【批判に勝てるか】烏丸線新型!京都市交通局20系2131F 近鉄線でも試運転

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京都市交通局では、烏丸線で運転される10系のうち、開業時より使用していた9編成の置き換えに向けた新型車両20系の試験を続けています。10月12日には近鉄京都線を日中時間帯に走行し、関東っぽい印象の新車という声も聞かれる注目の車両です。

他社局と比較しても極めて順調に試験が進められている一方で、京都市民・沿線利用者などからの批判的な声も多く、政治的な矢面に立たされる少し不憫なスタートです。

新型車両の準備が進む烏丸線

近鉄の名所、木津川橋梁を通過

京都市営地下鉄烏丸線では、6両編成の10系20本が運用されていますが、このうち最初の北大路駅〜京都駅間の開業時に投入された9編成は今年でデビューから40年を迎えます。

これらの車両の代替として、同局では2021年度から2025年度にかけて、新型車両となる20系電車9編成の導入を行う計画です。

2021年7月末に近畿車輛から京都市交通局竹田車両基地まで最初の編成となる2131Fの陸送(トレーラーによる輸送)が実施され、その後は線内の夜間試験・日中の試運転、そして近鉄線内での深夜試験が進められていました。

10月12日には初めて近鉄京都線の日中時間帯の試運転が実施され、近鉄奈良駅へも入線するなどファンの脚光を浴びています。

車両の詳細については落成時に記していますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

近鉄ユーザーからも注目

種別灯(スカート付近)の有無で印象も変化

烏丸線の世代交代は、京都市民以上に近鉄ユーザーからの関心が高い印象も受けます。

近畿日本鉄道は営業エリアが広く様々な車両が運用されていますが、特急形車両を除外すると、「シリーズ21」との愛称がある3220系・5820系・9020系・9820系・6820系の投入が終了してから実に13年間もの間、新型一般車両の製造が行われていません(特急車両は「しまかぜ」「ひのとり」など多数)。

乗り入れ車両を含めても、阪神なんば線開業に合わせて阪神電車が投入した1000系の最後の増備が2011年となっており(阪神はその後も自社線向けの新造車を投入)、近鉄線内を走行する一般車両としても10年ぶりの新形式・新車となります。

近鉄線内では種別灯も点灯しており、烏丸線内とも異なる印象を受けます。

今後のスケジュールとして、11月末までは機器調整と試験運転を、12月から翌年3月上旬まで運転訓練を行うこととされており、デビューは2022年3月下旬の計画です。2022年度からは毎年度2編成ずつの導入予定が示されているほか、今月17日には見学会を、来年2月には試乗会も予定されています。

京都市民からは厳しい声も飛び交うが……

京都市の財政は以前より芳しいものではなかった上、特にインバウンド需要への投資と観光客相手のビジネスを行う住民が多かったことで、税収への影響もかなり深刻なものとなっています。

そのため、その京都市の直営となる市営地下鉄が厳しい財政状況下で「新車を買った」という内容で、否定的な声も聞こえてきます。

既に京都市も(外部PDF)にて長文の反論を掲載している通りで、新車両の導入はメンテナンスの合理化でコストカットや運用効率の向上など様々な恩恵を享受できることは、鉄道の基礎的な知識があれば明白です。

ただ、何億円もの大きな支出となる車両代替という出費は、これらの背景知識がなければ悪目立ちしてしまい、政治的な批判の種となることは仕方がないことなのかもしれません。

特に公営地下鉄事業の目先の経費削減事例としては、東京都交通局が車齢の浅い中間車を集めて再活用した結果、僅か10年後に廃車を産んだ10-300R形先頭車が有名です。東京都交通局ではこの失敗が大きかったのか、他の事業者に比べても延命より長期的な効果を狙って新造車を投入する傾向が強くなりました。

民間事業者を含めた最近の事例では、小田急電鉄が更新時期の1000形のリニューアルを発表していましたが、2020年度より新製投入を中心とする計画に変更したことが話題となりました(過去記事)。リニューアルにもコストが掛かるため、新造した方がトータルで安くなると判断されたものと推察できます。

これらの事例を見ても、新造車両投入計画を延期することは問題の先送りにしかならず、車両投入を中止する行為はトータルの支出を増大させる悪手となることは自明です。そもそも、延命するか新車を入れるかという議論は経年25年〜30年程度の車両に対してされる話であり、経年40となる既存の10系9編成に対しての代替案はないように感じます。

最大のコスト削減は、最新技術による省エネルギー・自動運転による将来的なワンマン化・最新機器によるメンテナンス効率の大幅な向上といった維持コストの低減であり、これらは今回製造された20系の基本仕様から確実に果たされると断言できるでしょう。

しっかり節約もしている20系

当初デザイン案は曲線的だった20系の前面形状

政治的な論争は当サイトの守備範囲外ですので、鉄道趣味の観点から見た京都市交通局20系ーー特に公式発表では強く触れられていないポイントを見ていきます。

鉄道車両の新形式開発・新車両購入はいずれも多額の出費となりますが、京都市交通局20系ではいくつかコストを抑えている工夫が見受けられます。

車両のエクステリアデザインは総合車両製作所(J-TREC)が落札しましたが、その落札額は1円です。無料だと支障が出るため一応値段を付ける……という諸般の都合とはいえ、ほぼ無料で3種類のデザイン案を提供してもらっている格好です。著名なデザイナーさんに依頼する事業者も増えてきたなか、このコストは開発費用抑制に大きく貢献していることでしょう。

デザインを安価で請け負ったのはその後の車両受注を狙った動きと言えますが、総合車両製作所は理由こそ不明ながらこれを辞退。製造はお膝元の近畿車輛が受注しています。

完成した20系で筆者が特に気になったのは、前面ガラス形状です。先述のPDFでは「前面のガラス窓の面積を拡大し、乗務員の視認性向上」と記述しているものの、近年の鉄道車両ではかなり小ぶりな印象です。

京都市営地下鉄のデザイン3案のうち採用されたB案では、「前面の造形に曲線を多用」としており、そのまま製造されたと仮定すれば、東京メトロのような曲面ガラスを多用した車両が生まれるはずでした。

鉄道車両のエクステリアデザインを振り返ると、ここ20年程度は大型ガラスや曲面ガラスのコストが安価となったことで、これらを使用したデザインが一般的です。

乗り入れ車両である近鉄3220系を含むシリーズ21を見ても、運転台から方向幕までが一体となった前面形状で、これは京都を走る阪急・京阪なども同様です。関西圏だけのトレンドではなく、このトレンド自体は全国共通のものでした。

一方で今回の20系電車は、前面を黒塗り(ブラックフェイス)として近未来的な印象ですが、ガラスの面積を視認性に役立つ箇所のみ拡大(従来車比)した印象です。

ガラス面積を抑えることは、事故などで前面ガラスに損傷が発生した際の交換の手間とコストを抑えることに繋がります。JR東日本がE233系から現行のE235系へ移行した際にもこのコンセプトが取り入れられ、この採用理由が明示されていました。

デザインコンセプトをなるべく維持しつつ、曲面・大型ガラスを最大限に避けた、開発陣のセンスが輝く形状と言えるでしょう。

このほか、インテリアで特徴的な「おもいやりエリア」は西武鉄道40000系で採用されて注目されたものですが、こちらについても西武では専用の大型窓としたところを、京都市20系では通常区画の窓と共通化していることが見て取れます。こちらも専用品を避けることで、予備部品を減らすこと・設計や製造のコストを抑えていることが想像できます。

細かい点では、近鉄シリーズ21設計の一部活用も伺えます。製造元が近鉄母体の近畿車輛ならではで、屋根上機器構成や台車などから同社の血を色濃く感じます。

乗り入れ先と一部を共通化されていると、製造コスト以外にも異常時対応のメリットがあります。逆に捉えれば、長年ファンの間で待望されている次世代の近鉄一般車両にも20系の仕様が生かされるかもしれません。

当サイトでも各社局の新型・新形式を数多く取り扱っていますが、この20系電車は“今ドキ”なデザインと実用性のバランスが取れている印象です。一般利用者だけでなく行楽需要が大きい路線の車両としても京都ゆかりの装飾が数多く取り入れられるなど、内外ともに非常に優秀な車両だと感じます。

ネガティヴな意見に負けず、新しい京都の“顔”として利用者に親しまれることを願って止みません。

20系で採用された伝統産業素材は販売・ふるさと納税返礼品としての出品も予定されており、京都市交通局章や表記銘板といった、ファン層に刺さる嬉しいものもありますので、興味がある方はぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。

画像元ツイート

記事内掲載写真は、フォロワーのやまとじ様(@yamatoji_700T)撮り乗り鉄さま(@torinoritetsu)より掲載許諾を頂いています。許諾を頂いた順に紹介します。

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コメント

  1. FK生 より:

    見解は相応に理解できますかが、在阪私鉄では車齢50年超の車両が良く手入れされて第一線で運用されている現実を知れば、「単に40年超だから新車置換」とも思える市当局の説明に納得の行かない納税者が多いことは当然と思われます。市民の指摘にもあるように、初乗りが日本一高いことは厳然たる事実です。