東京メトロ日比谷線で活躍していた03系の地方私鉄譲渡が進められています。
このうち、中間車も譲渡して3両編成となった長野電鉄譲渡車ですが、2020年のゴールデンウィークのデビューに向けた試運転・乗務員訓練が進められています。
日比谷線世代交代と他社譲渡
東京メトロ日比谷線〜東武スカイツリーラインの直通運転では、先日遂に在来車両の淘汰を完遂・全列車が20m4扉7両編成に統一されることとなりました。
置き換えられた車両ですが、東武鉄道は自社内転用をしている一方で、東京メトロでは地方私鉄への譲渡が進められています。
既に熊本電鉄が営業運転を実施しているほか、北陸鉄道と長野電鉄が譲渡改造を終えて試運転段階となっています。
今回の日比谷線03系の一連の譲渡ですが、18m・3扉車・1067mm狭軌台車・アルミボディ・比較的若い車齢という格好の出物と言われていました。
関東圏では20m級の大型の電車が多く、地方私鉄では入線不可能となっている会社も多く存在しています。
18m級の小型車両を採用している会社としては関西圏の私鉄や都営浅草線系統が挙げられますが、1,435mmの標準軌台車を採用しており、改装コストも嵩みます。
東京メトロでは現在も改造待ち・譲渡待ちの03系を多くストックしており、その数の多さ・中間車のキープ数から3両編成以上で導入する4社目が登場するのではないかと推測する声もあります。
長野電鉄譲渡車の特徴
先述のように日比谷線03系の譲渡車としては3例目となりますが、東京メトロ子会社”メトロ車両”による施工は初めての事例となります。
熊本電鉄では以前から繋がりの大きい西日本鉄道が、北陸鉄道では地元のJR西日本松任工場にてそれぞれの子会社が請け負っており、基本的には購入した鉄道会社寄りで行われています。
この動きに従えば自社施工か、他社車両改造実績も多いJR東日本・長野総合車両センターあたりでの施工かと考えられましたが、少し意外な動きでしょうか。
購入会社ごとに異なる改造メニューとなったため、同じ03系ながら各社で仕様が大きく異なるのも興味深い点ですね。
また、日比谷線の千住検車区内で改造が進められたのも特徴的です。
千住検車区は日常的な検査こそ行うものの、定期検査や大規模修繕については2004年の千住工場廃止以降、半蔵門線の鷺沼工場に集約しています。
それ以外の東京メトロ各路線の車両改造も有楽町線=新木場CRに集約されており、比較的手狭そうに見える千住検車区で大規模な改修・譲渡改造が行われたのはかなり異例です。
元々日比谷線車両の定期検査・修繕(B修繕,C修繕)を行っていた実績を有していたことから選定されたことと思われますが、意外な動きとなりました。
試運転で明らかになった点としては、東急からの譲渡車でお馴染みの自動放送をそのまま03系に搭載している点でしょうか。
湯田中への運転も
長野電鉄では2019年度に2編成導入していますが、最終的には2022年までに合計5編成を導入予定としています。
長野電鉄の普通列車では、車庫のほかかつて営業していた屋代線への分岐駅であった須坂駅のほか、信州中野駅が運転上の拠点駅となっています。
信州中野駅以東については勾配が大きく、東急から購入した8500系は抑速ブレーキがないために乗り入れ不可能となっています。
そのため、3000系については勾配線区対応車両とされており、試運転についても湯田中駅まで設定されています。
なお、終点の湯田中駅は1面1線となっていますが、これは小田急ロマンスカーHiSEを1000系として導入するにあたって2006年に改修したものです。
それまでは2面2線であったものの、3両編成はスイッチバックが必要というややこしい運用でしたので、この改修工事のおかげで3000系も3両編成での導入となったと言えそうですね。
置き換え対象は前職の先輩!
今回の3000系の置き換え対象は、2両編成の3500系・3両編成の3600系です。
ご存知の方も多いかと思いますが、マッコウクジラの愛称で親しまれた営団地下鉄日比谷線の大先輩です。
東京から離れた長野の地で感動の再会となっており、大きな注目を集めました。
譲渡先で同一会社車両同士の世代交代が行われることとなりますが、意外にも実現した例はあまり多くありません。
同一会社から購入するメリットとして、自社が導入した車両の直接の後継形式ゆえに、車体幅・車体長といった基本仕様の心配がないことや、既に取引実績があることが挙げられます。
一方で、地方私鉄にとっては“中古車”が出回る時期は先方の経営計画次第となってしまうため、同じ会社から再度の購入が叶わない例が多数派です。
地方私鉄にとっては限られた予算の関係で毎年少しずつ置き換えたいものの、大手私鉄の車両代替は一気に行われることも多いため、同一形式ながら仕様がバラバラとなってしまう例(205系の富士急譲渡など)など、なかなか一筋縄には行きません。
これらの事情もあり、最近では自治体からの支援を得ることで自社発注車両を導入する例も増えてきました。
上記のような前職の先輩による置き換え自体は少数ながら存在しており、最近ではインドネシアへ譲渡された103系が205系に置き換えられた例が有名でしょうか。
GWデビュー予定
長野電鉄では、2019年度に購入した2編成について、2020年のゴールデンウィークのデビューを予定しています。
最終的に3500系・3600系全編成の淘汰が行われますので、新旧日比谷線の離合は期間限定の光景となります。
3600系が担当していた特急代走運転・代走日やかつては朝ラッシュにも行われていたN編成2本併結の4両編成の運転についても、3000系投入完了までのどこかのタイミングで見納めとなりそうです。
日比谷線同士の世代交代はもちろんですが、元東急8500系についても定期検査時に東急田園都市線で離合した縁のある存在です。
長野電鉄には長野駅からの数区間に地下区間が存在しており、往年の地下鉄路線の雰囲気が楽しめます。
また、優等列車では元小田急ロマンスカーHiSEや、成田エクスプレス253系も活躍しており、関東の鉄道ファンにはどの車両も魅力的な存在です。
優等車両についても、毎週末ゆけむり〜のんびり号〜としてゆっくりと走る特急車両を満喫することも出来ます。
新幹線ですぐ行ける距離ですので、状勢が落ち着いたら是非足を運んでみたい路線ですね。
試運転の様子を動画公開中!
【再就職】長野電鉄3000系が帯色変更のうえ試運転〜元東京メトロ日比谷線03系
YouTube=鉄道ファンの待合室資料館にて、長野電鉄3000系の試運転の様子を動画にてご覧いただけます。
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コメント
随分前に上毛電気鉄道のイベントに行った時に車庫の方に置き換えの予定を聞いたら、置き換えるならまとまった数も必要だし、なかなか手頃な車両がなくて悩ましい、とおっしゃってました。03系になる可能性はどうでしょうね。
岳南鉄道みたいに単行車両への改造が出ると模型的に面白いですけど、両運転席車両が必要そうな地方私鉄はさらに経営が厳しいから置き換えが進まないのかな?熊本も青ガエル単行の後継も単行改造にはならなかったですね。