本の中長期計画=変革2027でも、人口減少社会への対応という建て前で、とにかく人件費削減を第一とする動きとなっています。
人員の削減・人件費の削減が最も簡単で効果的な経営体質改善方法なのは言うまでもないのですが、旅の魅力・駅や車内の利便性を削いでまでやろうとする視点は、利用者からも批判的な目でみられても仕方がありませんね。
今回の委託業務化が吉と出るか、凶と出るか。今後の動向に注目が集まります。
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