小田急電鉄プレスリリースにより、2019年度・2020年度に新型通勤電車5000形が投入されることが明らかになりました。
日本車輌ブロック工法のような外観の他、久々の拡幅車体が目立ちます。
この車両の特徴を趣味的視点で捉えつつ、置き換え車両や現在の小田急電鉄が抱える問題を考えていきます。
新型5000形の趣味的ポイント
外観の変化が目立ちますが、プレスリリースを趣味的な観点から考察していきます。
新しい工法の車体
最近の新形式では、3000形が日本車輌ブロック工法によるステンレス車体、4000形はJR東日本んのE233系2000番台をベースとしたステンレス車体となっていました。
今回の5000形では、ドア周りの処理から基本設計は日車ブロック工法かと思いきや、製造が日本車輌製造ではない上に、拡幅車体となっています(日車ブロック工法の3000形についても、現在の総合車両製作所=当時は東急車輛製造や川崎重工での製造実績があるため、日車ブロック工法の拡幅車体という可能性も高そうですが)。
小田急電鉄としては、従来車での裾絞り設計がしばらく見送られていたため、2000形以来久々の裾絞り車体です。
また、3000形同様に非貫通の前面形状ですが、曲面ガラス+非貫通という近未来的な形状は小田急電鉄の通勤車では初となります。
小田急電鉄としては4000形の本数も安定してきて、やっと自社にふさわしい車両を開発できたといったところでしょうか。
しかしながら、小田急電鉄の車両限界などの絡みもあるのか、収容能力は1000形と同程度に留まっており、以前からそこまで変化は見られません(もしかしたら、貫通扉を付ければ東京メトロ千代田線も走れる車体設計なのかもしれませんね)。
そして、製造はJR東日本系列の総合車両製作所と、川崎重工業となっていますが、内外装のイメージ画像から、総合車両製作所ブランドのsustinaとも異なる仕上がりです。
これらの特徴から、今までにない設計の車体となっており、標準化・共通化の進んだ近年では比較的珍しい設計の車両となりそうです。
既存車のインペリアルブルー化が進むも……
現在、小田急の通勤車では、少し明るいインペリアブルー帯への更新が進められています。
今回の5000形では、近年のインペリアルブルーに加え、アズールブルートいう明るい色が採用されています。
一方で、他社同様にホームドア採用が続くなか、従来車同様に幕板部(ドア上)への帯採用は見送られています。
小田急線では、自社の地下鉄乗り入れ対応形式である4000形も同じ色ですので、そこまで重要視されなかったのでしょう。
置き換え車両と小田急電鉄の苦悩
置き換え対象として考えられる車両としては、8000形6両2編成や1000形ワイドドア車6両6編成が挙げられますが、単純な置換ができません。
置き換え対象となりそうな車両たち
8000形 8251×6・8255×6
小田急8000形は、6両編成と4両編成が16編成ずつの160両在籍している形式で、通勤形では現役最古参となっています。
リニューアルの初年度である2002年度に行われた8251×6・8255×6の2編成については車体更新車として上回りをリニューアルした一方で、床下機器は従来のチョッパ制御装置などがそのままとなっていました。
翌2003年度からのリニューアルメニューとして、制御装置のVVVF化や電気指令式ブレーキといった当時の最新形式3000形と床下機器の共通化を同時に施工することとなりました。
電気指令式ブレーキの読み替え装置は6両固定編成の連結する側に設置されるため、従来の車両6両+電気指令式ブレーキ4両という編成組成が出来なくなっています。
しかしながら、8251×6・8255×6の2編成の床下機器のリニューアルが行われることはなく、分割・併合運用廃止、8000形が末尾の揃った編成に順次揃えられていくなかで、相方を失った8051×4・8055×4の2編成は読み替え装置のある3000形6両編成などの他形式との運用がされています。
8251×6・8255×6の2編成については、多摩線や江ノ島線などの各駅停車6両運用を中心に運用がされています。
内外装が3000形と同水準の148両と異なり、チョッパ制御で残存している12両は置き換え対象となる可能性があります。
1000形ワイドドア車 1751〜1756×6
複々線化工事が思ったように進まず、年々激化する通勤ラッシュ対策として、小田急電鉄では1000形,2000形,3000形1次車と比較的長期に渡ってワイドドア車両を投入してきました。
そのうちの最古参となる1000形では、通常車で1,300mmのドアを乗務員室直後1,500mm、他を2000mmとして登場させています。
しかしながら、その巨大すぎるドアがかえってドア付近への乗客滞留などを招くこととなり、後年ドア幅を2000形など同様の1,600mmに改造している他、4両編成も6両編成に揃えられ、現在は6編成36両が該当します。
彼らは現在も通勤ラッシュの武器として再混雑便に充てられています……となれば美談なのですが、その特殊な設計や経歴が災いして、196両存在する1000形のなかで、36両の彼らのみがリニューアルの対象から外されたほか、10両編成にならず、単独6両編成にて各駅停車などに充てられています。
リニューアルの対象から外されたということは、早期の置き換えを考えていると捉えるのが自然でしょう。
内装だけでもリニューアルをしている8000形の12両以上に先の引退が考えられます(5000形の投入本数とも合致しています)。
置き換えが一筋縄にいかない理由
以上のように、置き換え対象として考えられる車両は、6両編成運用のうち、扱いにくい+リニューアルが見送られている編成でしょう。
彼らの置き換えだけであれば6両編成の新型車両の投入だけで済むわけですが、小田急電鉄としては各駅停車の10両化ができる環境になったことで、混雑改善・輸送力増強・運用共通化などの様々な観点から10両化を進めていきたいところです。
しかしながら、線路側の複々線化や10両編成対応が進んだものの、8両編成→10両編成への増結はなかなか行われていません。
これは、既存の8両編成が2000形・3000形といった中堅の年数の車両であることが挙げられるでしょう。
3000形の比較的新しい車両には増結が行われたものの、2000形は置き換えるには早すぎるし、増結するには古すぎます。
そこで、新型を10両固定編成で投入することで、8両編成の新宿口運用を置き換え→多摩線の6両編成を8両化する……などの動きが考えられます。
また、6+4両編成で使用されている編成を置き換え→6両編成は玉突きで先述の異端車を置き換え、4両編成は2本繋げて8両編成運用に……というパターンも考えられます。
いずれにせよ、小田急全体としては増結の動きになると思います。
一方で、小田原線や江ノ島線に残存するホーム有効長6両の駅もあることから、今後の動向は読みにくいものとなります。
複々線化完遂に伴う2018年3月改正では、末端線区の運行本数減によりなんとか複々線区間での増発車両を確保した小田急電鉄。
新型車運行開始による増結の流れで、今後のダイヤ改正での混雑の更なる改善・複々線化のメリットを最大限に発揮することに期待です。
アイキャッチ画像:小田急電鉄プレスリリースより
動画資料集
YouTubeチャンネル【鉄道ファンの待合室資料館】にてこの列車の動画を公開しています。
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コメント
多摩線などの6両編成を8両化する…なんて言ってますけど、8連が停車できる駅は代々木八幡駅の改良工事竣工をもってすべて10連に対応してしまいましたから8連の運用可能区間は10連とまったく一緒になってしまいましたよ。
江ノ島線の急行通過駅と小田原線栢山~足柄の各駅は6連までしか停車できず、箱根登山線は風祭駅が4連までしか対応できません。
つまり、6連の運用を8連で置き換えることが可能なのは多摩線しか存在しません。
だからその考え方は不可能です。
おそらく
・新5000形10連6本投入で3000形6連+別形式4連の10連6本を置換え
→捻出した3000形6連6本で1000形ワイドドア車淘汰
・1000形8連×1+4連×1を6連×2に組替えのうえリニューアル
→8000形チョッパ制御車6連×2を置換え
・2000形8連×9を10連×6+4連×3に組替え
・3000形8連は新造中間車2両増結による8連化を継続
となるんじゃないでしょうか。
いずれにしても、小田原線栢山~足柄間の各駅と江ノ島線藤沢~片瀬江ノ島間の各駅は今以上のホーム延伸が不可能に近いので、運用上の制約が多い8連は解消する方向で進むと思われますよ。
>末端線区の運行本数減によりなんとか複々線区間での増発車両を確保した小田急電鉄
減便したのは、運用数に影響しない昼間だけなので、関係ないと思うが?
むしろ朝の10両運用は増えたし。
5000型を導入するのをきっかけに
広告しかついてない1000型4連と8000型と2000型に2画面LCDとドアチャイムを搭載して予備車として残した方がいいと思う