【42歳の“再就職”】静岡鉄道1000形1010号編成 えちぜん鉄道へ譲渡

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静岡鉄道では、自社製造の1000形を長年使用していましたが、現在はA3000形への代替を進めています。

2020年度には1009号・1010号の2編成4両が置き換えられ、このうち1010号編成がえちぜん鉄道への譲渡のため、2021年3月27日未明より「兵庫県内の車両工場」へ向けて陸送が実施されています。

静岡鉄道の世代交代

静岡鉄道では、老朽化した1000形の世代交代のため、新型車両A3000形の導入を進めてきました。

置き換え対象となる1000形は1973年と日本国内でも初期に投入されたオールステンレス車両・新造されているA3000形は総合車両製作所の「sustina」ブランドのレーザー溶接を多用した車両となっており、新旧ともに日本におけるステンレス車両技術の最先端技術が採用された点が魅力的です。

A3000形は2015年度から2022年度まで2両12編成の導入が予定されており、同数の1000形を代替する計画です。

これまで引退した1000形は解体となっていましたが、2020年度代替分の1000形2編成については新たな鉄道会社への譲渡が実現することとなりました。

両編成とも1979年の製造から既に42年が経過しようとする最中の譲渡となり、ファンからは驚きの声が上がっています。

導入先は意外な2社

譲渡先は静岡鉄道での引退に際して公式発表があり、1009号編成(1009号+1509号)は熊本電鉄へ・1010号編成(1010号+1510号)はえちぜん鉄道への譲渡となっています。

日本国内全体の鉄道車両の動きとしては、JR各社・大手私鉄では鉄道車両の大型化が進んだため、地方私鉄で最適な18m級車両かつ狭軌(1,067mm)の“出物”が少なくなっている状態です。

日比谷線の世代交代で03系が3社・東武鉄道20000系が譲渡予定(正式発表はまだ)となっています。前者は先頭車の電動車化改造を、後者は中間電動車の先頭車化改造を必要としていますが、それ以降の出物が期待出来ないことからこのタイミングで世代交代を狙う会社が相次いだことも頷けます。

今回の静岡鉄道1000形は2両編成で電動車構成・性能なども地方私鉄に最適化されている一方で、そもそもの車齢が高いことや抵抗制御方式となっているなど、前世代的な車両であることは否めません。

このため、もし譲渡が実現されるとすれば、導入コストを最小限としたい会社……特にVVVFインバータ制御車両の導入が変電所設備の更新を要する事例が多いことから、これらを避けたい会社が手を上げるのではないか……というファンからの推測もありました。

しかしながら、今回の譲渡で手を上げた2社はこれらの制約が思い浮かばず、意外に感じたファンも多そうです。

熊本電鉄では東京メトロ01系・03系の導入としており、ともに先頭車の電装工事ではVVVFインバータ制御を採用しています。転用改造で01形・03形とされた各2編成は全て1990年代製造の若めの車両でしたので、より古い静鉄1000形を採用した点は予想外の動きとなりました。

えちぜん鉄道についても、現在活躍している車両より古い車両の採用となっており、MC5001形は1999年の自社(前身の京福)発注車、それ以外のMc6001形は愛知環状鉄道の開業時の新造車の改造・MC7000形も国鉄末期に製造された119系の改造といずれも1980年代の車両です。

えちぜん鉄道の場合は18m級車両である制約もなく、20m級3扉の車両だけであれば1年待てばJR東海から211系の余剰車が出てくるところです。こちらは2両固定編成も多く存在します。

また、両社とも古参車両を導入する上に1編成2両のみの導入となる点も不思議ですが、今後も2022年度まで少しずつ引退車両が発生して継続的な導入をしやすいこと・設計こそ古いながらオールステンレス車両で長期間の活用が見込めることなどが採用の背景に考えられそうです。この辺りは静鉄1000形の“兄貴分”となっている東急7000系列と非常によく似た格好です。

えちぜん鉄道では「きょうりゅう電車」に

譲渡先となるえちぜん鉄道では、報道(2/19 福井新聞)にて静岡鉄道1000形が「きょうりゅう電車」の専用車両として導入されることが報じられています。

福井県では恐竜の化石が出土することが多く、えちぜん鉄道勝山永平寺線の終点駅である勝山に福井県立恐竜博物館があります。

これに関連して、えちぜん鉄道では通常車両に装飾を施す「きょうりゅう電車」を2014年より運行していました。定期列車使用車両の間合いでの使用となっており、装飾は着脱式の簡易なものという制約がありました。

2023年夏にこの恐竜博物館がリニューアルされることにあわせ、「きょうりゅう電車」を専用車両化することが計画されていました。今回の静鉄1000形はこの「きょうりゅう電車」専用車両としての導入とされており、今後デビューに向けた改造が施されることとなります。

北陸新幹線の敦賀駅延伸も予定されており、福井県に初めての新幹線がもうすぐ開通します。大きな観光需要が期待されるこの年に向けて入念な準備が進められることとなりそうです。

意図したかは分かりませんが、コルゲートのゴツゴツした外観はコンセプトにもマッチしているようにも思えます。どのような外観・内装となるのか、今後の動向に注目したいところです。

同報道によれば、「1010号は3月末に兵庫県内の車両工場に搬送される。デザイン決定後に改造され、えち鉄に運ばれる。」とされています。2023年度の導入まで、しばらく兵庫県内で静かにデビューの時を待つこととなりそうです。

「いってらっしゃいえちぜん鉄道」輸送の様子

今回の輸送は、静岡鉄道の長沼車庫から「兵庫県内の車両工場」へ向けてトレーラーによる輸送となっています。

目的地については報道で大筋示されていますが、現役のえちぜん鉄道の車両改造は愛知環状鉄道100,200,300形→MC6001形JR東海119系→Mc7000形の事例を阪神車両メンテナンスが受注(阪神車両メンテナンス公式ホームページ)していることから、今回の車両改造についても同所が受注した可能性が高そうです。移動距離の長さから、目的地までの到着にもう1日〜2日程度要することが予想出来ます。

長年の住処であった長沼車庫からはバックで進出したのち、日本の大動脈となっている国道1号〜23号のバイパスを横断して関西方面へ向かいました。

車両の側面窓には装飾が施されており、運転席側には「いってらっしゃいえちぜん鉄道」反対側には「ありがとう!1010号!」などの文字が掲げられています。関係者の愛着と新天地での活躍への期待を感じさせられます。

空調装置が全て撤去されている点も特徴的です。輸送のための撤去に留まるのか、改造とともに新しいものに交換されるのかも注目したいポイントです。

輸送は大阪府内に拠点を持つ山広運輸興業が担当しています。

標準軌が多い関西私鉄の鉄道車両陸送でお馴染みの会社ですが、最近の東京メトロ02系・7000系の廃車陸送で都心部での実績も重ねている運送業者さんです。陸路での鉄道車両輸送が年々注目度を上げていますので、この会社の名前を知る鉄道ファンの方も少しずつ増えてきた印象です。

今回は2車種+伴走も加わって様々なトレーラーヘッドの活躍を見ることができ、こちらのファンにとっても“熱い”輸送となりました。

1000形の“先輩”も福井へ

隣の浜松を拠点とする遠州鉄道とともに、「地方私鉄の優等生」とも呼ばれる静岡鉄道。

過去にも自社発注車が他の地方鉄道に譲渡された事例が存在します。なかでも、1000形によって置き換えられた静岡鉄道の300形は福井鉄道へ譲渡されています。

同じ福井県への“転職”となることは何かの縁を感じさせられる一方で、残念ながら“再会”は果たされることなく、福井鉄道へ旅立った300形は2006年に全車両が廃車解体済となっています。

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コメント

  1. より交 より:

    電圧600Vで、機器が比較的そのまま扱えるのが魅力。
    それを忘れてはいけない。
    インバーター改造で機器全取り替えなら、他の出物でも良いし。
    あと、東海の211系はファンの予想に過ぎないから、公式発表前に出物があるって確定した書き方は早計。